メータ&バイエルン放送交響楽団 | れぽれろのブログ

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11月23日の祝日の日、兵庫県立芸術文化センターに行ってきました。
目的はバイエルン放送交響楽団の演奏会。
この日は当初はマリス・ヤンソンスが指揮する予定でしたが、ヤンソンスの体調不良により、急遽指揮者はズービン・メータに変更となりました。

自分はバイエルン放送交響楽団の演奏を鑑賞するのは、2014年の秋、2016年の秋に続き、3度目。
過去はいずれもヤンソンスの指揮で、2014年はシュトラウスの組曲「ばらの騎士」、2016年はマーラーの9番でした。
今回はマーラーの7番が演奏される予定でしたが、ヤンソンスからメータに変更になったことにより、曲目はモーツァルトの41番とマーラーの1番に変更。
実はメータは今年の6月にイスラエルフィルと共に来日し、マーラーの5番を演奏する予定でしたが、体調不良により急遽演奏会が中止になったという経緯があります。(自分もこのチケットは取っていました。)
ヤンソンスもメータも体調不良、メータが回復したので、かわりばんこのように(?)今回はメータの登場となります。
有名指揮者は高齢の方が多いので、健康上どうしてもこういうことは起こり得ます。


メータは杖をつきながらゆっくりと登場、舞台袖から指揮台まで30秒くらいかかっています。
体調はまだ思わしくないのかなとも思いましたが、演奏の方はオケをしっかりコントロールし、素晴らしいものでした。

前半はモーツァルトの交響曲41番「ジュピター」。
どちらかというと、流麗なモーツァルトというよりはガチっとした演奏で、各声部を丁寧に響かせている印象がありました。
アップテンポで流れるように演奏されるモーツァルトも良いですが、ジュピターについてはがっちりと丁寧に演奏するのも良い感じ。
モーツァルトを丁寧に演奏するというのは実は難しいことだと思いますが(ベートーヴェン以降の交響曲はなんとかなりますが、モーツァルトはごまかしがきかない)、バイエルンはきっちりと演奏されています。
上手いオケで聴くモーツァルトは良いですね。


後半はメインのマーラーの交響曲1番「巨人」。
自分は実はメータの演奏は過去1度鑑賞しており、2010年のイスラエルフィルとの来日で、同じくマーラーの1番を聴いています。今回は2度目の鑑賞となります。

今回のメータの演奏は2010年と同じく「花の章」付きでした。
マーラーの交響曲1番は現在4楽章制の交響曲として聴かれていますが、元々2楽章に「花の章」と呼ばれる緩徐楽章が置かれており、全5楽章制の作品でした。
後にマーラー自身によりこの楽章は削除され、現在の4楽章制の交響曲になったという経緯があるようです。
自分はマーラーの交響曲1番を過去7回鑑賞しており、今回が8回目の鑑賞となります。
メータはこの削除された「花の章」にこだわりがあるらしく、自分が鑑賞した全8回のうち「花の章」付きで演奏されたのは、メータが指揮した2回のみ。
(その他、大植英次&大阪フィルハーモニーで「花の章」を聴いたことがありますが、このときはアンコールでの演奏でした。)

「花の章」は綺麗な緩徐楽章で、今回改めて聴いて素敵な楽章だなと感じました。
マーラーがなぜこの楽章を削除したのかは分かりませんが、自分は「花の章」付きの演奏はありだと思います。
この楽章があると楽曲全体のバランスが取れます。
マーラーは楽曲のバランスやシンメトリックな構造にこだわる作曲家、なので、交響曲1番の場合「花の章」があった方が、全5楽章が「急-緩-スケルツォ-緩-急」というバランスの良い構造になり、全体としてのまとまりが良いように感じます。
自分は必ずしも作曲者の意図通り演奏する必要はないといいう考え方(作者が自作について最も詳しくすべてを理解しているというのは誤り、作者はしばしば自作の重要ポイントの把握を間違えます。)ですので、マーラーの指示や、国際マーラー協会の指針に必ずしも従う必要はないと考えます。
このことは交響曲6番の中間楽章の順序でも同じ、スケルツォ-アンダンテの順の方が作品全体のバランス・まとまりは良いというのと、似た構造があります。
現在「花の章」付きの録音は少ないと思われますが(少なくとも我が家にはない)、もっと増えても良いように思います。

演奏の方はやはりがっちりとした解釈で、テンポは速くならずに抑え気味。
緩徐部はたっぷりと美しく歌い、盛り上がりの部分も走りがちなところを抑え、メータはしっかりコントロールしているように思いました。
4楽章のコーダも抑えめのテンポで少しずつ盛り上がり、最後に大音響で爆発する音楽。
ゆっくりだとオケはしんどいと思いますが、バイエルンはしっかりとメータのコントロールについてきています。これはすごい。
全体的にかなりカタルシスのある演奏になっていました。
非常に感動的なマーラー1番だったように思います。

杖をつきながらの移動がたいへんなので、拍手の途中でメータは舞台袖に移動せず、そのままアンコールに突入、ドヴォルザークのスラブ舞曲をさらりと演奏し、おしまい。
拍手は鳴りやまず、メータは最後に車椅子に乗って再登場し、万雷の拍手を受けていました。


ということで、素敵な演奏会でした。
マーラーの1番は以降の作品に比べるとやや軽く見られがちですが、こうやって「花の章」付きでがっちりと演奏すると、後の作品にも決して劣らない、壮大で素敵な作品であると改めて感じました。
8回も聴いている作品ですが、また機会があれば聴きに行きたいですね。
そして、メータもヤンソンスも、まだまだ健康で活躍されることを期待したいと思います。