亡くなった父は、5歳の時に母が結核でなくなり、以来、継母に育てられてきた。その父が亡くなり、家を整理していたら、桐だんすの中から、家紋の入った喪服が出てきた。母いわく「父の本当のお母さんのもの」らしい。
もちろん、どんな人なのかしらない。でも、とても気が強く、すごくきれいな人だったと聞いた。私の気の強さは完全に遺伝してしまったようだ。
(きれいさは遺伝してない涙)。父は、継母に遠慮して、着物のことは黙っていたらしい。でも、大切にしていたようだ。
汗じみのついた黒い着物をはおってみると、なんだか父を遺して死ななくてはならなかった祖母の哀しみが伝わってくるようだった。
人は必ず死ぬ。どんな人も死ぬ。でも着物は捨てない限り、ずっと何世代も残り続ける。母はどういうわけか、捨てようと思っていたらしい。
でも、この着物はわたしのルーツでもある。祖母がいなければ私はいない。だから、そっと自宅のたんすにしまった。