映画「ある男」 | 晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

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2年前に公開された映画ですが、気になっていたにも関わらず観逃していました。今回市内のホールで上映会があったので、観に行ってきました。

 

 

あらすじ(映画.comより)

弁護士の城戸は、かつての依頼者・里枝から、亡くなった夫・大祐の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経験後に子どもを連れて故郷へ帰り、やがて出会った大祐と再婚、新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていたが、大祐は不慮の事故で帰らぬ人となった。ところが、長年疎遠になっていた大祐の兄が、遺影に写っているのは大祐ではないと話したことから、愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明したのだ。城戸は男の正体を追う中で様々な人物と出会い、驚くべき真実に近づいていく。
 

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平野啓一郎のベストセラー小説を映画化したものですが、原作は読んでいないので、先入観なく観ることが出来ました。妻夫木聡安藤サクラ窪田正孝など、主役級で演技派の俳優たちが共演していて、その年の日本アカデミー賞で8部門を受賞したのも納得です。

 

過去の映画なのでネタバレしてもいいと思いますが、窪田正孝演じる大祐は「ある男 X 」として、戸籍を入れ替えて過去も名前も捨てた男です。その正体を死後に追いかける妻夫木聡演じる弁護士城戸は在日3世という凝った設定。サスペンスの要素と併せて、個人のアイデンティティとは何かを問う作品です。

 

窪田はこういう屈折した、狂気を含む役をやらせたら抜群に上手いですね。妻夫木も冷静なエリートとは裏腹にコンプレックスを抱えた複雑な役どころをしっかり演じています。

 

城戸が調査の途中で刑務所で会う服役中の詐欺師を演じる柄本明の快演もさすがというか、凄みがありましたね。

 

他の登場人物を演じた俳優たちも、それぞれ二面生を抱えた人物像をしっかり演じて、退屈しませんでした。だれでも何気に持つ偏見と差別をさりげなく表現して考えさせるあたり、脚本と監督の仕掛けに感心しています。

 

エンディングは、最近の映画によくある観るものに判断を委ねる意味深な映像になっています。個人的には伏線回収してスッキリした気持ちで終わりたいですが、これは好みの問題でしょうか。