原作の落語からの脚色が絶妙だった「碁盤斬り」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

「孤狼の血」の白石和彌監督初めて時代劇です。

身に覚えのない罪をきせられたうえに妻も失い、故郷の彦根藩を追われた浪人の柳田格之進。彼は娘のお絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしていた。格之進は囲碁にもその人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心がけている。ある日、旧知の藩士からかつての冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は復讐を決意し、お絹は仇討ち決行のため、自らが犠牲になる道を選ぶが…


映画を観る前に原案となる落語の「柳田格之進」をYouTubeで観ました。またの名を「碁盤割り」「柳田の堪忍袋」とも言う一席だそうです。

浪人の柳田が囲碁仲間質両替渡世の男と懇意になって彼の家に通うようになり、ある日、その家で50両が紛失し、柳田が疑われるが、柳田は身に覚えがない。疑った質両替の主人にもし見つかったら首をもらうと言った柳田は娘を吉原へ入れて、その金で50両を工面し質両替の主人に届ける。

しばらくして、質両替の主人は大掃除の際に失くした50両を見つけるが柳田はすでに家にいなかった。

柳田と質両替の主人は町中でばったり再会し、50両が見つかったことを柳田に告げると柳田はあのときの約束を果たしてもらうといい、質両替の主人も覚悟するが…というお話で最後は落語らしくハッピーエンドになり、復讐ドラマではありませんでした。

映画では格之進が藩を追われ、妻が命を落とす理由が語られ、その敵となるのが藩の上役だった男で、その男への復讐がサブエピソードとなり、50両の濡れ衣を晴らす話と同時進行で展開し、派手なクライマックスを迎えます。落語からの多少の改変はありつつも、基本は落語に沿っていてアレンジの見事さに感心しました。

時代劇としての佇まいや見応えも十分で久しぶりにいい時代劇を観た気分です。