サイレント時代の小津映画はポップで楽しくて寅さんみたいでびっくり「出来ごころ」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

小津安二郎監督が1933年に製作した喜八ものの第1作です。

 

昭和初期の東京の下町。男やもめの喜八は、小学3年の息子・富夫と暮らす工場労働者で弟分の次郎は元・戦友で隣同士に住み職場も同じ長年の相棒。ある夜、喜八は仕事先をクビになり行き場のない春江に一目惚れして宿を世話する。”かあやん”ことおとめが営む一膳飯屋で働き始める春江に熱を上げた喜八は飯屋に通いつめて酒を呑み、工場も欠勤する有様。春江は喜八に感謝しながらも若く美男な次郎に気があり、次郎のほうは冷たく彼女を拒み…


工場をクビになって宿無しの若い春江を気の良い喜八が世話して、喜八はおじさんのように慕われることに気をよくした喜八はむ春江が働く飯屋に通いつめ、喜八の同僚の次郎はそんな受かれる喜八に呆れ、春江に喜八を勘違いさせるなと嗜める。

飯屋のかあやんは彼女の身の上を心配し、次郎とくっつけようと喜八に相談に来て…そうとなる喜八は

春江のために次郎を説得に行きます。


喜八のキャラクターは寅さんの原型みたい非モテビジュアルだけど、人情に厚くて人を惹きつけます。見ているうちに喜八のセリフが渥美清さんの声で脳内生成されてきます。寅さんと違うのは喜八には出来た息子がいることです。息子が失恋して仕事をさぼり飲んだくれる喜八に泣いて抗議します。寅さんのさくらやおいちゃんの役割が息子です。 

ラストまで風来坊な感じでしっかり寅さんでした。

戦後の小津映画はすっかりスタイルが定着した感じでしたが、戦前のサイレントはテンポよく、コミカルで楽しく陽気です。

それでいてしっかり松竹の伝統にのっとった人情ドラマでもあります。

戦後の小津映画は寝てしまう人でも「男はつらいよ」シリーズが楽しめる人ならきっと面白い作品だと思います。