予備校の講師をしている著者の歴史をとらえる観点は他と少し違うと感じました。
洋の東西を問わず、古今を問わず、歴史にその名をとどめし偉人たちが口を揃えて言う言葉、それが「歴史に学べ」です。
ここで注意すべきは「歴史を学べ」ではないこと。
「同書 はじめに」より
歴史用語の丸暗記など、所詮は「偏差値を上げるためだけに特化された訓練」にすぎません。
そのために多くの人は、学生時代に「歴史(用語)を学んだ」ことはあっても、「歴史に学ぶ」
機会を奪われ、こううそぶくのです。
「歴史なんてつまらない」
なんという人生の損失でしょうか。
歴史は、知識を蓄積すること自体には意味がありません。
これを体感し、その流れや意味を理解し、自分の置かれた状況と照らし合わせた上で、そこから人生訓を汲み取ることに意味があるのです。
「同書 はじめに」より
歴史を紐解けば、ありとあらゆる立場、ありとあらゆる状況の者たちが、ありとあらゆる成功と失敗を繰り返しています。
どう行動して失敗したのか、どう判断して成功したのか。
先人たちの成功と失敗の中に、必ず答えが隠されています。
歴史は人生訓の宝庫。
まさにこれからの時代、転ばぬ先の杖として歴史に学ぶという姿勢は、より一層重要性を増すことになります。
「同書 はじめに」より
ここで、ようやくこの本の意図が明かされます。
そこで本書の登場です。
本書では、世界の歴史の中から15の人生訓を取り上げ、試練に直面した偉人たちの対処を体感することで、彼らの失敗や成功を、自分の人生に取り込んでいこうとするものです。
足を取られてなかなか進むことができずもがいているならば、そこから抜け出すヒントが見つかるかもしれません。
「同書 はじめに」より
その後、15の人生訓が23人の歴史上の人物を通して語られます。
ナポレオンは逆境は飛躍の糧を伝えてくれ、ヘラクレイオス1世は小さなつまずきは神の助言を教えてくれます。
23人の歴史上の人物は、その全てがなじみ深い人ではありませんが、15の人生訓は私たちの人生でも生かせる教訓ばかりです。
「天は自ら助く者を助く」どんな絶望にあっても諦めない。その者にのみ幸運の女神は微笑む。
「死中に活あり」追い詰められたときに弱気は禁物。これを払拭するためにあえて敵陣に突っ込む。
「学びて思わざれば則ち罔し」知識を得たことで満足する者は多い。しかし、実践の裏打ちなき知識など無意味である。
超人気予備校講師だけあってわかりやすく書かれています。
自分の人生に対する人生訓がまさか歴史に隠されていたとは。
歴史に対する接し方にコペルニクス的転換をもたらしてくれる一冊ではないかと思います。
手元に置いて何度か読み返して理解を深め、歴史を自分事として活かす秘訣を学びたいと思いました。