タイトルに数字のある映画いろいろ | れぽれろのブログ

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少し前に大阪近辺の数字のある地名を巡る記事を書きました。
今回は映画編です。
自分が過去に見た映画の中で、タイトルに数字の入っている映画を並べてみます。と言っても、数字1ケタの映画はたくさんありますので、今回は2ケタの数字が含まれる映画を、10代、20代、30代、…と順に並べてみたいと思います。(2ケタの数字の映画ってあったかな?と思いつつタイトルを思い出してみたら、意外とたくさん思い付いたので、それを並べてみよう、という思いつき企画です 笑。)


以下、10代から順に並べます。


・十二人の怒れる男 (1957年、アメリカ、監督:シドニー・ルメット)

言わずと知れた超有名映画、古典的名作です。
自分は大学生のときに深夜にテレビでやっていたこの映画を見て、非常に面白いなと思いました。(今はよく知りませんが、20年くらい前は深夜によく古い映画が放送されていました。)
12人の陪審員が延々と議論するだけのお話ですが、議論により各人の意見が少しずつ変わっていく展開が非常に面白く、多くの方にお勧めできる映画です。
分厚い中間層が存在し、司法に熟議が期待できた50年代アメリカならではの映画だと思います。(このような熟議は現代、とくに日本では望むことはなかなか難しく、裁判員制度にみられるように、時間短縮のために空気支配により有無を言わせず決断を求められるのが、現実の司法の在り様です。)



・21グラム (2003年、アメリカ、監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)

続いては20代。
「21グラム」はメキシコ人監督によるアメリカ映画で、個人的に非常に好きな映画、今回登場する映画の中では一番お気に入り度が高い映画です。
1件の交通事故を巡って、3組の家族の変化が描かれる物語。
この映画の面白い点は何といっても時系列の操作にあります。時系列が前後する映画はとくに90年代以降たくさん見られますが、その中でも(少なくとも自分が見た映画の中では)最も時間の入り乱れ具合が激しいのがこの映画。
下手をすると混乱しそうな手法で編集されていますが、分かりにくいということはなく、むしろ幸福な描写の後に不幸な描写を、不幸な描写の後に幸福な描写を挟むことにより、禍福は糾える縄の如し、不幸と幸福は巡り巡るものだというこの世界の在り様がよく伝わってくる映画だと思います。
タイトルは人間の魂の重量を表しているらしいです。



・39-刑法第三十九条 (1999年、日本、監督:森田芳光)

続いては日本映画。
日本の刑法39条「心神喪失者の行為は罰しない」という規定を巡って描かれる司法ドラマで、精神鑑定の結果所見ありと診断された殺人犯の男性と、それに疑いをもち彼の過去に迫ろうとする女性精神科医の物語。
自分は細部はかなり忘れてしまっていますが、司法の問題に光を当てる面白い映画だったように記憶しています。
(なお、現実の司法では(とくに重大事件では)この刑法の条文はあまり考慮されることはなく、80年代の連続幼女誘拐殺人事件であれ、90年代のオウム真理教事件であれ、最近の相模原障害者施設殺傷事件であれ、いずれも精神鑑定は犯人の正常性を担保する方向に機能しています。)



・CODE46 (2004年、イギリス、監督:マイケル・ウインターボトム)

続いてはSF映画です。
マイケル・ウインターボトム監督の映画は自分は割と見ていますが、初見の際になぜこの監督がSF映画を?と思った記憶があります。
遺伝子技術や記憶操作技術が発達した未来、1組の男女がCODE46という法に抵触することが分かり、当局により記憶を操作される、果たして2人は、というSF物語。
古典ギリシャ悲劇にも遡る男女間の文学的テーマを未来世界で描いたお話ですが、その上に記憶を巡る幸・不幸がテーマ化されているのが本作の面白いところです。(「記憶を失くして幸福になることは不幸である」というのが自分の所感。)



・パッセンジャー57 (1992年、アメリカ、監督:ケヴィン・フックス)

90年代のハリウッド映画。
飛行機のハイジャックを巡ってのアクション映画だったと思いますが、ほとんど覚えていません 笑。タイトルだけ覚えていたような映画です。それなりに楽しい映画だったように思います。
タイトルは確か飛行機の座席番号を意味していたはず(ですが、ちょっと記憶に自信がありません 笑)。



・バッファロー'66 (1998年、アメリカ、監督:ヴィンセント・ギャロ)

刑務所から出所した男性が家族を喜ばせるため、見知らぬ女性を半ば拉致して実家に帰ろうとする、果たして2人は、というお話。
この映画は公開当時から結構一部で人気のあった映画です。自分も楽しく鑑賞しましたが、男性にとっての女性がややご都合的に描かれすぎ(こんな女の子ほんまにおるんか?)という感じが強かったように記憶しています。
絵作りが結構面白かった記憶があります。
タイトルの数字の意味は覚えていないので、改めて調べたところ、作中のアメフトチームが優勝した記念の年ということのようです。



・71フラグメンツ (1994年、オーストリア、監督:ミヒャエル・ハネケ)

カンヌ映画祭常連のミヒャエル・ハネケ監督の初期作品。
自分はかなり好きな作品です。
1件の銃の乱射事件を背景に、事件に関わる複数の人間のエピソードの断片を、短い映像の集まりとしてまとめたような映画。タイトルはおそらくこの映画のエピソードの断片の数だと思われますが、実際に数えたわけではないので詳細は分かりません。
BGMはなく、説明は最小限で、淡々としたリアリズム的な映像が続き、救いがない暗さを持つのがハネケ映画の特徴ですが、この初期作品から既にこの傾向を感じることとができます。
ここから社会問題を考える契機につなげていくというのがハネケ映画ですが、この初期作品「71フラグメンツ」はそれよりもこの世界の偶然性・未規定性を強く印象付ける作品であると同時に、実験映像としての面白さも持った作品です。(とくに卓球のシーンの「なじゃこりゃ」感、不安感はかなりのもの。)
(ハネケ映画についてはこちらでやや詳しく書いています。 → [愛、アムール]



・ユナイテッド93 (2006年、アメリカ、監督:ポール・グリーングラス)

80代の映画が思いつきませんでしたので、飛ばして90代に移ります。
本作はイギリス人のポール・グリーングラス監督がアメリカの911テロを描いた作品。
911テロでは4機の航空機がハイジャックされ、3機はテロとしての目的を達しましたが、1機はテロとして不発に終わったという事実があります。この事実を元に、この4機目の飛行機であるユナイテッド航空第93便の内側を想像して描いたのが本作です。
内容はややアメリカの美化が強い印象が無きにしも非ずですが、本作の映像は非常に面白く、ほとんど無名の役者や現職の航空機関係者でキャスティングされており、リアリティーある表現を楽しむことができます。
アイルランド問題を扱ったグリーングラス監督の過去作品「ブラディ・サンデー」のデモ弾圧シーンなどで培われた群像表現の手法が、本作でも有効に機能しているように思います。



ということで、過去自分が見た映画の中なから、2ケタの数字がタイトルに含まれる映画を8作品並べてみました。(80代だけはどうしても思いつきませんでした。)
タイトルの数字の意味は、陪審員の人数、魂の重量、現代日本と架空未来の法律番号、座席番号、記念の年、作品の断片の数、飛行機の機体番号と様々。
この中で多くの人にお勧めできるのは、やはり超有名作品である「十二人の怒れる男」、あと2作品お勧めをあげるなら、「CODE46」と「ユナイテッド93」あたりでしょうか。
個人的に好きなのは「21グラム」と「71フラグメンツ」ですが、テーマが重くクセが強い作品ですので、必ずしもお勧めはできません 笑。

どの映画も10年~25年近く前に見た映画ばかりですが、いくつかの映画は書いているうちにあれこれ思い出してきて、久しぶりに見返したくなりました。
2ケタの数字以外だと、キューブリック監督の超有名作品「2001年宇宙の旅」や、複数の数字が並ぶ「2人の5つの分かれ道」(フランス映画)や「4ヶ月、3週と2日」(ルーマニア映画)など、いくつかのかなり面白い映画が思い浮かびます。
今回以外の数字タイルの映画なども、機会があればどこかで何かを書くかもしれません。