幻の24の区分建物 | 土地家屋調査士受験!カネコのちょっと役立つハナシ

土地家屋調査士受験!カネコのちょっと役立つハナシ

土地家屋調査士受験に役立つ内容を盛り込んだブログです。



救急車で病院へ運ばれた。朦朧とする意識の中で,一人の医師が私の手を握った。「金子さん,病院につきましたよ。もう大丈夫ですよ。」と私の手を握りながら必死に私を勇気づける医師の顔を見ると,その人は松嶋菜々子さんこと小島楓先生だった。





夢であります。これは「ドラマの見過ぎ」以外の何ものでもありません。救命病棟24時第4シリーズが火曜日に最終回となってしまいました。救命病棟ファンの私は,遂に夢で小島先生に手を握られてしまいました。それにしてもリアルな夢でありました。手のぬくもりが残っていないのが残念です。当たり前か。できれば,第2シリーズの松雪泰子さん演じる香坂たまき先生にも手を握っていただきたいので,夢の中でもう一度患者になりたいと思っています。





前回のブログと同じような展開になってしまいますが,今回のブログは救命病棟24時でスタートしましたし,今日は24日ですので,24つながりで勉強ネタ「幻の24の区分建物」へと話を転じましょう。





平成10年頃,私は講師をしながら実務もやっておりました。その頃,デベロッパーに勤めるSさんという受講生がおりまして,講義が終わりますと,「先生,お話がございます。当社で建設しましたマンションにつきまして先生に登記手続をお願いしたいと思うのですが,いかがでしょう。」と仕事を依頼されました。

つとめて冷静を装う私ですが,もちろん心の中では「キタ~マンション!」と志村けんのバカ殿のような顔になっているのは御想像のとおりです。





「部屋数は各階8個の3階建で,全部で24個ございます。先生には表示登記(現行の「表題登記」)のほか,司法書士もお持ちですので,所有権保存登記及び抵当権設定登記もお願いしたいのです。」ときた。キタ,キタ,キタ,表示,保存,設定のフルコース,しかも個数は24個。1個あたり安く見積もって10万円,それが24だから,なんと240万円である。Sさん,もうダメ,これ以上はやめて。志村けんもびっくりのバカ殿の顔になってしまいそう。





「ただ,場所が千葉の市原でございまして,先生の事務所からですと,片道3時間近くはかかると思いますが,よろしいでしょうか。」とSさん。正直,しんどい距離であるが,240万円をぶらさげられたら近い近い,そんなのへっちゃらである。「いえ,片道3時間程度でしたら,平気ですよ。是非,お受けいたします。」と二つ返事の私。





後日,取らぬ狸の皮算用をしながら,電車にゆられ現場調査へ。「市原。そんなでもないじゃない。近い,近い。」ウキウキ気分の私には距離など関係なし。駅で出迎えてくれたSさんと現場に直行。設計図面片手に各部屋をチェック,3時間程度で調査を終えて,帰ろうとしたとき。Sさんの強烈な一言が私を直撃した。

「先生,言い忘れておりましたが,このマンションは賃貸マンションですので,非区分建物で登記して下さい。」

え,今なんとおっしゃいました。まさか区分建物の前に「非」をお付けになりましたでしょうか。「非」を。ねえ,「非」を付けた,「非」を。と何度も問いただしたいと思う気持ちから,私の耳はダンボの耳ように大きくなっていたと思います。



24個の区分建物は幻となり,三階建て1個の非区分建物の登記手続となったわけです。報酬はかなり低くなりましたが,それなりにいただけましたので,ありがたい話ではあったのですが・・・。





不動産登記事務取扱手続準則第78条第2項

一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居,店舗,事務所又は倉庫その他の建物としての用途に供することができるものがある場合には,その各部分は,各別にこれを1個の建物として取り扱うものとする。ただし,所有者が同一であるときは,その所有者の意思に反しない限り,一棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱うものとする。





専有部分が属する建物全体のことを一棟の建物というが,一棟の建物内の数個の専有部分を有する者は,当該専有部分を各別の建物(区分建物)として登記することができるのはもちろん,当該数個の専有部分が接続していれば,その数個の部分を一個の建物(区分建物)として登記することができる。また,一棟の建物に属する全部の部分を所有している者は,全体を一つの建物(非区分建物)として登記することもできる。

分譲目的のマンションであれば,各専有部分を売りに出す関係上,各専有部分を独立した区分建物として登記するであろうが,賃貸目的のマンションであれば,その必要はないので,一棟の建物の全部を一個の建物として登記すれば足りる。



関連過去問H5-13・2

1棟の建物が数個の専有部分に区分され,その所有者が同一であるときは,その所有者の意思に反しない限り,1棟の建物の全部又は隣接する数個の部分は1個の建物として取り扱われる。→正



それにしても,市原からの帰路は遠かったような気がします。

「なんなんだ,この遠さは。」と海外ドラマ「24」のジャックバウアーのように叫んだとか叫ばなかったとか。最後も24つながりで締めてみました。