今、気になっている女優のひとり、黒木華(くろきはる)
その和風な風貌から「昭和的な女優」と言われることも多いのですが、確かに健気そうに見えて結構芯が強そうな感じがしますね。
誰かと雰囲気が似ているな、と思って頭の中で思い浮かべてみたら、そうそう蒼井優に全体の感じは似ているかもしれません。
その黒木華が主演した映画を観てきました。
リップヴァンウィンクルの花嫁
公開されてからかなり経っていたので、梅田あたりの大きな映画館での上映は終わっていて、宝塚にあるシネ・ピピアという昔でいう二番館で観ることになりました。
平日の昼間ということでしたが、50人収容の小さな館内は半分ほど席が埋まっていました。
監督は岩井俊二、彼女をイメージして書かれた(充て書きされた)小説を基に、映画化されたそうです。
派遣教員の七海(黒木華)は些細なことでクビになり、厳しい現実から逃避するようにSNSにのめり込み、そこで知り合った男と結婚してしまいます。
相手に比べて親族が少なかった七海は、これもネットで知り合った何でも屋の安室(綾野剛)に、代理出席するニセ親族を集めてもらってなんとか体裁を取り繕います。
ところが夫が浮気をしたのに逆に浮気の疑いをかけられ、離婚して家を追い出された七海は、安室から月給100万円という怪しげな住み込みメイドの職を紹介され、そこで同じメイドの真白(Cocco)と出会い、不思議な共同生活が始まりますが.....。
現実社会に翻弄される気弱な女性を黒木華が好演、地なのか演技なのかわからないのは彼女の演技のなせる技でしょうか。
共演者も良いキャラを出しています。中でも言葉巧みに七海を操る安室役の綾野剛は完全にハマリ役です。こういう怪しげな役回りをやらせると本当に上手いですね。
謎の多い真白役のCoccoも彼女の地なのかと思えるほど自然な演技で、謎の多いキャラクターを好演しています。BGMはクラシック曲がほとんどですが、歌手である彼女の歌も流れていました。
七海を翻弄する安室は悪役なのかと思いましたが、結局は彼女を支える役回りだったようです。それでも最後までもうひとつ釈然としないままでしたけれど。映画を観ながら、「七海ちゃん、だまされるなよ!」となんど思ったことか。
不幸な現実社会と幸せな(SNSを中心にした)仮想社会との間に揺れる女性を描いて、岩井俊二監督が表現したかったのは何か?
3時間という最近の映画にしては長い上演時間でしたが、岩井ワールドに引き込まれてほとんど退屈することなく観ることができました。
黒木華ファン、綾野剛ファンにはオススメの映画です。
付記
タイトルにある「リップヴァンウィンクル」はアメリカの古い小説の主人公の名前ですが、なぜこの名前が付けられたのかは映画の解説なので紹介されているので、ここではあえて取り上げません。