First Love 11 | ♡妄想小説♡

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主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

一時間ほどすると、だいたいイメージは固まってきた、という愁くんと一緒に店を出た。



「栞さん、ありがとう。

明日にでも花、見に行ってみるよ」



店にいる間に、小さい個人経営の花屋だけではなくて、大規模な、花の流通センターのことなども一緒に調べていた。



明日はそこに出向くという。



「うん」



少しでも役に立てたことが嬉しくて、にこりと笑う。



「家、どっち?送るよ」



「え、いいよ、そんなの、」



「いいよ、送る。もうすぐ日も暮れそうだから」



「…ありがとう」



きっと断っても、彼の優しい性格からすると、女性を一人で帰らせるなんてそんなこと出来ない、なんて言うんだろう。



だから素直にお礼を言った。



午後六時半、夕日が傾き始めていた。



ここは、都心からは少し外れて、大きな川が流れる、のどかな地域だ。



土手が高く作られた河川敷を、愁くんと二人並んで歩く。



知り合ってまだ二回目。



一緒にいても違和感を感じない、とても落ち着く、不思議な空間だ。



それは彼が醸し出す、とても穏やかな空気がそうさせるのだろうか。



「ごめんね、連絡出来なくて」



唐突に愁くんが言った。



「えっ、何?」



「連絡するって言ったのに、出来なくて…」



連絡先を交換した時のことを言っているのだろう。



あの日確かに愁くんは「連絡するね」と言った。



私も、本当はずっと待っていた。



「ううん、そんなの、全然、」



きっと仕事が忙しかったとか、言い訳はたくさんある。



本当は連絡なんてする気もない、社交辞令だったのかもしれない。



「…気にしてないよ、」



だからそう言った。



これは大人のマナーだ。



気にしてても、気にしてるなんて言わないし、本当は待ってたなんて、そんな図々しいことも言わない。



「そっか…」



ぽつりと愁くんは言った。



夕日側に歩く愁くんが、少し赤みを帯びている。



「気にされてないのも、悲しいな…」



また、ぽつりと言う。



「え?」



だから、そう聞き返した。



「本当は、ずっと、かけようかけようって、思ってたんだ」



思いもよらない言葉が返ってきて、思わず愁くんを見上げる。



だけど西側にある太陽を彼は見ていて、斜めからの横顔しか見えない。



「でも、電話して、出なかったらどうしようとか、何話したらいいんだろうとか、迷惑がられたらどうしようとか考えてたら、全然、かけれなくなっちゃって…」



彼の声が、弱々しく、小さく聞こえる。



「情けないよね、こんなの、中学生かよ、って」



「ふふ、」



嬉しい。



本当は、愁くんも気にかけてくれてた。



この一週間、私のことを考えてくれていた。



ううん、そうじゃなくても、今こうして、そう言ってくれてるだけでも嬉しい。



だってそれは、私を気遣ってくれてのことだろうから。



愁くんの中に、私の存在が確かにいて、それが根付いているということだから。



「引いた?」



愁くんがこちらを見る。



「ううん、全然」



少しだけ赤みを帯びた瞳で。



「嬉しいよ」



本音だ。



この人といると、素直になれる。



ふわりと、心の奥から本音が漏れてしまう。



「ふふ、よかった」



笑った彼の背中が、少しずつ夜の静寂を映していく。



どうやら本格的に日が沈み始めたようだ。



彼の顔も、優しく静かに映る。



同じように微笑み返すと、私たちはまた前を向いて歩きだした。