新入社員と私。happy valentine編♡ | ♡妄想小説♡

♡妄想小説♡

主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

「おかえり」



彼は、右手に通勤カバン、左手に、小さな紙袋と、大きな紙袋を所持していた。



それを見て、思わず自分の眉が不自然な動きをする。



今日の午後、会社での出来事が頭に蘇ってきたのだ。



彼は、会社で若い女の子にチョコレートを貰っていた。



一人ではない。



一人の女の子が渡したのを皮切りに、数人の女の子達が寄ってたかって、彼へ小さくかわいい包装紙でラッピングされたものを、差し出していたのだ。



女の子に囲まれて、鼻の下を伸ばしながらそれを受け取っていた彼の姿を思い出す。



玄関で、私のうちへ帰って来た彼を出迎えたけれど、私はそのまますたすたとリビングへ戻ろうとする。



「え、なんか、怒ってます?」



「……」



彼が言うので、足を止めて、振り返った。



「べつに、」



怒っているわけじゃない、別に、怒ってなんか、…



ないけど、でも、自分が不機嫌な態度を取っていることに、自覚はある。



きっと義理チョコだ。



会社の同僚や先輩から差し出されたら、特に理由もなければ受け取るのが筋だろう。



別に大人だし、いちいちそんなことでやきもちなんか妬いてる場合じゃない。



でも、なんか、…むかつく。



「え、絶対怒ってるやん、

俺、なんかしました?」



「……」



彼の、時々出る関西弁が、たまらなく、好きだ。



年が離れすぎて、いまだに敬語が抜けない彼の、素が出たような気がして。



私は、どんどん彼のことが好きになっていく。



きっと、私の好きばっかりが増えている。



そんなことが、たまに、しんどい。



だって、きっと中島くんは、100で私との関係が始まっている。



それから増えることはない。



私は、0から始まった。



だから、どんどん、どんどん好きが増えていくのだ。



そしていつしか逆転して、私ばっかり気持ちが大きくなったらどうしよう、そんなことを、最近思う。



「…それ、」



私は、彼が持つ紙袋を指さした。



「今日、会社で貰ってた」



「あぁ、」



彼は、思い出したように、紙袋を見下ろした。



「よかったね、たくさん貰えて。

ミキちゃんとか、かわいいし、同期だし、仲いいもんね、嬉しかったんでしょ?」



「は?何言うてるんですか?」



「私なんかよりさ、全然お似合いだし、」



「え、もしかして、妬いてるんですか?

チョコで?」



「……」



「こんなんただの義理ですよ?」



「……どうだか、案外本気かもよ?」



「うーん、…」



彼は困ったように頭をポリポリ掻いている。



「受け取らない方が、よかったですか?」



「べつに、」



会社で私たちの関係を内緒にしようと言ったのは、私の過去が理由だ。



会社で彼がフリーだと思われているのは、私のせいなのだ。



「俺は、マキさん以外の人から貰っても、別に何とも思わないし、多分これほとんど義理だと思うし、もしそうじゃなくても、何も変わりませんよ?」



「……」



そんなの分かってる。



ただの、しょーもないやきもちだ。



「…ごめん、」



だからそう言った。



彼が小さくため息をつく。



「もう、しょーがない人ですね、」



ちらりと彼を見上げる。



本当に、私の方が年上なのに、ずいぶん子供みたいだ。



「マキさんからは、ないんですか?」



「え?」



「俺は、それが一番欲しいんですけど?」



「…ごめん」



そりゃあ、私だって、渡したかった。



手作りのものを、柄にもなく、作ってみたかった。



彼の喜ぶ顔が、見たかったから。



「まぁ、いいや、お腹空きましたよね?

なんか、食べましょ?

俺、作るんで、」



そう言って彼は廊下を歩いてゆく。



リビングへと入り、そのままキッチンへと向かいそうだ。



「あ、ちょっと、待って…」



「え?」



私の声に、彼が聞き返す。



だけど、行く先は、そのまま、キッチンへ、



そこは、まだ、私が散らかしたものが、そのまま…




「ん?」



彼が足を止める。



「え、これ、何?」



「……」



気まずくなって、恥ずかしくなって、顔を下げる。



「チョコ?」



「失敗しちゃった…」



シンクには、途中になった、チョコを溶かしたボウル、



カウンターには、小麦粉の、嵐、



白っぽい粉がたくさん散らばっている。



どうにもお菓子作りは苦手だ。



昔から、成功したことがない。



だけど、作ってみたかったのだ。



既製品じゃなくて、自分で作ったものを、渡してみたかったのだ。



彼の喜ぶ顔が見たかったから。



「ふふっ、」



彼が笑う。



「だから、今日速攻で帰ってたんだ」



「……」



「俺のために、作ろうとしてくれたんですか?」



「…うん」



小さく俯きながら答える。



でも、どうにも申し訳ない。



「ごめん、」



「ありがとうございます」



彼が荷物をおいて、こちらを振り向く。



「俺は、これが、一番嬉しいですよ?」



「…うん」



「柄にもなく、こんなことするから、」



彼の声は、少し呆れたようにも聞こえる。



もう、ダメだ。



恋愛に、年齢なんて関係ない。



私の方が、ずいぶん年上なのに、ずっと甘えっぱなしだ。



ずいぶん子供みたいだ。



「マキさん、俺、これ買ってきたんです」



彼が置いた荷物、先ほどから持っていた大きな紙袋の中から、何かを取り出そうとしている。



きっと他の子達からのチョコがたくさん入っているんだろうと思っていたその紙袋、そこから出したのは、小さな花束だった。



「はい」



「え、何これ?」



「知らないんですか?フラワーバレンタイン」



「フラワーバレンタイン?」



何それ?と目を丸くする。



「海外では、男性から女性に花束を渡すことが主流なんですよ?」



「そうなの?」



だからといって、中島くんが、私に?と目を丸くする。



「いつもの、感謝の気持ちです」



「感謝の気持ち?」



「そう。

いつも、苦手な家事を頑張ってくれてありがとうございます。

俺と一緒に、過ごしてくれてありがとうございます。

今日みたいに、やきもち妬いてくれて、ありがとうございます」



中島くんが私の手を取る。



「はい」



その手に花束を持たせる。



「…ありがとう」



花を貰うなんて慣れていなくて、戸惑う。



だけど、とても嬉しい。



嬉しくて、やっぱり好きだと思う気持ちがどんどん溢れていく。



「うん、俺も。

好きですよ、マキさん」



静かに言ってそっと抱き締められる。



だめだ、もう、満たされ過ぎている。



「うん、ありがとう」



少しずつ、慣れていこう。



この関係に。



まだ半月だけど、これからも、ずっと一緒にいられるように…






ハッピーバレンタイン…










新入社員と私。


中島くんとマキちゃんの、続編。



バレンタイン編でした😊



ちょっとめんどくさいマキちゃんと、



若いけど、しっかりものの、中島くん😊



ふいに思い付いて、書いちゃいましたー🥰



ちょっともうベロベロなんで💦🍺



後日読み直しておかしかったら、書き直すね😂💦



Bye Bye👋💕🍫



いろんなカップルのバレンタイン編書いても、おもしろいね~🤗