「みのお森の学校」4月の講座は、実際に里山に出かけて、どういう生態があり生活が行われているかを知るガイドツアーでした。
4月2日日曜日朝10時、集合は能勢電鉄妙見口駅。メンバー・スタッフ含めて20数名が、川西市黒川地区を目指します。案内するのは「みのお森の学校」の元受講生の安田さんです。
ハイカーで混雑する駅前から少し離れた広場で、行程の説明があった後、スタート。
この日のコースです。
最初は、妙見山の参詣道にあたる花折街道に沿って進みます。
里山の風景を眺めながら
脇道に入ります。
昔は段々畑だった名残の石垣が残る道を進むと
吉川八幡神社(地図①)に到着。ちょうどこの日は春大祭が行われている日だったので、神主や巫女さんの姿が見られました。
先導する安田さんが面白いものがあると言って紹介してくれたのが、これ。昔と今の電車の車体が展示されています。左が昔の阪急電車(当時は京阪神急行)の550形、右が能勢電鉄の1500系です。クリーム色の車体は珍しいですね。
神社の横では、御神馬が飼われていました。「いづめ」という名前の雄の5歳馬だそうです。巫女さんからニンジンの餌をもらって食べさせることができました。
本殿に参拝した後
細いトレイルから裏山に入ります。
この辺りからクヌギの木が目立ち始めます。先導する安田さんが、クヌギの木に関係するウンチクを話してくれました。
クヌギは萌芽が旺盛なので、成長の途中で1〜2mの高さで伐採を繰り返します。「台場」(ダイバ)という仕立て方で、土台となる幹だけが写真のように太くなるのだとか。安田さん曰く、夏前から樹液が出てきて、今でもクワガタやカブトムシがいっぱい集まってくるそうです。
その先の斜面には、イノシシを捕獲するワナや
炭焼き釜の跡などが見られます。
途中で見つけた丁石。おそらく妙見宮への参道の目印だったのでしょう。
(写真では二十二丁とあるので、本殿まで2.4kmほどありますね)
その先には、妙見宮の昔の石鳥居が残っています。この辺りから、大阪府能勢町から兵庫県川西市に入ります。
トレイルから一旦ロードに降りて、妙見山へのケーブル黒川駅(地図②)へ。
ケーブル駅から見上げると、見事な桜並木が山頂付近まで続いています。この辺りは、ソメイヨシノではなくて、エドヒガンが多いそうです。
ケーブルには乗らず、車道をしばらく歩いて、スパイスカレーとコーヒーの店「ヨナナ」の横から、再びトレイルに入ります。
(ヨナナの写真は撮り忘れました)
大きな台場クヌギの横を抜けると
クヌギの群生地に入りました。
トレイルから再び下りて、徳林寺の境内へ。
その先の道端にも、大きな台場クヌギが残っています。
今は公民館として使われている、旧黒川小学校(地図③)に到着。
裏山に作られたウッドデッキで昼食タイム。
お腹が落ち着いた後は、構内をブラブラ。こちらの校舎は明治時代に建てられ、築100年以上経っているそうです。
昔ながらの長い廊下もあります。
ふと下の畑を見ると、なんと野生のキジの姿が!ここへ来る途中でも「ケーン、ケーン!」という鳴き声が聞こえていたのですが、まさか姿を見られるとは。みんなで写真を撮りまくっていました。
そして、この日のメインとなる炭焼き窯(地図④)に到着しました。
川西市で唯一続いている炭焼き職人の今西さんの窯を訪問します。
大きな窯の前で、家業を継いでいる23歳の息子さんが、炭焼きの工程を説明してくれました。自分たちで林に立ち入って、炭にするクヌギを伐採し、長さ1mくらいにカットして窯に入れて作るそうです。窯の煙突から出る煙の色で、出来上がりを決めるのだとか。まさに勘と経験の世界です。
(写真の右が窯入れ前、左が長さも80cmくらいに縮んで炭になったクヌギです)
クヌギ林の中で、炭作りの苦労を語ってくれました。やはり他の家では後継者不足で炭窯を閉じているとか、重いチェーンソーを頭の上まで持ち上げて作業をしなければならないので、クヌギを伐採する人手も少なくなっているとか、炭焼きだけでは生活できないので、春夏は野菜を育てているとか。
綺麗な菊炭が一個¥100円で売られていたので、いくつか買って帰るメンバーもいました。
(クヌギから作られるのが菊炭、カシから作られるのが備長炭だそうです)
細い雑木の炭は、お茶室などの釜焚きに使われるそうです。
出発した妙見口の駅前に着いたのは15時過ぎ。8kmほどののんびりハイクでした。
解散してからは、駅前の売店で名物のししフルト(猪肉のフランクフルト)と豊能サイダーで一息。
台場クヌギの生態とか、炭焼き窯の実態とか、里山の知られざる一面を見聞きできたイベントでした。
追記:
川西市のカラーマンホールを見つけたので、パチリ。よく見たら、旧黒川小学校の校舎と名産の菊炭、リンドウがデザインされています。