懐かしいゲームと音楽について | れぽれろのブログ

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先日、定期購読している批評誌「ゲンロン」の第8号「ゲンロン8 ゲームの時代」を読みました。
「ゲンロン」は毎号楽しみにしている雑誌ですが、今回はゲーム特集とのこと。
はあ?ゲーム?なんで今更ゲームやねん・・・、今号は外れか・・・と一瞬思いましたが読んでみるとこれがかなり面白い。

そう、自らの世代的初期設定を忘れていましたが、自分は家庭用ゲーム機器が普及した時期に子供時代を過ごした世代。
1978年の早生まれですので、小学校に入学する前年の1983年にファミコンが発売され、中学校入学後の1990年にスーパーファミコンが発売、我が家でも86年にはファミコンを買い、91年にはスーパーファミコンを買い、自分も小・中・高とそれなりにゲームに触れてきました。
自分は動体視力や反射神経といった能力には乏しく、おまけに映像酔いする(笑)のでアクションゲームは苦手、スーパーマリオのような超有名作品は除きアクションゲームはあまりプレイしていません。
その代り、RPGやシミュレーションゲームやパズルの類はちょこちょこフォローしてきた経緯があります。
さらに、自分の弟はかなりのゲーマーで、アクションゲームを含め年中ゲームをやっており(一時期は居間に自らの布団を持ち込んでテレビの前を占拠、そこで寝起きしゲームと共に生きていました 笑)そのプレイを横で見ていたこと、弟が購読していたゲーム雑誌もちらちら読んでいたこともあり、80年代後半から90年代前半にかけては、自分はかなりゲームの情報に触れています。

「ゲンロン8」のゲーム史の考察は1991年から始まっていますが、この90年代前半の内容は、自分は完全に文脈を理解できるということに気付きました。
年表にあるタイトルもほとんど知っており、実際にプレイしたことのあるゲームもちらほら。
なので、本号の結論の1つ、80年代から90年代の日本のゲームのヒットは出版文化を中心とするメディアミックスの成果だという考察は、全くその通りだったと振り返ってリアルに感じます。
「少年ジャンプ」などの漫画誌でゲームの最新情報を得、徳間書店の「ファミリーコンピュータマガジン」などでゲームの詳細情報に触れ、攻略本などの出版物に触れ、ゲームのスピンオフ漫画作品に触れ、ゲームを楽しむにはおもちゃ屋さんではなくまず本屋さんに行くというのが当時の常態でした。
さらに大作RPGの場合は「設定資料編」「基礎知識編」「完全攻略編」等の複数に分冊されたのガイドブックが販売されており、これらはゲームの進め方のヒントだけではなく、キャラクタやアイテムなどの詳細な数値データの掲載とともに、舞台背景となる世界観やキャラクタの性格などの詳細情報やイラストなども掲載されており、ある種の神話世界やサーガ文学のようにゲーム世界の奥行きを感じさせる内容、ゲームが1つの文学世界となることに貢献していたように感じます。
これが日本独自のゲーム文化(JRPGと呼ばれるようです)を生んだという指摘は、非常に面白いし納得的です。

自分は1996年に大学に進み、これ以降ゲームからは「卒業」し、まったくやらなくなってしまいましたが、「ゲンロン8」のそれ以降の考察も興味深いです。
日本の出版文化の凋落は90年代後半から始まりますが、これに伴いゲームのあり方も変容、本号によるとJRPG的なものも衰退し、現在の主流ゲームはスマホによる簡易な操作+課金というシステムで、これはモデルとしてはパチンコのビジネスモデルに近いのだという指摘も面白いです。


「ゲンロン8」をきっかけに、昔懐かしいゲームを思い出しつつYouTubeにアクセスしていると、昔のゲーム音楽が大量にアーカイブ化されていることに気付き、最近は懐かしみながらこれらを聴いています。
「ゲンロン8」では残念ながらゲーム音楽についてはほとんど触れられていませんが、ゲーム音楽はおそらく非常に重要。
ゲームはプレイしながらずっと同じ音楽を何度もリピートして聴くという聴覚体験を伴いますので、ゲームに触れた人間の音楽文化に対する構えに影響を与えないはずがありません。
自分も昔のゲームの内容は忘れても、音楽だけはどれも覚えている(聴くと思い出す)ことが多く、振り返ってその後の音楽の聴き方に大きな影響を与えていることに気付かされます。

ということで、昔懐かしい有名RPGの思い出の記述と共に、その音楽を7曲ほど並べてコメントしてみます。
選曲は必ずしも有名なものばかりではなく、個人の趣味です。
ゲームに関心のない方でも、音楽好きなら聴いてみても面白いかもしれません。


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・勇者の挑戦/ドラゴンクエスト3

 

(55秒以降ループ)

ドラクエ3は1988年のゲームで、自分も小学校5年生のときにプレイしました。
ちゃんと最後までクリアした最初のRPGなので思い出深いです。
8つの職業から4人のキャラクタを選定して冒険するパーティープレイ、後半に第2の世界が現れるという壮大な世界観と共にある物語、ワクワクしながら遊んだ記憶があります。

ファミコン音楽の最大の特徴は分散和音です。
ファミコンは3音+リズムという限られた音色で音楽を表現しなければならず、和音が出せないので、このために採用されるのが分散和音。
この曲も冒頭から16分音符のアルペジオから始まりますが、これは和音が出せない代わりに壮大さを演出するための工夫です。
ところどころに変拍子が使われ、中間部の分散和音にのって高音域の信号音が挿入される部分(28秒あたりから)がかっこよく、20世紀初頭の原始主義音楽に近い印象がある楽曲です。
この「勇者の挑戦」はラスボス(最後に戦う敵)の音楽。
この曲が流れる中でラスボスと対戦するのは非常に盛り上がり、この曲を聴くために何度もボスのもとに通った記憶があります。


・ジプシーダンス/ドラゴンクエスト4

 

(37秒以降ループ)

ドラクエ3から2年後、ドラクエ4は1990年のゲームです。
ストーリーが5章立てになり、前作に比べて物語の奥行きがぐっと強化されたように記憶しています。
魔族に恋人を殺された人間の青年と、人間に恋人を殺された魔族の青年とが争う物語。
復讐劇の要素が強く、背後にその対立を仕組んだオテロのイアーゴのような悪党がいる、そのことが明らかになってなお事態は破滅的結末に向かうという、古典的悲劇のようなストーリーが印象的です。

この「ジプシーダンス」は物語の第4章で登場する楽曲です。
第4章は魔族と人間の対立の中のサブストーリー、魔族側に取り入った人間が怪物化し、彼によって父親を殺された姉妹が復讐を誓うというお話になっており、第4章で果たせなかった復讐を第5章で貫徹するという演出も印象に残っています。
この旅芸人風姉妹の戦闘テーマがこの「ジプシーダンス」で、どことなくスペイン風の楽曲でカスタネットが似合いそう。
16分音符の上昇と下降が広い音域で繰り返される(よく聞くと4連符と6連符とが複合している?)のが面白く、かっこいい音楽で印象に残っています。


・のどかな熱気球のたび/ドラゴンクエスト4

 

(2分45秒以降ループ)

これもドラクエ4の曲。
ファミコン音楽は容量の都合上、短い音楽をループして聴かせるというケースがほとんどですが、この曲はファミコンにしては長めで、約2分45秒のループとなっています。
気球に乗ってのんびりと空を行くときに流れる曲。
自分はこの曲が好きで、当時この曲を聴くために気球に乗ってぼんやりと世界を回っていた記憶があります。

リズム、テンポ、調性がコロコロ変わる曲で、とくにリズムが3/4、4/4、5/8、9/8と目まぐるしく変化、9/8拍子は3+3+3ではなく4+5の印象で全体に5拍子が支配的、20世紀前半のある種の室内楽に近いような印象を感じます。
タイトルでは「のどかな」となっていますが、出だしこそ3拍子ののどかな印象ですが、徐々に旋律とリズムが不穏な動きに変化し、どこがのどかやねんという気もします(笑)。


・悪の化身/ドラゴンクエスト4

 

(1分11秒以降ループ)

しつこくドラクエ4の曲をチョイス。
(改めて聴いてみると、ドラクエ4の曲は非常に面白い曲が多いです。)
これはラスボスの曲、人間への復讐のため怪物に進化した魔族の青年のテーマ曲です。

ネット上の解説により気付きましたが、この曲の序奏のあとのメロディ(27秒から)は12音音列でできています。
27秒からの4小節で12音、36秒からの4小節で12音が使われている。
なるほど、確かにそうやな。
同音連打や重複音もあるため厳密な12音技法の曲ではありませんが、ショスタコーヴィチの交響曲14番5楽章のシロフォンのような印象もあり、進化した怪物の不気味さをよく表しているように思います。


・虚空への前奏曲/ファイナルファンタジー5

 

(1分45秒以降ループ)

続いてはスーパーファミコンから。
ファイナルファンタジー5(FF5)は1992年のゲームです。
ハードが変更となり、ファミコンに比べて音数も音色も格段に進化し、音楽もより面白いものになっています。
FF5はゲームシステムが非常に面白くて、4人の味方キャラクタのコスチュームを変えながら育てることにより様々な能力を獲得、その能力を組み合わせて戦略的に敵と戦うという楽しいゲームでした。
その代り敵はやたらと強く、漫然と戦っても勝てない敵が多く、対策をたてながら進める必要があったように記憶しています。
この戦略を立てるのがすごく楽しく、たぶん自分としては一番やりこんだ(5回くらいプレイしたかも)ゲームだと思います。
その反面、物語としての印象は薄く、どんなお話だったかはあまり記憶にありません(笑)。

この「虚空への前奏曲」はラストダンジョンの音楽です。
低音のベースに乗ってスーファミならではのエフェクト音が挿入され繰り返され、その上に壮大な弦楽器の和音が入り、やがて管楽器によるメロディが現れる。
後ろで鳴っているエフェクト音のリフレインが楽しくてミニマルミュージック的な楽しさもあります。
この音楽が流れるラストダンジョンはやたらと長く、この音楽とともに、砂漠、森、滝の洞窟、街、古代遺跡、城郭と、風景が目まぐるしく変わり、道中にクセのあるボス敵が何体もいる、持てる能力を駆使してこれらと闘うのが楽しかったです。


・妖星乱舞/ファイナルファンタジー6

 


FF6は1994年のゲーム。
前作FF5とうって変わってFF6はキャラクタと物語に力を入れたゲームになっていました。
複数のキャラクタの視点でお話が展開する、群像劇&マルチスレッド的なストーリー展開が印象的。
本作の物語上での1番の特徴は、中盤で世界が崩壊することです。
前半は覇権主義的な帝国とそれに反対する革命勢力との抗争という形で物語が進んでいきますが、狂気に陥った帝国側指揮官の1人が暴走、彼が神々を従えて世界を崩壊せしめ、後半は暴走する神々とその上に君臨する元指揮官をやっつけることと、崩壊した世界からの復興が目標になります。
破局と復興というテーマが印象深い作品ですが、その反面ゲームとしてはFF5よりずっと簡単で、適当に進めていてもクリアできた(笑)印象があります。

この「妖星乱舞」は本作のラスボスの曲。
やたら長い曲で、ラスボスの4形態の変化に合わせて曲が4パートに分かれています。
本曲のメイン楽器はパイプオルガン、54秒あたりから合唱パートが入り、宗教曲のような様相で曲が進みます。
第2曲は4分30から、この部分は延々続くリフレインが不気味。
第3曲は8分12秒から、こちらはバロック風のパイプオルガン曲で、一瞬救済の雰囲気が漂う。
第4曲は11分32秒から、パイプオルガンの荘厳な和音のあと、一転して12分4秒からは変拍子の嵐、EL&P風のキーボードロックに変化します。なんやこの曲は 笑。
14分40秒で挿入されるラスボスの嘲笑も印象的。
宗教曲とプログレをミックスさせたような長大な曲で、よくこんな変な曲を作ったなと言う感じ。
この曲が聴きたくて何度もボスに挑んだという人も多いのではないかと思います。(自分もそうです。)


・異国の街/ロマンシングサガ2

 

(60秒以降ループ)

最後はロマサガから、ロマサガ2は1993年のゲームです。
フリーシナリオ制のゲームで、イベントをどのような順序でクリアしても(あるいはイベントを無視しても)良いという自由度の高さが非常に楽しいゲームでした。
このゲームもまたやたらと壮大なゲームで、短命種(通常の人間)と、長命種(何千年も生きる人種)との間の、何百年にもわたる抗争を描いた物語。
プレイヤーは短命種側の王族で、世代交代を繰り返しながら長命の敵と戦い続けるという形になります。
何百年経っても同じ敵がまだ生きているというのが面白く、一度敵に敗れても数世代後の後継が報復するということも起こり得ます。
このゲームのもう1つの特徴はラスボスがやたらと強いということ。
初見で何の知識もなければ全く歯が立たず、まともに戦うには数百年前から周到に計画を練って対策を考えながら歴史を進める必要があります。
どれだけ味方のレベルを上げても勝てないので、もう一度初めからやり直したという人も多いのではないかと思います。(自分もそうです。)

ロマサガの音楽は、上記のドラクエやFFの変態的な(?)音楽と比べてずっと聴きやすく、旋律を重視した楽しい音楽になっていたように思います。
この「異国の街」もシンプルな童謡風の5音音階の曲(上記の12音とは真逆)で、弦に乗るフルートが郷愁を誘う素敵なメロディになっています。
挿入されるハープとギターの音色も綺麗。
ロマサガ2は現実世界の世界史を模したところがあり、西欧文明の他に、中央ユーラシア風の平原、サバンナ、砂漠、南米風のジャングル、インド・中東風の古代遺跡、中華風の都市などが登場、世界の東の果てには日本のサムライも住んでいます。
記憶によるとこの音楽は中華風の街の他、ステップ周辺の村、雪深い山村などのBGMにも使われており、これが意外とどの地域でも違和感がなく、欧州から見た異国のイメージとしての5音階はどんな異国風景にも合うというのが面白いです。