大阪府 生駒山麓のお寺 -野崎観音(慈眼寺)と六万寺(往生院)- | れぽれろのブログ

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神社仏閣探訪シリーズ。

今回は生駒山地の山麓にある2つのお寺を取り上げたいと思います。

生駒山地は大阪府と奈良県の境界となっている山地(一部は京都府にまたがる)で、北は京都府八幡市の男山から、南は大和川付近の大阪府柏原市のあたりまで、南北に長く伸びた山地です。おおむね山地の西側(大阪府側)は急な勾配になっており、東側(奈良県側)はやや緩やかです。
生駒山地やその南の金剛山地があるおかげで、山地の東側の盆地は自然と外敵を防ぐ格好になり、このために古代の大和王権が山地の東側にて栄えたのではないかと思われます。
大阪から奈良に向かうには生駒山地を迂回し、北から回るか南から回るかしかなく、近代の鉄道もこの迂回ルートに沿って敷設されました(北ルートが現在のJR学研都市線、南ルートが現在のJR大和路線)。その後、大正時代初期に生駒山地をぶっこ抜く生駒トンネルが開通したおかげで、現在は近鉄奈良線にて大阪-奈良市間は簡単に行き来することができるようになりました。

生駒山地の神社については、以前に八幡市男山の石清水八幡宮や東大阪市の枚岡神社を訪れました。
今回はお寺編、大東市の野崎観音(慈眼寺)と東大阪市の六万寺(往生院)を取り上げたいと思います。いずれも生駒山地の西側のふもと、急な傾斜を少し上がったところにあるお寺です。



(1)野崎観音(慈眼寺)

まずは大東市の野崎観音です。
訪問は昨年(2020年)の12月ですので、少し前の記録になります。
最寄り駅はJR学研都市線(片町線)の野崎駅。駅から東側の商店街を抜けてしばらく歩くと、野崎観音の入口の階段に辿り着きます。


商店街には「野崎参道」の文字が書かれています。

これは商店街の出口付近の写真です。この奥の細い道を抜けるとお寺の入口です。


「野崎観音慈眼寺」の表示が見えます。



階段はかなり長いです。

登るのはそれなりに疲労しましたが、過去に訪れた琵琶湖畔の長命寺(808段の階段)に比べればまだ楽です。


山門。



こちらが本堂。

 

野崎観音は正確には慈眼寺と言い、開基は不詳ですが、お寺の解説によると古くは8世紀(奈良時代)の行基の時代にさかのぼると言われます。その後の平安時代、一条天皇の時代(1000年前後)には文献に見え、このころには存在していたようです。
江戸時代には庶民の野崎参りが盛んに行われるようになり、大阪から陸路で行くルートと寝屋川を使った水路のルートがあったようです。昭和初期のレコード普及時代には、野崎参りを歌った「野崎小唄」という歌も流行ったと言われます。
現在は曹洞宗のお寺となっています。


生駒山のふもととはいえ、小高い部分にあるので見晴らしは良いです。
丘の上から眺める大東市・東大阪市方面の様子。



後ろを向けば生駒山です。


 

12月の下旬の訪問ですが、まだ一部紅葉が残っていました。

山の斜面に沿って綺麗な赤色が見られました。


紅葉の葉っぱと池の鯉。



こちらはお染久松の碑。

お染と久松は男女のカップル、それぞれ両家の娘と奉公人で、心中事件を起こして有名になり、18世紀の人形浄瑠璃や歌舞伎の題材として取り上げられ、盛んに上演されました。劇中に野崎村が登場することから、野崎観音にも碑があるということだと思われます。


こちらはかなり古い碑。

法華経の奉納の碑のようです。
元文2年とのことですので、1737年の碑です。この時期の石碑が綺麗に残っているのはなかなか珍しいと思います。


山中に佇む観音様。



こちらは石造の九重塔。

1294年の石塔とのことで、鎌倉時代のものが残っています。こちらもかなり古いです。
大陸系渡来人である秦氏にゆかりのある供養塔であるとのこと。


恒例の忠魂碑。

戦前のものと思われますが、日中戦争やアジア太平洋戦争の戦死者も記名されています。それなりの規模のもので、お寺の忠魂碑としてはスケールは大きめかも。


忠魂碑への入口には紀元二千六百年と刻まれています。

1940年にはこの忠魂碑は存在していたと思われます。戦後に戦死者が追記されたのかも。


お寺の鬼瓦のアップ。

「慈眼寺」と書かれています。


野崎観音の敷地内には何らかのキャラクタが描かれた表示も多かったです。

やめようポイ捨て。

文楽人形(なぜか首の部分だけ)がポイ捨てを諫めます。この2人はお染&久松なのかも。


カエルの親子もゴミの持ち帰りを推奨。

子ガエルの肩の負担がかなり大きそうです 笑。


SYO坊や。

大東四条畷消防組合のゆるキャラです。
若干チャーリー・ブラウンに似ている気もします。


火の注意を呼びかけるリス。

こちらもなんとなくチップとデールを思い出します。


大東市のゆるキャラ、ダイトン。

過去に取り上げた城東区のコスモちゃん、富田林市のとっぴーに雰囲気が似ています。
同じ人のデザインなのかも。


境内にいた猫ちゃん。



こちらは近所の公園にいた猫ちゃんです。




(2)六万寺(往生院)

続いては六万寺です。
最寄り駅は近鉄奈良線の瓢箪山駅となりますが、駅からはやや遠く、南東に向かって2km~2.5kmほど歩く必要があります。google mapの案内では2kmくらいですが、かなりややこしい道を示されますので、道に迷うこと間違いなし 笑。少し遠回りですが、駅から南の大きな通りを歩いて、途中で東に折れるルートがお勧めです。
訪問は今年の5月のゴールデンウィークです。天気が良くて清々しい日でした。


瓢箪山駅を降りて南に歩きます。
ヒョウタンがデザインされたネオンのある商店街を抜け、南へ。



東に向かってそれなりに急な坂道が見えてきます。

生駒山地の高低差を踏みしめながら歩きます。


坂を上りきるとお寺への階段が。

一瞬身構えましたが、この階段は短かったです。


まず見えてくるのが、楠木正行(くすのきまさつら)の本陣跡の碑。

楠木正行は有名な楠木正成の長男です。正行は南北朝の戦いに参戦し戦果をあげましたが、四条畷の戦いで北朝の高師直の軍に敗れ、戦死しました。
大阪府はかつての南北朝時代の戦乱の地で、あちこちに戦いの碑が残されていますが、ほとんどが明治後期から昭和初期に建てられたものです。当時の忠臣愛国の歴史観と地域史としての南朝愛が、碑の建設に人々を向かわせたのだと思います。
そんな中、この碑は比較的新しそうな雰囲気でした。(年代をチェックするのを忘れた 笑。)


ということで、六万寺の山門。

さらに高い場所にあります。


入口。

お墓参り意外の参拝の場合はお寺の方に声をかける必要があります。
声をかけると快くお参りを承諾してもらえました。


本堂。

六万寺正式には往生院といい、浄土宗系のお寺です。
創建は745年の聖武天皇の時代、行基による開基とされます。またしても登場する行基。聖徳太子、行基、空海、菅原道真の4名はとくに伝説が多く、畿内の様々な場所で謂れを確認することができます。
南北朝時代には1348年の四条畷の戦いで楠木正行が往生院に陣を構え、その結果兵火に遭いました。その後1654年の江戸時代初期に復興し、現在に至ります。


こちらは中に鐘のあるお堂。

入って鐘を突くことができます。ときどきゴーンと敷地内に音が響き渡ります。


敷地内にあった歌碑。



並ぶ仏さま。

様々な如来や菩薩が並んでいます。生まれた年(干支)に関わりのある仏様を拝むという、よくあるタイプの仏様群です。(ちなみに自分は勢至菩薩です。)


生駒の山に沿ってお墓が並んでいます。



奥の院も上の方に。



上の方(奥の院近辺)からみたお墓とお寺の様子。



東大阪市~大阪市の市街地の様子。

かなり見晴らしがよいです。景色では野崎観音より六万寺の方が良いかもしれません。
遠くにはあべのハルカスが見えます。


コロナの時代、敷地内の石像も皆マスクを付けていました。

二宮金次郎もマスクを装着する時代。



ペンギン、タヌキ、カッパ、お魚、カエル…。みんなマスクを付けています。




マスクが大きすぎて顔面全体が隠れている人たちも。

とくにカメさんにとってこのマスクは大きすぎますね 笑。


こちらは六万寺からかなり西側に行った交差点にあった碑。

往生院への道が記されています。自分は帰りに撮影しました。
親鸞聖人自作の観音像もあったとのこと。これは見逃しました。


その北にあった、恒例の忠魂碑。

柵でおおわれており、前からは撮影できませんでした。これはやや横側から撮影。木々でやや見えにくい位置にあります。
忠魂碑はその碑の性格上、なかなか撤去が難しいのかもしれません。撤去できずしかも見えにくい位置に押し込められている碑も多いことと思われます。
個人的には、適切な歴史的解説(変な愛国的解説ではなく)とともに、日本近代の歴史的遺産としてしっかりと見える場所で管理していくのが良いのではと思います。


さて、六万寺の最寄り駅の瓢箪山駅近辺には、その名の通りヒョウタンをあしらったものがたくさんありました。上の商店街以外にも様々なヒョウタンがありました。

交番の上にもヒョウタンが。

入口の扉にもヒョウタンがデザインされています。
その周りをさらにぐるりとヒョウタンが取り囲んでいます。


車進入禁止のヒョウタンのアップ。

富山県では魚、広島県ではタケノコの進入禁止を見たことがありますが、こちらはまさかのヒョウタン。


「消費税完納」の表示の上のヒョウタン。

足が生えているように見えます 笑。
「消費税完納よろしく」とおじぎしているようにも見えますね 笑。



ということで、生駒山地のふもとにある2つのお寺でした。
生駒山のお寺と言えば、生駒山上にある宝山寺です。これもいずれ訪れたいなと思っています。