食と大阪 -通説や経験など- | れぽれろのブログ

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今回は食べ物の話です。
一般に大阪と言えば、たこ焼き・お好み焼きなどの粉モノ文化などと言われます。他にも串カツなども大阪らしい食だと言われることもあります。
しかし大阪府の特徴はこれだけに非ず。今回は大阪府出身・在住者が、自分の経験を思い出したり、郷土史本など読んだ記憶を思い出したりしつつ、大阪の食の特徴らしきものを、あれこれまとめてみようと思います。
以下、思いつく限り書き出してみます。


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関西と言えば鍋文化、鍋料理を好む傾向があると言われます。みんなで集まると鍋、家族でも鍋、友人や恋人とも鍋、1人でも鍋を食べる人も多いようです。独身男性が夕食に自宅で1人で鍋をつつく、という経験もよく聞きます。
都道府県別統計とランキングで見る県民性のページ(いわゆる「とどラン」、https://todo-ran.com/)によると、都道府県別の白菜の消費量ベスト5は、大阪府、和歌山県、京都府、奈良県、兵庫県となっており、すべて近畿地方の都道府県です。白菜の消費量がやたらと多いのは、鍋を食べる文化の表れと思われます。

大阪の発祥の鍋と言えば「てっちり」(ふぐ鍋)が食文化として有名ですが、これは庶民はなかなか食べられません。自分もてっちりを食べたのは大人になってからです。現在は「がんこ寿司」(大阪の寿司・鍋料理のチェーン店)などの大衆的な店でも気軽に味わうことができます。てっちりは昆布出汁とポン酢で味わう淡白な味が魅力です。
しゃぶしゃぶも大阪のステーキハウス「スエヒロ」が開発した料理であると言われます。牛肉に合うゴマダレを開発したのもスエヒロとのこと。
ゴマダレも美味しいですが、鍋のお供と言えばやはりポン酢です。「旭ポン酢」が有名で、ちょっと高いポン酢ですがスッキリとした酸味が美味しい。鍋以外にも豚肉や餃子などにも合います。自分の実家では旭ポン酢は使っていませんでしたが、府外の方から「大阪なら旭ポン酢やろ」と言われ、買って食べてみたらやたらと美味しかったというのが個人的な経験です。メーカーの旭食品は八尾市の企業です。

高くてなかなか食べられないと言えば、うなぎです。関西のうなぎは、江戸前などの蒸す工程を省略し、脂の風味を残した昔ながらの食べ方であると言われます。
大阪では昔は「まむし」と言われていたようです。NHKみんなのうたの1969年の歌「さっさか大阪」でも
「マムシ出されて逃げ出すな」「ヘビではないがなうな丼や」という歌詞があります。
昨今は江戸前の店が増え、百貨店のレストラン街に入っている店舗などは軒並み江戸前です。街の小さなうなぎ屋さんなどでは、今でも関西風のうなぎが食べられます。

寿司と言えば「大阪寿司」、いわゆる押し寿司ですが、本格的なものは現在は老舗料理店以外ではなかなか食べられないかもしれません。戦後は大阪でも江戸前が普通。自分も子供のころから江戸前の方が好みでした。
大阪寿司は現在は百貨店の食品街などで安くて美味しいものが食べられます。箱にギュッと収まったお寿司は見た目に楽しくて、たまに食べるとおいしいです。
回転寿司は東大阪市の布施駅前にある「元禄寿司」が発祥の地と言われます。実は自分の家から歩いてすぐで、たまに食べに行くお寿司屋さんです。商店街の中にあるお寿司屋さんで、隣に銀行があり、この銀行の前では常に酢飯の匂いがします 笑。ちなみにスシローは吹田市の企業、くら寿司は堺市の企業で、いずれも大阪府です。現在は江戸前も意外と大阪資本が市場を占拠しています。

おでんは昔は「関東炊き」と言われていたようです。自分の父もおでんのことを「かんとだき」と言ってました。おでんの具は牛スジとタコが入るところが関西の特徴でしょうか。個人的にも牛スジは具として必須。じっくり煮込んで柔らかくなったスジ肉は美味しいです。タコもあれば嬉しい一品。

昔は男性は牛スジが好み、女性はタコが好みという傾向があったなどと言われます。「いもたこなんきん」(女性が好むもの)という言葉もあります(正式には「芝居こんにゃくいもたこなんきん」)。
逆におでんに入らないものが、ちくわぶとはんぺんです。ちくわぶもはんぺんも、どういう食べ物なのか自分はいまだにはっきりとよく分かっていません 笑。(食べた記憶はあるように思いますが、印象には残っておらず。)

粉モノ文化といえばたこ焼き。たこ焼きはチェーン店で食べるよりも、その辺の個人営業の店舗で食べた方が美味しいという印象です。外はカリッと中はフワッとではなく、個人的には外も中もフニャフニャのが一番おいしいと思います。ソース味でも出汁味でも美味しく頂けます。子供のころは近所で売られていた、タコとコンニャクが入ったフニャフニャのたこ焼きが、世界一美味しいと思っていました。
大阪府の各家庭には必ずたこ焼き器があるという説がありますが、現在はどうなのかは分かりません。確かに実家にはたこ焼き器がありましたが、使用頻度はそんなに多くはなかったです。家で焼くより買って食べた方が美味しいです。おそらく戦後の高度成長~団塊親世代が家電を大量に購入する時代に、大阪で売ったらたまたまヒットした商品、くらいの位置づけなのではないかとも思います。

小麦と言えばまずはうどんです。うどんは出汁を味わう食べ物。シンプルなかけうどんが定番で、金色の出汁に入れられた麺をサラッと頂き、汁まで美味しく飲みます。昨今は讃岐系の店も増えました(個人的にも讃岐系は美味しいと思います)。
意外と食べる比率が高いのがそうめんです。大和の「三輪そうめん」、播州の「揖保乃糸」と、有名メーカーが近畿圏にあることも一因かも。そうめんも食べ始めは美味しいですが、食べているとだんだん飽きてきます 笑。子供のころは「またそうめんか」と思っていました。とくに夏になるとやたらとそうめん比率が上がります。

しかし、小麦食で真に重要なのは、たこ焼きでもうどんでもそうめんでもなく、パンです。関西はパン食の比率が高い地域です。上にも登場した「とどラン」によると、パン消費量のベスト5は京都府、兵庫県、岡山県、大阪府、滋賀県で、その後も奈良県、広島県と続きます。近畿~山陽はパン食が普及している地域です。自分も毎朝食パンを食べますし、お休みの日のお昼もパン屋さんに行くことが多いです。
食パンは5枚切りが一般的。外はカリッと中はフワッとが好まれるからだと言われ、実家でも5枚切りを食べていました。しかし現在は1人暮らしのため5枚だと余るので、仕方なく6枚切りのハーフ(3枚セット)を買って食べています。(個人的には5枚切りを3枚セットで売ればいいのにと思いますが、パン一斤をまたぐのでロット管理が難しいことや、梱包の問題などもあるのかもしれません。)
これは過去にも書きましたが、パン消費量はラーメン店舗数と逆相関にあるのではないかというのが自分の推測です。とどランによると、ラーメン店舗数ワースト5は兵庫県、奈良県、大阪府、滋賀県、長崎県となっており、京都を除くと近畿圏は概ねラーメン店舗数は低位です。関西はラーメンを食べずに代わりにパンを食べる、ということのかも。

肉といえば牛肉です。単に「にく」といえば大阪では一般に牛肉のことを指します。「にく食べにいこか」と言われ、行った先が豚肉や鶏肉の店だと、たぶん怒ります 笑。
肉じゃがのお肉も牛肉、親子丼に似た料理で牛肉と卵の丼は「他人丼」と言われますが、これは今は他県でも一般的かも。ビフカツも一般的ですが、個人的にはカツはトンカツの方が美味しいと思います。揚げる場合は牛より豚が合うように思います。

カレーも大阪とかかわりの深い食べ物です。カレー粉の国産化は西淀川区のハチ食品。家庭向けカレー粉の販売は東大阪市のハウス食品、ブロックタイプのカレールーは西淀川区の江崎グリコ、レトルトカレーの販売は中央区の大塚食品(ボンカレー)と、すべて大阪の企業がスタートです。
大阪はラーメン店舗数が少ない地域ではありますが、加工食品としてのラーメン開発についてはこれまた大阪が先進的で、チキンラーメン(日本初のインスタントラーメン)もカップヌードル(日本初のカップラーメン)も、池田市の日清食品が開発したものです。
カレーにせよラーメンにせよ、上に書いた江戸前寿司にせよ、それ自体を美味しく食べるということより、一般化・大衆化するために頑張る企業が存在するというところに、大阪の特徴があるのかもしれません。
その他、オムライスも大阪の「北極星」という洋食屋さんが開発したと言われています。北極星は現在でもデパ地下などで営業しています。

天ぷらと言えば一般的には衣を付けて揚げた食べ物のことを指しますが、大阪では関東で言うさつま揚げに相当する練り物のことも「てんぷら」と言います。単に「てんぷら」と言った場合は区別不可能。「てんぷら食べにいこか」というと衣揚げの天ぷら、デパ地下などで「てんぷら買うて帰ろか」というと練り物の方になりますが、家庭などで「今日はてんぷらやで」と言われると、どちらなのかは判別できません 笑。
ちまき(粽)と言えば、甘いあんこが入った白いお餅を、笹の葉で細長くくるんだ状態で提供されるおやつですが、関東でちまきと言うとぜんぜん違う食べ物のことを指すらしいです。(これは大人になってからも長い間知らなかった。)
カボチャは「なんきん」という人もかつては多かったようですが、今は少ないかもしれません。自分の父も「なんきん」と言ってました。上にあげた「いもたこなんきん」の「なんきん」はカボチャの意です。

自分はゼロ年代から10年代半ばまで長らく泉州に住んでいました。泉州では「がっちょ」という小魚が有名で、居酒屋などではがっちょの唐揚げは人気メニューです。(がっちょ唐揚げはスーパーなどでも売られていますが、長く食べてないのでどんな味だったかは記憶はやや不明瞭。)
水ナスとタマネギも泉州名物です。スーパーで売っている水ナスのお漬物が美味しかった記憶です。タマネギは淡路島が有名すぎて泉州は影が薄いですが、昔はそこらじゅうの畑でタマネギを作っていたようです。自分が子供のころ(80年代後半)に、みさき公園(泉州にある遊園地)に遊びに行く際には、大量のタマネギが干されている畑をたくさん見かけたように記憶しています。生タマネギを薄く切って提供される料理も居酒屋の定番メニュー。店によっては「泉州スライス」などというネーミングで売られています。


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ということで、あれこれ思いつくままに並べてみました。自分はそもそも大阪以外に住んだことがない人間ですので、東西比較などはどこまで的を得ているのかどうかは分かりませんが、大阪・関西の食文化の参考にはなるかもしれません。