二人だけの世界 | 土地家屋調査士受験!カネコのちょっと役立つハナシ

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今宵はクリスマスイブ。多くの男女が楽しい夜を過ごしていることでしょう。手をつないで二人だけの世界にひたる夜。街を歩く男女にとって,周りの人はおかまいなし。おそらく,二人にとってはどうでもいい存在だ。

そんなカップルを見たら,債権のことを思い出してみてはどうだろう。そう,債権は二人だけの世界だから。



 金子がお金に困った。同僚の横内講師に借りることにした。

金子「横内先生,100万円を貸してくれませんか。」

横内「いいですよ。半年後に返済して下さい。」

この会話により金銭消費貸借契約が成立。横内は金子に対し,半年後に「貸した100万円を返して下さい。」と請求できる。横内は金子に対し,貸金の返還請求権という債権を取得し,金子と横内の二人の世界が誕生する。もっとも,横内は債権者,金子は債務者という法律上は相対立する地位に立つので,カップルのようにイチャイチャはしない。イチャイチャなんてしていたら,ちがう意味でも気持ち悪い。オエッ!



半年後,横内は金子に対し「貸した金を返して下さい。」と請求できる。もちろん,横内が「金を返せ」と言えるのは金子のみであり,池永講師や阪上講師には「金を返せ」とは言えない。一方の金子も横内に対してのみ返済の義務を負う。債権は,他の人と関係のない,債権者と債務者の二人だけの世界なのだ。


 二人だけの世界に誕生する債権は,債務者というある特定の人に対してのみ主張できる権利であり,相対的権利と言われる。これに対して,物に対する権利である物権は,絶対的権利である。絶対的とは誰に対しても主張できるということ。たとえば,横内は自慢の黒シャツを「これは高かったんですよ。これは私によく似合っているでしょう。」などと言いながら,黒シャツに対する自己の所有権を金子だけでなく,池永にも,阪上にも,世間の誰に対しても主張できる。



債権は二人だけの世界だから,行為を請求される債務者が納得すれば,どんな内容の債権でも二人の話し合い(契約)によって作り出すことができる。契約自由の原則だ。だから,世の中には様々な内容の債権が存在する。これに対して,物権は世の中の人全員を対象とするので,万人共通の理解のもとに機能しなければならない。このことから,民法第175条の物権法定主義が導かれる。物権は誰もが理解できる共通の権利でなければ意味がないので,物権は法律で定められたものに限って認められ,私人間で勝手に作ってはならないのだ。



以上,基本的なことだが,民法の学習のお役に立てばと思う。


カップルついでにもう一つ。街を歩くカップルが夫婦だったら,民法第750条から第762条までの婚姻生活に関する規定が関係する。その中の一つに次のような規定がある。


 民法第754条「夫婦間でした契約は,婚姻中,いつでも,夫婦の一方から  これを取り消すことができる。ただし,第三者の権利を害することはできない。」


 夫婦間の契約は,あかの他人同士が結ぶ契約に比べ,夫婦間のなれあいや溺愛によって結ばれることもあり,債務者が契約を守らない場合の裁判による強制的な契約の実現は円満な夫婦関係にそぐわないので,契約の拘束力(「契約は守らなければならない」という原則)を弱めているのである。


だから,夫は,クリスマスイブにエルメスのバックを買ってあげるという約束を妻としたとしても,いつでも「約束したエルメスのバックなんだけど,今月は仕事が少なかったので,悪いけど無かったことにさせてもらうよ。」と言えるわけである。

法的には?


 皆さんの御家庭はどうですか。奥様のニラミという契約の拘束力が民法の規定よりも優先して適用されていませんか。約束を守らないと,女性は怖いですからね。


「今,なんか言った?」という奥様の声で,「なんでもないよ」と言わざるを得ない旦那さん。「我が家では民法第754条の規定の適用はありません。」という御家庭も少なくないのではないでしょうか。

これも二人だけの世界ですね。