On Your Mark 86 | ♡妄想小説♡

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主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

私が顔をほんの少しだけ近づけると公ちゃんの顔も、ぴくり、と一瞬動いた。



まだ、だめだ、もっと、と私は彼を見つめ続ける。



いいんだよ、欲しい、という気持ちを表に表しながら。



唇を、ほんの少しだけ傾けた。



すると見つめ合っていた瞳が一瞬にして視界から消えた。



その瞬間、私の唇に暖かいものが触れる。



意を決したように、彼は私の唇を奪ったのだ。



チュッと重なっただけだったけれど、私はとても嬉しかった。



離れた唇で、私たちはもう一度見つめ合う。



今度はお互いに、口角を上げた含み笑いだった。



共犯者になったみたいに、瞳の奥で通じ合う。



今度は、私から口づけた。



すっとした顔とは相反する、ぽってりとした厚い唇。



触れるととても弾力がある。



口づけながら、彼の体に両手を回した。



すると彼も私の腕を掴んで、ぐっと引き寄せた。



思った以上に強くて、男の人だな、と感じる。



「んっ」



さらには深いところで繋がりたくて、吐息を漏らす。



唇を少し開くと、もう迷いはないみたいに、向こうの方から舌を滑り込ませてきた。



かかった獲物を絡み取るみたいに、こちらの方からも舌を動かす。



夢中だった。



もっと私を求めてほしかった。



考えなしのこんな行動は、幸せには繋がらない、そんなことはもう何度も経験してきたのに、この人とだったら違う、そう信じたかった。



しばらくすると、唇が離れた。



私の腕を掴んでいた彼の手も、私のそこから離れる。



「なっちゃん…」



俯き加減に瞬きをしながら、ゆっくり声のする方を見上げた。



「電車…」



おそらくそろそろ行かなければ、最終に乗り遅れてしまう。



だけど、まだ、離れたくなかった。



もっと、この人と交わっていたかった。



きっとそうでなければ、また一歩先に進むのに、時間がかかってしまう。



私は今、この人を手に入れて、答えが欲しい。



ギュッと公ちゃんのと大きな体にしがみついた。



え、と小さく聞こえる声を無視して、少しずらして彼の首筋に唇を押し当てる。



はっ、と吐息が聞こえそうなのを感じた。



甘噛みをしながら、舌先を滑らせる。



少しずつ体を持ち上げて、彼の耳元まで到達した。



その時、



ギュッと腕を掴まれた。



いきなりのことにきゃっと声が漏れそうになる。



体が離れたところで、公ちゃんの瞳と視線が合った。



真剣な、その眼差しに、臆しそうになりながらも、もう一度、見つめた。



男を、落とす、その挑戦的な瞳で。



もう一度唇が塞がれた時、その駆け引きに、勝った、と思った。