大阪市 桜のある風景 | れぽれろのブログ

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桜の季節になると、お花見のために遠出をする人も多いと思います。
自分も過去に桜の季節の京都を訪れた記事を書いたこともあります。
しかし、何も遠くに出かけなくとも、近場にも桜はたくさんあるものです。
桜で有名な公園などに行かなくとも、意外と街中や小さな公園にも、雰囲気の良い桜の風景は見つかるもの。
ということで、4週間に渡って近所の大阪市内を歩き、桜のある風景を訪ねてきましたので、記事化しておきたいと思います。
以下、桜の風景と合わせて、周辺の街の様子も合わせてコメントしてみます。


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(1)玉造-上本町界隈 (天王寺区)

まずは第1週。
上町台地を上がったところ、天王寺区の玉造から上本町界隈の風景です。
訪問日は3月30日の土曜日です。
この日はまだ桜は咲きかけ、6分咲きくらいでしょうか?
見ごろという時期には少し早いですが、咲きかけたころの桜も良いものです。


玉造の駅近くにあるのが、3週前の記事でも取り上げた三光神社です。

三光神社の敷地内にも桜あり。以前の記事では取り上げなかった写真。
アマテラス・ツクヨミ・スサノオの3神(=三光)を差し置いて、ひときわ真田幸村が目立つ神社、この桜のそばにも真田丸の旗が立っています。


三光神社のすぐ南には、宰相山公園があります。

こちらにも桜あり。
お昼の時刻でしたので、お弁当を食べている人たちも。


宰相山公園を越えると、これまた3週前の記事でご紹介した真田山陸軍墓地があります。

規則正しく並んだお墓と、桜の組み合わせ。
いい雰囲気です。


天王寺区の道案内役として、ゆるキャラの「ももてんちゃん」が登場。

天王寺区は桜よりも桃が似合うのかもしれません。
天王寺区の東の端を越え、生野区との境目あたりには桃谷という地名もあります。


天王寺区にはお寺がたくさんあります。

こちらは高津山観音寺のビル。
すぐ隣には、出雲大社高津分祠の鳥居と建物が。

近代的なビルになっても、お寺と神社がセットで違和感なく並んでいるのは、近世以前の神仏習合の名残なのかな、などと一瞬考えてしまいます。


上町筋を越えた西側にある、東平北公園の桜。

厳密にはここはもう中央区。


巨大なフェニックスの木

桜よりもこの木の方が目立ちます。
この公園内には戦災からの復興の記念碑もありました。
フェニックスは戦後復興の象徴なのかな?



(2)帝塚山-北畠界隈 (住吉区~阿倍野区)

2週目はぐっと南側へ。
南海線に乗り、住吉区の帝塚山、阿倍野区の北畠界隈を歩いてきました。
訪問日は4月6日の土曜日、先週よりも気温はぐっと暖かくなり、春物のコートでも、歩いていると汗ばむ気温でした。
桜もちょうど見どころの日。

帝塚山・北畠は上町台地を上がってすぐのところにある住宅地。
この近辺はかつての高級住宅街(今もでしょうか?)で、大正~昭和初期に、船場などの大阪の中心部のお金持ちたちが、私鉄沿線の拡張と共に移り住んだ土地です。

まずは万代池の様子から。

池の周囲の桜が綺麗です。

万代池は南海高野線帝塚山駅を降りてすぐ東側、帝塚山学院のすぐ近くにある池で、池の周囲は公園になっています。


お花見に来ている人もたくさんいました。

自分の写真では人が少なく見えますが、実際はこれよりもっと人は多かったです。
お昼時に訪れましたので、お弁当を賞味中の人たちもたくさん。

 


桜は8分咲き~満開くらいでしょうか?




お花のアップ。


 

桜以外のお花も綺麗に満開。



亀の群れ。池の淵に沿って並んでいます。



サギが飛び立つ瞬間。



池の龍王をお祀りする碑。

法華経が刻まれています。
日蓮宗の独特の字体のデザインはいいですね。


なお、この万代池のすぐ北側には、1979年に起きた三菱銀行人質事件の現場として有名な、旧三菱銀行(現三菱UFJ銀行)の北畠支店があります。


以下、帝塚山・北畠界隈の坂の様子などを少し。

帝塚山・北畠は上町台地の西の端にある街なので、天王寺七坂付近と同じく坂道が多く、名前のついている坂もたくさんあります。
さらに、この界隈はやたらと道がうねうねしており、ぼんやりと歩いているとあっという間に道に迷います。
坂が少なく、区画が方形になりがちな大阪市内ですが、中心から離れると昔ながらのくねくねした道も現れる、坂とカーブが特徴的なのが帝塚山・北畠界隈です。


帝塚山地区の下側にある表示。

こういう古い表示があちこちにみられるのも、帝塚山・北畠界隈の特徴だと思います。


北畠地区にある坂の表示。こちらはみや坂。


 

相生阪。

このように急カーブの道路がたくさんあります。


石がコンクリートにめり込んでしまい、名前がよく分からない坂も。



いろんな坂道の様子や、特徴的な住宅などもあり、とにかく歩いていると楽しい町で、パチパチ写真を撮りたくなりますが、基本は観光地や商業地ではなく住宅地ですので、撮影に対しては配慮が必要です。


こちらは阿倍野神社。

この神社も坂の上にあります。

写真左手に少し桜が見えます。
阿倍野神社は1882年の創建ですので、明治時代の神社。
「神皇正統記」で有名な南北朝時代の著名人北畠親房と、その息子北畠顕家がお祀りされている神社です。(近辺の地名「北畠」も彼らの名前が由来です。)
人間がいとも簡単に神様になるのも、明治以降の国家神道の特徴の一つ。


帝塚山にある学校の桜と南国風の樹木。




帝塚山古墳。

帝塚山の高台には、古代の古墳も見られます。
この帝塚山古墳は4~5世紀の古墳で、古代の豪族である大伴氏のお墓とも言われますが、詳細は不明のようです。
古墳の上に立っている碑は、明治天皇がお参りされた記念の碑なのだとか。


帝塚山から坂を下ると、現れるのは玉出商店街。

帝塚山・北畠から西に向かって坂を下ると、そこは下町西成区。
玉出は激安スーパーで有名な「スーパー玉出」の本店がある地区でもあります。


天王寺区の場合、上町台地の坂の上と下でもそんなに大きく風景は変わりませんが、阿倍野区・住吉区の場合は、坂の上下でガラッと風景が変わるのが面白いです。西成区の玉出-天下茶屋地区も歩いていると面白い町ですが、これはまた別の機会に。



(3)南港ポートタウン-コスモスクエア界隈 (住之江区)

3週目は大阪市の西の果て、大阪湾を埋め立てた人工島の咲州(さきしま)に行ってきました。咲州は仕事でインテックス大阪を訪れる以外には、自分にとってはほぼ縁のない場所です。
訪問日は4月13日の土曜日、日中は暖かい日でしたが、15時ごろから少し肌寒くなった1日でした。
桜は満開から少し見ごろを過ぎたくらいの感じで、所々葉桜も目立ちました。

まずは南港ポートタウンの様子から。
南港ポートタウンは70年代後半から80年代前半にかけて人工的に作られたニュータウンで、高層住宅、学校、いくつかの商店、及び公園から成る街です。
団塊世代及びその少し下くらいの世代がやってきた街、ここで生まれた子供たちは、学校もお店も公園も、すべて同じ島の中にある環境の中で育ったことだと思います。
自分は1978年生まれで、南河内の郊外の住宅地で育ちましたが、自分の育った場所も山あいに面した街の中に生活のすべてが存在する環境でしたので、海の上と山の端という違いはありますが、このような街は非常に親近感があります。
自分は南港ポートタウンは今回初めて訪れましたが、なぜか懐かしい雰囲気が感じられました。
お金持ちの帝塚山・北畠ではなく、下町の玉出・天下茶屋でもない、高度資本主義社会における労働力の再生産のためだけに生まれた街、個人的にはこういう雰囲気も郷愁の対象になります。


ニュートラム中ふ頭駅を降りると、桜並木がお出迎え。



集合住宅の間にたくさんの桜がありました。

いい雰囲気ですね。


ポートタウンの案内は、ゆるキャラ「さざぴー」の出番です。

咲州は地下鉄中央線経由で訪れますので、なんとなく港区のイメージがありますが、さざぴーを見かけると、ここは住之江区やったんやと、区割りを思い出すことになります。


こちらは南港公園の桜。


 

赤いのは別のお花です。これは何のお花なのかな。



咲州~住之江区西部にかけて、走る電車がニュートラムです。
ニュートラムは運転手はなく、自動運転で運行している都市型の交通機関です。
運行本数は多く、咲州の街中を歩いていると、ときどきこのニュートラムが目の前を通過します。

こちらは黄色のニュートラム。

ニュートラムは現在様々なカラーリングの列車が動いています。
赤、青、黄、緑、紫、オレンジ、ピンク、・・・いったい何色あるんだろうと思うくらい、カラーリングのバリエーションが多いです。
数年前のモデルチェンジ以降、カラーバリエーションがかなり増えたようです。
個人的な感覚では、ニュートラムは現在の大阪近辺で、一番かわいい列車だと思います。


この日、南港公園のすぐ横のデイリーカナートでは、相愛大学の学生によるクラリネットの演奏会が催されていました。
クラリネットがやけにうまいなと思いつつ聴いていましたが、あとで調べると相愛大学は音楽学科がある大学なのですね。
前々回に取り上げた大正時代の「大阪市パノラマ地図」では、相愛大学(旧相愛女学校)は本町界隈、西本願寺北御堂のすぐそばにありましたが、現在は南港ポートタウン内に大学があるようです。


コスモスクエア方面へ向かいます。
コスモスクエアは咲州の北部の地名で、住宅地である南港ポートタウンに対し、コスモスクエア方面は企業と商業施設などが存在している場所です。

インテックス大阪があるのもこの近辺です。


こちらは悪名高きWTCコスモタワー。

80年代大阪の公共政策の失敗例として有名になってしまった建物です。(タワーの完成は90年代。)

こんなところにこんな高いビルを建てても誰も来んやろ、という予想通り本当に誰も来ない建物になってしまい、大阪府が失敗を補填する形で、現在ビルの一部が大阪府の咲洲庁舎となっています。
中に入ってみましたが、やはり閑散としており、お店にもほとんどお客がいない感じでした。


すぐ横にあるのがATC(アジア太平洋トレードセンター)です。

こちらはさほど閑散とはしておらず、思っていたよりも店舗にはお客さんが入ってました。程よく人がいる感じ、この空き具合は自分の好みに合います。


ATCから臨む大阪湾。

右にはフェリー、さんふらわあ号が見えます。


港のそばのフロアに描かれる怪しげな絵。

左上に黒い鞄があります。この絵のスケールの大きさがお分かりかと思います。


泳ぎ回るカラフルなイルカの群れ。どことなく寂しげなイルカたち。


 

南国風の木と貿易センターの組み合わせはいい雰囲気ですね。


この日、海の近くでは、ビートルズのカバーユニットのライブイベントが行われていました。
GRACEという名前の、キーボードアレンジのビートルズを演奏するユニットが印象的、キーボード1本というとテクノ風のアレンジになりがちですが、さにあらず、意外とアコースティックなアレンジが良かったです。
衣装もまた可愛らしかったです。(写真を撮ればよかった。)


ATC&WTC。


ATCの雰囲気は個人的にはお気に入りです。
とにかく程よく空いていると、その場所は気に入ってしまうのが自分の特徴です(笑)。



(4)桜之宮公園とその周辺 (都島区)

第4週目は再び大阪の中心付近に戻ります。
大阪城の北側、都島区の西を流れる大川の川沿いにある桜之宮公園に行ってきました。
先週の肌寒さはどこへやら、非常に暖かい1日で、ソメイヨシノはもうほとんど散ってしまっていましたが、この付近は別種の桜(八重桜でよいのかな?)が咲いており、大きめのお花を楽しく鑑賞することができました。


すぐに散ることなく長く残る桜。

「春が来るとこの川辺は桜がめいっぱい咲き乱れるんだ♪」
川のほとりですので、aikoのこの歌詞を思い出します。


大川の様子。

ボートが川をゆく。
対岸の桜はほとんど見られなくなっているようです。

この写真の左手(南側)の方に川を下ると造幣局があり、有名な桜の通り抜けが開催されています。(混んでそうなので自分は行きませんでしたが。)


桜と和服の組み合わせ。


 

この日の桜之宮公園では、民謡大会が開催されていました。

民謡に合わせて踊る人の群れ。


こちらは旧藤田邸の入口。

明治後期の財界人、藤田伝三郎の邸宅の跡地で、現在は雰囲気の良い庭園として公開されています。


中に入ると、かつて建物があったと思しき場所に門のみが残されています。


 

庭園の雰囲気。







絵になります。いい雰囲気ですね。

藤田伝三郎は美術のコレクターとしても有名。
現在奈良国立博物館では、藤田コレクションの特集展示が開催されています。


こちらは桜宮神社。

鳥居をくぐると、向こうは桜並木。


拝殿と桜の組み合わせ。

桜宮は例によって創建は不明。かなり古くからある神社のようですが、現在の位置に移設されたのは近世江戸時代のころとのことです。


ラブホテルと桜の組み合わせ。

桜ノ宮はラブホテル街としても有名な場所です。


さて、桜之宮公園から、大川にかかる源八橋を渡り西に向かうと北区に入ります。

この源八橋の西側に面白い建物がありました。

左右対称に同じ形の古い建物があります。左手はおうどん屋さん、右手はタバコ屋さんです。


右側のタバコ屋さん。

古い建物、昔風の窓の装飾が目につきます。

源八橋に向かう建物として、シンメトリーに作られた建物なのだと思います。
放っておくと無秩序に建物が増殖していくのが一般的な街の在り様ですが、このように景観を統一する都市設計も、今でももっとあってもいいような気がします。


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ということで、4週に渡り桜を訪ねてあちこち歩いてみました。
古い土地から新しい土地まで、場所の雰囲気は様々。
今回はとくに「ここの桜を見に行こう」などという目的があったわけではなく、本当に行き当たりばったりに思いつくままに出かけたのですが、どの街にも探せば桜が見つかるというのが面白いです。
ソメイヨシノは明治以降、日本各地で急増殖した品種です。
古い土地にも新しい土地にも分け隔てなく増殖し、年に一度花を咲かせる桜。
日本の都市の風景は様々、しかし、印象がバラバラな都市風景であっても、桜が咲いているが故になんとなくどこも日本っぽくみえる・・・というようなこともあるのかもしれませんね。