ザ・キングズ・シンガーズ | 晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

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「(兵庫県)伊丹でキングズ・シンガーズのコンサートあるけど、行く?」

と学生時代に一緒にコーラスをしていた同期の友人(名古屋在住)からメールが来たのは、今年の2月。

 

名前は知っていたものの生で聞いたことがなかった私は、「いいよ!」と返事をして、チケットの手配は彼に任せておいたのですが、そのコンサートを今日聴きに行ってきました。以前から彼らの追っかけをしている彼は、今回6年ぶりのジャパンツアー中に伊丹のコンサートを含めて何カ所も行く予定だそうです。

 

ザ・キングズ・シンガーズ

 

 

1968年にイギリスのケンブリッジ大学キングズ・カレッジの学生6人で結成された男性コーラスグループです。

 

結成から約50年経っているので、メンバーは少しずつ変わって結成当時のメンバーはもちろん誰もいないのですが、ハーモニーというか音色(声質)はほとんど変わっていないそうです。

 

レパートリーも幅広く、中世の宗教音楽から世界の民謡、ジャズ・ポピュラー音楽から現代音楽までこなしています。

 

彼らの演奏の一番の特徴は、楽器を使わず人の声だけで歌う「ア・カペラ」ということ。世界的に活躍するコーラスグループの中では稀有な存在で、高い音楽性と優れた音感がなければできないことです。グラミー賞も2度受賞して、イギリスのグラモフォン誌では殿堂入りしているとか。

 

わざわざ日帰りでこれを聴きに来るためだけに名古屋から来阪した友人と、コンサート会場の伊丹アイフォニックホールで直接待ち合わせ。

 

 

初めて入るホールは、座席数500席ほどのこじんまりとしたところでした。そして彼が予約してくれた座席はなんと最前列。今回の演奏旅行のチケットはどの会場も完売で、なかなか良い席が取れなかったようです。

 

演奏が始まる前にホールの最後列から写真を撮ってみました。舞台の上にある四角い塊や舟形は反響板のような変わったつくりですが、全体に木のぬくもりが感じられ柔らかい音が響く感じです。

 

 

小さなホールでのア・カペラ演奏とあって、ステージには伴奏のピアノやドラムパーカッションなどはもちろん置いてなくて、マイクも無くシンプルに6つの譜面台があるだけです。

 

14時からコンサートが始まりました。

 

6人のパート構成は

カウンターテナー2人

テナー1人

バリトン2人

バス1人

 

よくある4人構成では無く、結成当初から(女声のアルトに近い音域が出せる)カウンターテナーを2人も揃えているのが特長です。実際聴いてみると、これが普通の男性コーラスの音色に華やかさを加えていて、よく考えられているのがわかりました。

 

今回の演奏旅行のテーマは「世界中からの手紙」。

 

第一部は、アフリカ音楽から北米の古歌、ヨーロッパの民謡から日本民謡、イギリス民謡から南米のポピュラー曲まで、文字どおり世界中の古今東西の曲をこなします。

 

イギリス紳士然とした登場から、6人が醸し出すハーモニーは聞いてて心地よく、ホールのやわらかな響きも手伝って、ゆったりとした気分で演奏を聴くことができました。

 

一人一人が持ち回りでするMC(曲目解説)は、すべて流暢な日本語で行われたのには驚きました(もちろんカンペを見ながらですが)。世界中で演奏旅行をしているサービス精神がこんなところにも現れていますね。

 

オペラ歌手のようにひとりひとりが圧倒的な声量があるわけでも無く、ポピュラーシンガーのような華やかさがあるわけでもありません。それでも息のあったコーラスは余裕すら感じられる安定した演奏でした。特に今回は最前列だったので、彼らがブレスで文字どおり息を揃えて吸う音まで聞こえてきて、その緻密なアンサンブルに圧倒されました。

 

特に感心したのは上の写真中央の白髪の男性。メンバーの年齢が公表されていないので正確ではないのですが、おそらくアラカンの年齢と思われます。パートはなんとカウンターテナー。でも声だけ聞いたらそんな年齢は微塵も感じさせない綺麗なファルセット(裏声)が響いていました。

 

日本民謡はドンパン節佐渡おけさ竹田子守唄というめずらしい選曲。その後に歌われたイギリス民謡は「グリーンスリーブス」「スカボロー・フェア」の2曲だけでしたが、さすがに彼らの出身地の曲だけあってさらりと歌いながらも気持ちの入った演奏でした。

 

第二部は「イエスタデイ」を始めとするビートルズの曲を4曲と、「ビイン・ザ・ビギン」などのアメリカンクラシックポピュラーを5曲演奏してくれました。

 

第一部は(彼らにとって)外国語の曲が多かったので、楽譜を時折見ながらの演奏でしたが、この第二部はすべて英語ということで、本当のア・カペラ演奏。

 

演奏中にところどころユーモラスなしぐさを見せて笑いをとったり、拍手や擬音をパーカッション代わりにしたりして、この辺は慣れたステージ構成でした。

 

アンコールは2曲演奏してくれました。オペラ「セビリアの理髪師」前奏曲をスキャトで演奏したのには驚きましたが、最後は童謡「ふるさと」で締めるあたりはさすがでしたね。

 

演奏後にかれらのCDをTSUTAYAに探しに行ったのはもちろんです。すばらしい演奏をありがとう。