Escape 30 | ♡妄想小説♡

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主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

はじめはよかったかもしれない。



取り繕った家族。



俺だってその中に溶け込もうとした。



でもその男は、いつの間にか母に暴力を振るうようになって。



何にも言えない母が腹立たしかった。



さっさと離婚すればいいのに、そんな男。



切り捨ててしまえばいいのに。



家に帰ればそいつと母がケンカばかりしている。



そんなところ帰りたくなかった。



だからいつも学校帰りに友達と夜遅くまで遊び歩くようになった。



でも、心の中ではいつも不安だった。



もし、二人がいなくなっていたら。



俺を置いて、どこかに行ってしまっていたら。



もしくは、母が殴られてケガでもしていたら。



そんな不安から、いつだって気になって俺はその家に帰ってしまうんだ。



ある日、いつもの通り、夜遅く帰宅した日だった。



母親たちの部屋から、小競り合いが聞こえてきた。



耳を塞ぎたくなるその声に、俺は自分の部屋に駆け込もうとした。



だけど次の瞬間、聞こえてきたのは大きな衝撃音だった。



何があったんだろうとドアを開けようとした瞬間、母の声がいつもとは違う卑猥な声に変わった。



何事だって、目を見開いた。



中学三年、もう分かっていた。



今はスマホでどんな情報も簡単に手に取ることが出来る。



男女のそういう行為も、どんな風な手順でどんなことをするのか、大体分かっていた。



女が、どんな声を上げるのかも。



自分の中にあるものが、すべて吐き出てしまうんじゃないだろうかと思った。



目がぐるぐる回って、その場に立っていられなくなった。



どんなに言い争いをしていても、結局は男と女なんだって、その時思った。



性欲にまみれた汚い生き物だ。



俺の母でありながらも、一人の女なのだ。



そのろくでもない男を、捨てきれない、ただの、女だ。



憎かった。



母をそんな女にしたあの男が。



殺してやりたいくらいに。



だから俺はあの時、ビール瓶を振りかざすあの男を、殺したって構わなかったんだ。



もしくは、俺を殺して、あいつが犯罪者になれば、それでよかったんだ。



そうしたらきっと、前みたいな母親が戻ってくるから。




それなのに、母はあいつを見捨てなかった。



未だに、離婚は成立していない。



あいつが負った借金だって、肩代わりしている。



俺がいるだけじゃ、ダメなんだな、結局。





俺はあんな惨めな人生なんか送りたくない。



母みたいに、男が中心になって、それがいなくなると自分を保てなくなるような、脱け殻な人間にもなりたくない。



一人で経済力を身に付けて、自立したい。



大学に行って、ちゃんとしたところに就職して。



だけど、実際のところ、毎日バイトで忙しくて、勉強どころじゃない。



睡眠が足りてなくて寝不足なせいで、授業に集中すら出来ない。



成績は下がる一方だ。



実際問題、金だってない。



それに、もし本当に大学に行けて就職活動したとして、犯罪者の息子というレッテルを持った俺が、ちゃんとした企業になんか就職出来るんだろうか。




そんな俺の思いも考えず、未だあいつを見捨てきれない、母への嫌悪感も拭えない。