妙技爛漫 ~バーゼルの喜び!~ (いずみシンフォニエッタ大阪) | れぽれろのブログ

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3月1日の金曜日、いずみシンフォニエッタ大阪の第41回定期演奏会を鑑賞しに、大阪城公園そばのいずみホールに行ってきました。
いずみシンフォニエッタ大阪は主に現代音楽を演奏する楽団で、自分は定期的に演奏会を鑑賞しています。
半年に1度のペースで定期演奏会が開催されますが、昨年はいずみホールの改装があったため、夏の定期演奏会はなし、このため1年ぶりの鑑賞となります。
例年おおむね土曜日の開催ですが、今回は金曜日の夜の開催。
自分は数年前までは職場が会場から遠かったため、金曜日の鑑賞は不可能でしたが、現在はなんとか仕事を早めに切り上げれば鑑賞は不可能ではない距離に職場があります。
しかし例によって仕事の都合はなかなかつかず、当日もギリギリで逃げるように職場を後にし、1曲目の鑑賞は無理かなと思いつつ、滑り込みで何とか1曲目に間に合いました。
なので、今回は恒例のロビーコンサートは鑑賞できず、演奏前のプレトークも聞くことができませんでした。


今回のプログラムは以下の通り。

・Eclipse/ゴーサン(1979) ※日本初演
・ヴァイオリン協奏曲/リゲティ(1990/92)
・交響曲4番「バーゼルの喜び」/オネゲル(1946)

前半がゴーサンの日本初演の曲と、リゲティの協奏曲。
後半がオネゲルの交響曲となっています。
演奏会のサブタイトルは「妙技爛漫 ~バーゼルの喜び!~」となっていますが、鑑賞した印象では今回のメインはオネゲルではなく、前半の2曲です。
ゴーサンの曲はいきなりクライマックスとでも言うような、眩いような大音響が鑑賞できる心地よい曲。
リゲティの協奏曲はとんでもない難曲であることが素人ながらも分かる曲で、独奏ヴァイオリンの神尾真由子さんが素晴らしい演奏を披露されていました。

今回自分は2回席、舞台袖の向かって左側のあたりで鑑賞しました。
座席から舞台上を広く見渡すことができ、舞台上に大量のパーカッションが所狭しと並んでいるのが確認できます。
1曲目で使用する楽器と2曲目で使用する楽器がそろって舞台上に。
前半だけでこれ全部鳴らすんやぞ、覚悟せえよ、という雰囲気が舞台上から伝わってきます。


1曲目。
ゴーサンの曲、「Eclipse」は日本語で日蝕の意味。
楽曲は静かに始まり、各楽器のロングトーンが静かに続きます。
日蝕の動きに合わせ、日が欠けるにつれて徐々にクレッシェンド、各楽器のロングトーンの音色が徐々に大音響になり、パーカッションのリズムがそこに加わる。
そして完全に日が消えて、世界が真っ暗になった状態になったと思われるタイミングで、2枚のドラが大音響で鳴り響きます。
すごい音圧、うねるような音の波、とんでもない強奏ですが、不思議とうるさい感じはせず、むしろ全楽器とパーカッションの音のうねりと響きが身体に押し寄せ、不思議な心地よさが体を覆います。
やがて音響は小さくなり、パーカッションのリズムも消えて、太陽の光が世界を覆うにつれてどんどん音が小さくなり、世界に平穏が齎されたといった感じの柔らかい弱音となり、おしまい。
メロディやハーモニーではなく、鳴り響く音そのものを身体で聴く、音楽監督の西村朗さんは、聞くと体調がよくなる気がする旨のことを言われていましたが、まさにそんな感じの体に良い音楽。
会場には作曲者ご本人が来ておられ、拍手を受けておられました。
1曲目からとんでもない曲です。急いで来て良かった感が漂います。


2曲目はリゲティのヴァイオリン協奏曲。
これまたとんでもない曲で、異常に難しい曲らしく、指揮の飯森範親さんはこの曲の譜読みを始めてから血圧が180を超えるようになったのだとか。
音程をずらして演奏する部分が多く、ピアノで音を取ることもできず、練習していると気が狂いそうになる(笑)曲なのだそうです。
演奏者にとっては何とも体に悪い曲ですが、聴いている方は気楽で楽しいもの。
独奏ヴァイオリンの神尾真由子さんが非常に素晴らしく、難曲を難なく弾きこなしておられました。

1楽章は独奏ヴァイオリンの微音アルペジオからスタートし、それが他の楽器に移り、細かい音の振動があちこちで聴こえるような音色が楽しい。
徐々に音がアップし、難しげな曲に。
2楽章でようやくメロディらしきものが現れ、このメロディがなかなか素敵で、やはり独奏ヴァイオリンから他の楽器に伝播していきます。
独奏ヴァイオリンのうねるような強烈なビブラートは楽譜の指示でしょうか。
途中、木管楽器奏者が持ち替えで、オカリナを立って吹く部分があり、オカリナによるコラールはクラシック音楽の演奏会っぽくないような不思議な音がします。
3楽章はこれまた不思議な音色の下降音型が続く楽章、小さな隕石が連続して降ってくるとでも言うような下降音が続き、パシッと終わる終止がかっこいい。
最後の5楽章は、それまでの楽章の音型があれこれと入り込み、いろんな要素が入ってあちこちで独奏的な音がします。
5楽章には独奏ヴァイオリンによる化け物みたいなカデンツァがあり、このカデンツァがめちゃくちゃかっこよく、神尾さんのテクニックを楽しく堪能。
独奏ヴァイオリンの様々な音色とテクニック、その他の楽器のそれぞれの動きも楽しい、相当面白い曲で、生演奏の醍醐味を存分に味わうことができました。


休憩を挟んで後半、オネゲルの交響曲4番「バーゼルの喜び」を鑑賞。
これが一応メインの曲、のはずですが、前半がとんでもない2曲でしたので、現代音楽には聴こえないような感じ、オネゲルがめちゃくちゃ普通の曲に聴こえます。
この曲は1946年、第二次大戦後すぐの曲で、戦後の明朗さが特徴である曲とのことですが、今回のプログラムの流れで鑑賞すると、ゴーサンとリゲティが戦時下の大混乱で、オネゲルが戦後の安らぎのように聴こえてきます(笑)。

1楽章のメロディがやたらと綺麗で、とくに弦楽器の美しさを堪能。
2楽章はやや陰りが現れるような変奏曲ですが、部分部分は綺麗な響きを聴くことができます。
3楽章はやや諧謔的でリズミカルな感じが印象的、トランペットとファゴットの独奏が○。とくにファゴットはこのような諧謔的なメロディは非常によく似合う。
ファゴット独奏に続くクラリネットもいい雰囲気。
楽曲の最後、80年代のテクノユニット:ゲルニカの「夢の山嶽地帯」のようなメロディが登場、これはバーゼルのお祭りの曲らしく、このメロディが通り過ぎた後はは途端に穏やかな美しさ、救われたような気分とともに、おしまい。
各楽器がそれぞれ独奏楽器のように奏でられる、美しさと楽しさが同居する曲でした。



ということで、今回も楽しく鑑賞しました。
1年ぶりの鑑賞でしたので、感激もひとしお。
半年に1度くらいのペースで生現代音楽を聴くのは、何だか耳にも良い気がします。とくにゴーサンの曲は身体にもすっきり。
次回の定期演奏会は7月、ストラヴィンスキーとラヴェルの編曲ものがメインのようで、これまた楽しみに待ちたいと思います。