ちょっと変わったイベントに参加してきました。
世界でも屈指の音響効果を誇る大阪中之島のフェスティバルホール(以下フェス)で、ホール内を移動しながらどんな違いがあるか演奏を聴き比べてみよう、というツアーイベントです。
主催するのは”クリエイティブアイランド中之島”というグループです。中之島エリアにある美術館やコンサートホール、国際会議場や図書館などを使って、建物と人、自然を繋いで新しいものを生み出していこうというプロジェクトをいろいろ立ち上げていて、今回の音響体験ツアーはその一つとして企画されました。
(写真はすべてイベントHPから)
18:00に開場。このご時世なので、ホールに入場できるのは100名に限定され、一部はオンライン配信されるという対応でした。
18:30からプログラムがスタート。
最初は聴衆が席を移動しながら聞き比べます。演奏するのは大阪フィルの首席チェロ奏者の近藤浩志さん、曲目は誰もが知っている「ダニー・ボーイ」というアイルランド民謡です。
①1階席前方で聴く
当然ですが、楽器の音が直接強く聞こえてきました。
②1階席後方で聴く(2階席がせり出している下で聴いてみました)
音に包まれた感じで、耳に響いてきました。
③3階席に移動して聴く
ステージは遥か下ですが、さすがフェス、音の歪みなどは全くなく、音が塊となって聞こえてきました。
個人的な好みでは、②が一番心地よく聞こえました。演奏者の近藤さんも、だだっ広いステージでのソロ演奏とあって、最初は少し緊張気味でしたね。
次に1階席の中程に座って、これも滅多に体験できないことですが、演奏者がステージで場所を移動して演奏するのを聴き比べます。曲目は、これも有名なサン=サーンスの「白鳥」に変わりました。
①ステージ中央
②ステージ前方
③ステージ後方
④ステージ向かって右隅
これも反響が良いのでそれほど大きな差はありませんでしたが、私の好みからしたら③での音が一番聞きやすかった感じです。
後半は、トークと専門家による解説が組み込まれていました。
初めにこの日演奏した近藤さんから、演奏者の立場からのコメントがあり、ホールの残響の長い短いで演奏方法を変えたり、曲のテンポによってもエッジを聞かせたり細かい音を際立てたりするという、プロならではの工夫を話してもらえました。
その後には、阪大の音響学の先輩後輩という2人の先生による解説。
この日の会場となったフェスの構造の解説があり、壁に設置されている、形や大きさ方向が微妙に違う「拡散体」という反響装置の役割や、音響障害を無くすために吸音材を一切使っていないという秘密が披露されました。
このフェスの残響時間は空席時に2.2秒、満席時に1.8秒に設計されていて、普通理想とされる残響時間は1.8秒なので、満席を前提(!)にした(解説者曰く)強気の音響設計がされているという意外な事実も初めて知りました。
その後は古代ギリシャからローマ時代、中世に渡る音響設備の変遷が語られ、現代の音響技術につながる進化の説明がありました。
そして、前半の聴く場所による音の違いの説明があり、ステージに近いほど直接音が耳に入るため、CDなどの音源が好きな人はこちらが好みの人が多いそうです。後方になるにつれて反響音の効果が加わり、私が音に包まれる感じで聞こえたのはこれが原因のひとつのようです。
一般的なコンサートホールの構造として、天井が高いのは反響を大きくするため、間口が狭いのは横からの反響を生かすためというのも、なるほどと納得。
最後に再び近藤さんのチェロ演奏があり、(曲目は分かりませんでしたが)私の好きな楽器なので心地よく聴くことができて、イベント終了。
2,700席という国内最大級の広さのあるフェスティバルホールで、1人の演奏者と100人の聴衆という貴重な雰囲気の中で、素晴らしい音響を再認識できた体験ツアーでした。


