読みきかせ【3年生】(1月) | 水脈のブログ

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読みきかせ記録(絵本等の紹介)と、自分の心に生じた想いや、刻まれた記憶を思いつくままに綴っています。
当ブログ開設当初から好きだった東方神起やジェジュン、ユンジェに関して。そして、2021年以降は、防弾少年団(バンタン:BTS)のことに、思いを馳せることも。



小学校の廊下に展示されていた

5年生児童の切り絵作品です。

(全て葉書サイズの大きさ)

その出来栄えの見事さに思わず📸


今週、新年最初の「お話タイム」が

ありました。

私が担当したのは3年生のクラス。

1月も半ばを過ぎましたが、

お正月らしい、めでたいお話をと思って、

2パターン準備していました。

廊下で待っている時に、

なにやら、

児童が担任の先生に叱られていたようで、

教室内がちょっと重い雰囲気になっていたので、

より楽しいお話の方を選んでみました。


『びんぼうがみとふくのかみ』

富安陽子・文 飯野和好・絵 (小学館)


『しりとりあそび しろとくろ』

星川ひろ子・星川治雄 (小学館)


『びんぼうがみとふくのかみ』は、

日本の昔話をベースに

富安陽子さんが文章を書かれたお話です。


まじめな働き者なのに

ちっとも暮らしが楽にならない夫婦。

それは、夫婦の住まいの押し入れには

「貧乏神」が住み着いているから。

こっそりと引越そうとしたものの、

貧乏神にはバレバレで、

ついてまいるぞ どこまでも

という貧乏神に、引越しも断念。

一度は貧乏神から逃れようとした

夫婦なのに、

ついに「福の神」がやって来ることになり、

出ていかなければならないという大晦日、

貧乏神を引き留め、

実際にやって来た「福の神」を

追い出してしまうという

ちょっと珍しいお話です。

(松谷みよ子さんの

あとがき を読むと、

山形地方だけで語り伝えられてきた話

とのこと。)


一般的には、

「貧乏」より「福」の方を選ぶでしょう。

貧しい暮らしならなおさらのこと。

でも、

例えば、

同じ大晦日の昔話

『かさじぞう』では、

編笠を売って暮らしている

貧乏なおじいさんなのに、

雪で寒そうにしている

お地蔵さまを見かねて、

売り物であるはずの笠を被せ、

さらに1枚足りないと見るや、

自分の被っていた手ぬぐいまで被せ

立ち去ります。

そこに、損得勘定はありません。

そして、笠を売って、

正月の餅を買って帰るだろう

おじいさんを待っていたはずの

おばあさんも、

その行為を

おじぞうさまにあげてよかったな

と受け入れています。


『かさじぞう』

瀬田貞二 再話 赤羽末吉 画

(福音館書店)


また、

福島の昔話である

『おおどしのきゃく』でも、

貧乏だけれど、仲のよい

じいさまとばあさまの家に、

おおどし(大晦日)の晩に、

大雪で山の寺に戻れなくなったから

「一晩泊めてくれ」と訪ねてきた

見知らぬ坊様を泊めてやっています。

お正月を前に、

餅も酒も魚もない(買うことができない)

貧しさにも関わらず、

困っている人を見過ごすことができない

優しさ、来るもの拒まずの

おおらかさが見られます。


『おおどしのきゃく』

五十嵐七重 再話 二俣英五郎 画

(福音館書店)



『びんぼうがみとふくのかみ』でも、

「福の神」を追い出す時の

一致団結する姿は、なにやら楽しそうで、

貧乏神と夫婦との仲の良さ、

信頼関係さえも伺えて、

きっと、貧しいけれど、不幸ではなく、

幸せなのだろうと察することができます。

(飯野和好さんのユーモラスな絵による力も

大きいですけれど)

また、

何に対しても差別することなく、

あるがままに全てを受け入れる という

寛容さを感じることができます。


「一神教」の場合、

「神」は唯一無二で、

信仰する神以外は神でない 

という

排他的な精神を想像させますが、

日本では、古来から

「八百万(やおよろず)の神」

と称されるように、

あらゆるものに神が宿っており、

万物への畏敬と感謝の念が

信仰心として培われてきたと考えられます。


貧乏神、お地蔵さま、坊さま、

いずれも一般の人間ではなく、

畏敬の対象ですが、

最終的には、

貧しくとも、働き者で仲が良く、

他者への寛容さを忘れない夫婦に、

福をもたらしてくれる存在

として描かれています。


昨今、

自分と意見の異なる

他者は許せないとばかりに

攻撃性が強まる風潮がありますが、

(匿名性の陰に隠れるSNSの世界では特に)

寛容性が大切であることを

昔話は伝えてくれていると思います。

まぁ、子どもたちは、

難しくそんなことを考えなくても、

ただ楽しんでくれたのなら、

それで良いのですが。


少しだけ時間があったので、

単に聞くだけでなく、

声も出してもらおうと、

『しりとりあそび くろとしろ』で、

リラックスしてもらいました。

星川ひろ子さんと星川治雄さんの

しりとりあそびシリーズは、

この「しろとくろ」以外にも、

「あか・みどり・き」や

「ちゃいろ」等ありますが、

この「しろとくろ」が個人的には好きで、

読み聞かせ時に愛用しています。


ちなみに、

今回、準備していたけれど、

読まなかったもう一方の組み合わせは、

『おせち』

(こどものとも 年中向き 2024年1月号)

文・絵 内田有美 料理 満留邦子

監修 三浦康子  (福音館書店)




『十二支のお節料理』

川端 誠 (BL出版)


でした。

またの機会に。