黒坂清監督が生保レディの闇を描きつつ、黒沢流ホラーになだれ込んでいく「DOORIII」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

高橋伴明監督から黒沢清監督にバトンタッチした1996年製作のシリーズ第3作です。Amazonプライムで観ました。

 

大手保険会社の外交員をしている佐々木京は、昇進まで後一歩というところで営業成績が伸び悩んでいた。新規の契約開拓のために飛び込んだビルで若くして外資系企業の上級管理職の座にある藤原美鶴と出会う。謎の多い美鶴に、京は警戒しつつも魅了される。しかし、美鶴と出会った日から、京の周りには奇怪な出来事が起きるようになり…

 

高橋伴明監督が1・2作を監督したシリーズを黒沢清監督が引き継いだ形になっていますが、そもそも1・2作とも監督が高橋伴明で高橋惠子が出演していることくらいしかつながりのないシリーズでその第3弾を黒沢清がどう料理するのかが見どころとなります。

ちなみに高橋伴明監督と黒沢清監督はディレクターズ・カンパニーに所属していたつながりがあり、「DOOR」1作目も高橋監督のディレカン時代の作品です。

田中美奈子演じる出世欲みなぎる離婚女性が新規の顧客を求めて飛び込んだビルでヤングエグゼティブな男と出会い、最初のうちはその男に男性的な魅力を感じはじめ自分は欲求不満なのかとか思ったりするのでなんか恋愛展開でもあるのかと思いつつ、その男がだんだん不気味な存在になっていき、中盤にはホラーと化していきます。

前半のわりとリアルな生保レディのドラマとは展開が離れすぎていてびっくりでした。田中美奈子にセクシーな場面はなくもないですが、真弓倫子が枕営業生保レディ役で身体を使った営業する場面があり、現在の黒坂清作品では考えられない露骨なエロシーンもあったりします。

シリーズの顧客ニーズとしてはセクシーなサスペンスなのがわかります。しかし、黒沢清なのでやりたいのはホラーなのでどうしてもホラー風味に流れていき、セクシー担当の真弓倫子もしまいには貞子ばりの怖いなにかに変容していきます。終盤に登場する鉄の扉もいかにも黒沢ホラー。

シリーズ前2作のファンが望むものとはおそらく違うものになっていますが、黒沢清映画ファンにとっては大満足な内容になっていると思います。シリーズ作品のせいで観るのを躊躇する人もいるかと思いますが、黒沢作品が好きなら必見の1本です。