●ニューヨークを舞台とする米のショーン・ベイカー監督のドラマ「アノラ」です。セックスワーカーの女性がロシアの大富豪の息子と出会い、結婚します。仕事も辞め、華やかな生活が待っているかと思いきや……。相手の両親が結婚を解消させようと動きだし、迎えることになる修羅場がすさまじく、試写会場は爆笑に次ぐ爆笑。楽しませるだけでなく、富と搾取や職業差別についても考えさせる、見事な出来栄えでした。
●ジャック・オディアール監督のスリラー「エミリア・ペレス」も有力候補です。性別適合手術を受けて別名の女性に生まれ変わったメキシコの麻薬カルテルの元リーダーと、手を貸す弁護士。2人の行く末を描いたミュージカル映画で、目にも耳にも楽しく、見る側の予想も次々と裏切ってくれる快作でした。