露出過多の個性的ファッションと、超人的な技巧で世界の音楽界を賑わしている
若手ピアニストユジャ・ワンの、ガーシュインとラヴェルの演奏を、
スカパー!(クラシカ・ジャパン)で視聴した

今年8月、オーストリアのザルツブルク音楽祭での収録であり、
これまた”若き天才”の呼び声高き、リオネル・ブランギエが指揮するカメラータ・ザルツブルクとの共演だ

最初は、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」
モーツァルトをもっとも得意とし、オーストリアからドイツにかけての古典派の作品を得意とするカメラータ・ザルツブルクにとっては、なじみの薄い、アメリカ20世紀の音楽

冒頭のクラリネット・ソロ、それに続くトランペット・ソロの固いことと言ったらもう(笑)
ユーモアとペーソス、そしてアイロニーが入り混じった、
思わず「ニヒヒ

」と笑ってしまいそうな、
ガーシュインの1920年代の自作自演盤(ポールホワイトマン楽団)
を愛聴している私にとっては、実に物足りない
。
ところが、ユジャ・ワンが弾き始めるや、世界が一変した
腕が鳴って仕方がないと言わんばかりのテクニックでバリバリ弾きまくり、
しかも、非常に「ノリ」が良い

それに煽られたか、カメラータ・ザルツブルクの面々も、
徐々に、ノリ始めてくるから面白い
続く、ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調も同様で、
とにかく、ユジャ・ワンの音楽的推進力が素晴らしく、
前へ前へと突き進んでゆき、
時として畳み掛けるような追い込みをかけるので、
スリリングなこと、この上ない

ただ、そうした演奏傾向ゆえ、第2楽章のような、虚無的な風情を湛えた部分に関しては、
流石に往年のマルグリッド・ロンの演奏には遠く及ばない印象

とはいえ、続く第3楽章では、息を吹き返し(
)、
それどころか、第1楽章にも増して、演奏は白熱して、
会場を興奮の坩堝へと追いやった


ユジャ・ワン、恐るべし

