難病患者の扱い方が絶望的過ぎると思うヒューマンドラマもどきサスペンスだった「市子」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

「僕たちは変わらない朝を迎える」の戸田彬弘監督が、自らが主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演「川辺市子のために」を映画化した人間ドラマです。監督と杉咲花さんの舞台挨拶つき先行上映で観ました。

 

川辺市子は3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則からプロポーズを受けるが、その翌日に姿を消す。途方に暮れる長谷川の前に、市子を捜しているという刑事・後藤が現れる。市子の行方を追う長谷川は、昔の友人や幼なじみ、高校時代の同級生など彼女と関わりのあった人々から話を聞くうちに、かつて市子が違う名前を名乗っていたことを知り…


ネタバレ禁止な感じのお話ですがちょっとネタバレで書くと、令和の「砂の器」という感じで、難病の子どもが事件の被害者になっていて、その死体が発見されたことにより、ヒロインが失踪し、恋人が刑事とヒロインの足跡を追う感じのお話です。

ヒロインの不幸な生い立ちはわかりますが、彼女の行動はやっぱり利己的でしかなく、同情の余地もなく後味悪く終わります。

好きなキャストがかなり顔を揃えていますが、どうにも好きになれない感じの話で残念です。

あの難病の患者の介護が大変だからといって、ああいう行動に出ることを肯定的にもとれる描き方をしているところが全く受け入れ難く酷い作品だなと思います。難病の子の介護とは別の問題が主題であるとはいえ、蓋を開けたら安っぽいファムファタールモノまんまな結末で、あの難病を扱うならそれ相当の社会性のある内容にしなくてはいけないのではと思うばかりです。主題となる問題の方は解決策が見いだせるはずなのにその問題を短絡的に解決するため殺人を繰り返すヒロインに腹が立ちます。

時系列をいじり、たくさんの登場人物の視点からヒロインを描く構成もウザイし、高校時代の彼氏のエピソードなんてなくていいし、ムダもあります。

もっと開き直って、「ゴーンガール」みたいにサスペンス全開な描き方ならまだ許せたのかも。