作者：諸葛亮
227年
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出師表は、建興5年（227年）、諸葛亮が主君の劉禅に奉った上奏文。一般に「出師表」と言えばこの文章を指すが、「後出師表」と区別するために、「前出師表」と呼ばれることもある。自分を登用してくれた先帝劉備に対する恩義を述べ、あわせて若き皇帝である劉禅を我が子のように諭し、自らの報恩の決意を述べた文である。陳寿の三国志の本文にも引用されている他、『文選』、『文章軌範』等にも収められており、諸葛亮の真作と考えられている。— ウィキペディア日本語版「出師表」より。
出典：『文章軌範新釈 : 全訳』（島田鈞一著）前出師表 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/1019860/1/143
臣亮リヤウ言ス。先帝創業未ダ㆑半ナラ。而中道ニ崩殂ハウソス。今天下ハ三分シ。益州ハ疲敝ス。此レ誠ニ危急存亡之秋トキ也。然レドモ侍衞之臣。不㆑懈オコタラ㆓於內ニ㆒。忠志之士。忘ルヽ㆓身ヲ於外ニ㆒者ハ。蓋シ追フテ㆓先帝之殊遇ヲ㆒。欲スル㆑報ゼント㆓之ヲ於陛下ニ㆒也。
誠ニ宜シク㆘開‐㆓張シ聖聽ヲ㆒。以テ光オホイニシ㆓先帝ノ遺德ヲ㆒。恢オホイニス㆗志士之氣ヲ㆖。不㆑宜シクカラ㆔妄リニ自ミ菲薄シテ。引キ㆑喩タトヘヲ失ヒ㆑義ヲ。以テ塞グ㆓忠諫之路ヲ㆒也。宮中府中ハ。俱ニ爲リ㆓一體㆒。陟チヨク㆓罰スルヿ臧否ヲ㆒。不㆑宜ベシクカラ㆓異同イドウス㆒。若シ有ラバ㆘作ナシ㆑姦ヲ犯シ㆑科ヲ及ビ爲ス㆓忠善ヲ㆒者㆖。宜シクシ㆘付フシテ㆓有司ニ㆒。論ジ㆓其刑賞ヲ㆒。以テ昭アキラカニス㆗陛下平明之理ヲ㆖。不㆑宜シク㆔偏私ヘンシシテ使ム㆓內外ヲシテ異ニセ㆒㆑法ヲ也。
侍中侍郞郭クワク‐攸イウ‐之シ。費ヒ‐禕ヰ。董タウ‐允イン等ハ此レ皆良實。志‐慮忠‐純。是ヲ以テ先帝簡拔シテ以テ遺ノコス㆓陛下ニ㆒。愚以爲オモヘラク宮中之事ハ。事無ク㆓大小ト㆒。悉ク以テ咨ハカリ㆑之ニ。然ル後施行シカウセバ。必ズ能ク裨‐㆓補ヒホシ闕‐漏ヲ㆒。有ラン㆑所㆓廣益スル㆒。將軍向寵シヤウチヨウハ。性行淑均。曉‐㆓暢シ軍事ニ㆒。試㆓用セラル於昔日ニ㆒。先帝稱シテ㆑之ヲ曰ヘリ㆑能アリト。是ヲ以テ衆議シテ舉ゲ㆑寵ヲ爲ス㆑督ト。愚以爲オモヘラク營中之事ハ。事無ク㆓大小ト㆒。悉コトゴトク以テ咨ハカラバ㆑之ニ。必ズ能ク使メン㆓行軍ヲ乄和穆ワボクシ。優劣ヲシテ得セ㆒㆑所ヲ也。
親ミ㆓賢臣ヲ㆒。遠ザクルハ㆓小人ヲ㆒。此レ先漢ノ所㆓以興隆セル㆒也。親ミ㆓小人ヲ㆒。遠ザクルハ㆓賢臣ヲ㆒。此レ後漢ノ所㆓以傾頽ケイタイセル也。先帝在イマス時。每ツネニ與㆑臣論ジ㆓此ノ事ヲ㆒。未ダ五嘗テ不㆕歎㆓息痛㆔恨ツウコンセ於桓靈ニ㆒也。侍中尚書。長史參軍。此レ悉コトゴトク貞亮リヤウ死スル㆑節ニ之臣也。願テハ陛下親ミ㆑之ヲ。信セバ㆑之ヲ。則チ漢室之隆サカンナル。可キ㆓計カゾヘテ㆑日ヲ而待ツ㆒也。
臣ハ本ト布衣。躬ラ耕シ㆓南陽ニ㆒。苟モ全ウシ㆓性命ヲ於亂世ニ㆒。不㆑求メ㆓聞達ブンタツヲ於諸侯ニ㆒。先帝不㆑以テセ臣ノ卑鄙ヒヒヲ㆒。猥ミダリニ自ラ枉屈ワウクツシ。三タビ顧ミ㆓臣ヲ於草廬之中ニ㆒。諮トフニ㆑臣ニ以テス㆓當世之事ヲ㆒。由リテ㆑是ニ感激シ。遂ニ許スニ㆓先帝ニ㆒以テス㆓馳驅チクヲ㆒。後チ値アヒ㆓傾覆ニ㆒。受ケ㆓任ヲ於敗軍之際ニ㆒。奉ス㆓命ヲ於危難之間ニ㆒。爾來ジライ二十有一年ナリ矣。先帝知ル㆓臣ガ謹愼ヲ㆒。故ニ臨ミテ㆑崩ズルニ寄ヨスルニ㆑臣ニ以テス㆓大事ヲ㆒也。
受ケテ㆑命ヲ以來。夙シユク夜憂慮シ。恐ル㆔付託ノ不シテ㆑效アラ。以テ傷キヅツケンヿヲ㆓先帝之明ヲ㆒。故ニ五月渡リ㆑瀘ヲ。深ク入ル㆓不毛ニ㆒。今マ南方已ニ定マリ。甲兵已ニ足タル。當ニ㆘獎㆓率シヤウスヰシ三軍ヲ㆒。北定ム㆗中原ヲ㆖。庶クハ竭ツクシ㆓駑鈍ドドンヲ㆒。攘㆓除シ姦凶ヲ㆒。興㆓復シテ漢室ヲ㆒。還サンヿ㆓於舊都ニ㆒。此レ臣所㆘以報ジテ㆓先帝ニ㆒而忠ナル㆗陛下ニ㆖之職分也。
至ツテハ㆘於斟酌損益進デ盡スニ㆗忠言ヲ㆖。則チ攸之イウシ・禕キ・允イン之任也。願クハ陛下託スルニ㆑臣ニ以テセヨ㆓討賊興復之效ヲ。不レバ㆑效サラ則チ治メテ㆓臣之罪ヲ㆒。以テ告ゲヨ㆓先帝之靈ニ㆒。若シ無レバ㆓興德之言㆒。則チ責メ㆓攸之・禕・允之咎トガヲ。以テ彰アラハセ㆓其ノ慢ヲ㆒。陛下モ亦タ宜シク㆘自謀リ。以テ咨㆓諏シ善道ヲ㆒。察㆓納シ雅言ヲ㆒。深ク追フ㆗先帝ノ遺詔ヲ㆖。臣不㆑勝タヘ㆓受ケテ㆑恩ヲ感激ニ㆒。今マ當ベニシ㆓遠ク離ル㆒。臨ミ㆑表ニ涕泣デイキウシ。不㆑知ラ㆑所ヲ㆑云フ。