人の心を動かせるかも、わかりやすく話せるかも、理解の深さに比例する
コピーライターは魔法のように言葉を巧みに操って人の心に刺さる言葉を書くのではなく、製品のことから、その製品を使う人のことまで、とにかく対象となるものを深く理解することに重きを置いて、言葉を紡ぐ人たちだと思います。
これは、頭のいい人が話す前に考えていることそのものだと言っていいでしょう。
コピーライターは、短い文章で、その商品の魅力を伝え、消費者の心を動かさなければいけません。
コピーライター・仲畑貴志氏の有名なコピーのひとつに温水洗浄便座「ウォシュレット」のコピーがあります。
彼は担当者に「紙で、ふくだけじゃ、ダメなんでしょうか」と率直に聞きました。
「紙でふくだけじゃ、とれません」
と製品開発の人はこたえた。
「でも、ぼくたち、ずーっと、紙でふいてきたじゃないですか」
「では、ナカハタさん、この絵の具を、てのひらにつけてください」
わたしは、青い絵の具を手のひらにつけた。
「この、ティッシュペーパーで、ふいてください」
わたしは、ティッシュペーパーで、手についた絵の具を拭いていった。
「ティッシュペーパーをみてください」
わたしは、ティッシュペーパーを見る。
「絵の具、ついてますか」
ティッシュペーパーには、もういくら拭いても、絵の具はつかなかった。
「てのひらを、みてください」
手のひらには、皮膚のしわに沿って、青い絵の具がいっぱい残っていた。
「おしりだって、おんなじです」
わたしの脳の奥が、チリンと鳴った。これは、売れると確信した。
仲畑貴志著『この骨董が、アナタです。』より
おしりを拭いたトイレットペーパーに便がついていなくても、おしりには便がついている。
絵の具が染みついた手と、絵の具のついていないティッシュを見て、生まれたのが
「おしりだって、洗ってほしい」
という名コピーでした。
コピーライターは魔法のように言葉を巧みに操って人の心に刺さる言葉を書くのではなく、製品のことから、その製品を使う人のことまで、とにかく対象となるものを深く理解することに重きを置いて、言葉を紡ぐ人たちだと思います。
これは、頭のいい人が話す前に考えていることそのものだと言っていいでしょう。
コピーライターは、短い文章で、その商品の魅力を伝え、消費者の心を動かさなければいけません。
頭のいい人が話す前に考えていることそのものだと言っていいでしょう。