ジェントル・クリーチャー | 好きなことだけで生きられる

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映画「ジェントル・クリーチャー」(2017)を観ました。

以下映画紹介です。

ジェントル・クリーチャー

Кроткая

A Gentle Creature

監督:セルゲイ・ロズニツァ

出演:バシリナ・マコブツェワ

ジャンル:ドラマ, ミステリー

2017年

フランス、ドイツ、リトアニア、オランダ

143分

音声:ロシア語、フランス語

字幕:日本語

NR

© SLOT MACHINE SARL, ARTE FRANCE CINEMA, LOOKS FILM & TV PRODUKTIONEN GMBH, STUDIO ULJANA KIM, WILD AT ART, GRANIET FILM, 2017

2018年ウクライナ映画アカデミー賞監督賞受賞 ウクライナ出身の鬼才セルゲイ・ロズニツァ監督が放った衝撃の寓話

オススメポイント: 『国葬』などの<群集>ドキュメンタリー3部作や『霧の中』(2012)【2022年6月5日~8月3日再配信】、『ドンバス』(2018)などで知られるウクライナ出身の鬼才セルゲイ・ロズニツァが2017年に発表した衝撃の寓話。ドストエフスキーの短編「やさしい女」(1876)にインスパイアされ、全体主義国家の腐敗や不条理に翻弄される人々を、説明を廃した異様な緊張感のあふれる描写で描く。第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でプレミア上映され、第24回アダナ映画祭(トルコ)で審査員特別賞、2018年ウクライナ映画アカデミー賞で最優秀監督賞を受賞した。

あらすじ: ロシアの村はずれに一人で暮らす女性。ある日、収監中の夫に送った小包がただ「差出人に返送」と書かれ、何の説明もなく返送されてくる。ショックを受け、混乱した女性は、理由を探ろうと辺境の地にある刑務所に向かう。夜汽車に乗り、辿り着いた刑務所には同じような境遇の人々が長蛇の列を作っていた。順番を待ち、差し入れを頼むが許可されず、抗議すると連行され、釈放されると今度は怪しげなブローカーたちが彼女につきまとう。やがて、駅で途方に暮れる彼女はある謎の屋敷へ連れていかれる。そこには軍の管理の下、様々な人々が集められていた…。


【配信期間:2022年6月4日~8月2日】

ジャイホー映画紹介記事より

収監中の夫に送った小包をなんとか夫に届けたくて妻である女性があちこち駆け巡る話です。

返却された理由もわからず、とうとう夫がいるであろう刑務所にまで足を運びます。

寡黙と過剰さの話です。

とにかく荷物を届けるための女性は目的を果たすことに集中して必要なこと以外は話ません。

対して出てくる人たちの過剰なまでのおしゃべりは度を越えています。

とにかくしゃべるしゃべる。大阪のおばちゃんにも負けていません。

女性がバスから降りるところから始まります。家に帰宅して犬をなで犬に餌をやり自分も食事します。

届いたハガキに目を通す。
郵便局から荷物が届かなかった通知でした。

郵便局で職員と対応しています。
理由はわからずに荷物の返却を受けます。

荷物を持ってバスで自宅にもどります。
このバスでまず乗客の過剰なおしゃべりの洗礼を浴びせられます。

やれ足元の女性の荷物がじゃまでストッキングが切れると文句を言う女性。
棺桶を運んだ人もいたんだから文句は言うなと別の女性が言う。
近所であったバラバラ殺人事件を語る別の女性。
一緒にバスに乗った友人がその夜に亡くなっていたと語る男性。

この間主人公の女性は無言です。
映画を象徴するような場面です。

その後自宅にもどり荷物を詰め替える女性。
大きかったのが問題かも痴れないと勝手に判断して今度は以前の半分位の箱に夫への荷物を詰め替えます。
缶詰や洋服など。

その夜、別の女性に夫に会いに行き留守にするので仕事を変わってくれることをお願いに行きます。

バスに揺られ、警察署で荷物検査。
後ろの収監中の障害者のヤジがうるさい。

汽車に揺られて刑務所ぬに向かう。
同席した客の会話が騒がしい。
歌を歌う親父。自分も罪もないのに5年間収監された。そんなのよくあることと慰めにもならないことを語る親父。息子が亡くなりお金を受け取りに行く母親。
ここでもまた過剰なおしゃべりの洗練受けます。

駅に着きタクシーで刑務所に向かいます。
ここでもまたタクシーの運ちゃんの過剰なおしゃべりの洗練を受けます。
街に刑務所のあるおかげで潤っているとか。

刑務所に書類を受け取る。
記入して荷物を持っていくとあえなく却下。

理由は駄目なものは駄目。
それでもしつこく尋ねていると怒って受付の職員が窓を閉めて業務停止。
まだ並んでいる人がたくさんいるのに。

泊まるとこはあるの?
女性に声をかけられて宿に行くとそこではどんちゃん騒ぎ。
ここでまた過剰なおしゃべりの洗練を受けます。

さっきの女性に紹介されて男に会う。
写真を撮られスリーサイズを聞かれる。
後でボスを紹介する。とりあえず明日は出歩くなとの指示。

次の日の朝、荷物を担いで刑務所の受付に行く。
昨日と同じ受付の女性。
荷物の申請をするとまた昨日と同じで却下。

別の男性からここに登録でもしていたらと紙を渡される。

警察施設の前で立っていると車で来た軍の職員に連れ去られる。
踏切の前で車を止め、帰ってまた仕事をしろ、記録に残さないからと諭される。

駅に向かう途中で昨日のボスに紹介すると言っていた男性に車で拾われる。
 
男は途中で売春婦を迎えに行く。
車の中で売春婦と男の過剰なおしゃべりの洗練を受ける。

売春婦を下ろしてボスの店に案内される。
店でボスに会う。
ボスの過剰なおしゃべりの洗練を受ける。

ボス知り合いに会ってそっちに行ってしまう。

結局なんの進展もないまま取り残される。

最後の頼み、人権活動家の事務所を訪ねる女性でした。

人権活動家の事務所で女性所長の過剰なおしゃべりの洗練を受けます。

結局、申請しても結果は3週間先と言われてしまいます。

あきれて「もう、誰に頼ればいいのか」と所長に問うと「神に」との返事が帰ってきました。

駅の待合室で帰りの汽車を待っている女性。
宿屋を紹介された女性に誘われてついていく。

馬車で森に連れられていき、着いたところで着替えを強制される。

誰も見ていないからと男に言われて着替えていると目の前で別の男たちの視線にさらされていた。

着替えて案内された場所を覗くとそこは刑務所長を中心として今までに女性が出会った人たちが一同に会してすべらない話が始まるところでした。

それぞれに帝国ロシアをほめたたえる話を披露し拍手で締めくくられます。

まさに過剰なおしゃべりの洗練です。

最後に所長の話でようやく女性の夫との面会と荷物を渡す許可がでました。

みんなに見送られて車に乗り込む女性。

しかし車の中で男たちに乱暴される。
暗がりの荷台の中で。

ふと気がつくとさきほどの駅の待合室。
さっきと同じよいに宿屋を紹介された女性が声をかけてきて、女性が着いていく。

ここで映画は終わりです。

映画は終わっても過剰なおしゃべりの洗練のかずかずのエピソードがしばらく頭の中をぐるぐると駆け巡って離れません。

女性が夫に荷物を届けるだけのストーリーでしたが、むしろ、女性以外の人物の話を聞かせることのための映画でもあります。

いちいち物事が遅々として進まない全体国家の悪しき体制批判であり。

そこで生きる市井の人々のたくましさズルさ滑稽さ真面目さ卑猥さまでをも描き出すことに成功しています。

客観的に見れば見るほどこんな国に住みたくはありませんが、いざ、自分がその立場になったら彼ら彼女の姿が自分自身の姿に重なって見えてくるのが恐ろしいです。

映画の演出は過剰なおしゃべりとは別にテキパキと極めて的確にある意味とても見やすく撮られていました。

2017年のセルゲイ・ロズニツァが生んだ怪作です。