れぽれろのブログ

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時系列が前後しますが、7月29日の土曜日、国立国際美術館に行ってきました。
この日の特集展示は、「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-」と題された展覧会。
本展はオランダのボイマンス美術館及びネーデルランド美術館の協力のもと、ヒエロニムス・ボッシュとピーテル・ブリューゲル及びその周辺の画家たちの作品を展示する展覧会です。
つい先日、兵庫県立美術館の「ベルギー奇想の系譜展」にてボッシュとブリューゲルの作品を見たところですが、続けて彼らの作品を鑑賞することになりました。
今年はボッシュとブリューゲルの当たり年ですね。

本展はブリューゲルの超有名作「バベルの塔」が大トリに展示、ボッシュの有名作「放浪者(行商人)」「聖クリストフォロス」の2作が中盤に展示されており、この目玉作品3作がメイン。
そしてこの3作を囲むように、ボッシュ派の作品や同時代の周辺の画家の作品、ブリューゲルの版画作品などが展示されていました。

以下、覚書などをまとめておきます。
なお、ヒエロニムス・ボッシュは近年はボスと表記され、本展でもキャプションはボスで統一されていましたが、本記事では個人的に馴染みのあるボッシュ表記で統一しています。


全体は8部構成。
第1章、会場を入って最初の展示スペースは彫刻作品が並んでいました。
作者不詳の作品が多く、彫刻の人物の雰囲気は同時代の絵画作品に似ています。
「四大ラテン教父」の木彫作品がとりわけ面白く、同時代のファン・アイク兄弟の絵画から出てきたような趣です。
「十字架を担うキリスト、磔刑、十字架降下、埋葬のある三連祭壇画」の小ぶりな登場人物たちが犇めく様子は、イタリアのフラ・アンジェリコの作品をどことなく思い出させます。

第2章~4章は同時代・同地域の画家たちの諸作品。
全体的に服装や装飾品などの描きこみが面白いですが、作品全体のバランスはややいびつなものが多いです。
「聖カタリナ」「聖バルバラ」(作者不詳)あたりが見どころでしょうか。
ハンス・メムリンクの「風景の中の二頭の馬」という作品が展示されており、壮大な宗教画のイメージがあるこの作家にしてはシンプルな作品で、描かれる馬と子猿にはどことなく可愛げがありました。

第5章にいよいよボッシュが登場します。
有名な「放浪者(行商人)」及び「聖クリストフォロス」をじっくりと鑑賞。
ボッシュは意味の塊のような絵を描く作家で、絵の細部に登場するもの1つ1つが比喩的・暗示的な意味を持ち、ダラダラと細部を観察するのが無性に楽しいです。
とりわけ面白いのが「聖クリストフォロス」です。
杖をもって歩く聖クリストフォロス、杖に吊るされる魚と血はキリストを暗示し、彼の背に乗ってる赤ん坊がキリストであることが暗示されます。
背後の裸で逃げる男は危機を表し、その手前の殺され吊るされる熊は危機が去ったことを表すのだとか。
木の上の割れた瓶に住む人や、羽の生えた魚などは、ボッシュの他の作品にも登場するモティーフ。
このボッシュの2作品は(なぜか)あまり混雑しておらず、のんびりと鑑賞することができました。

第6章はボッシュに影響を受けた画家たちの作品。
モンスターたちの造形が面白く、細部を楽しく鑑賞。
ボッシュ&ブリューゲル&その他の画家のモンスターたちのアップが連続する映像作品も展示されており、ぼんやりと鑑賞しました。

第7章はブリューゲルの版画作品。
兵庫県立美術館の「ベルギー奇想の系譜展」で展示されていた作品と重複があります。
「聖アントニウスの誘惑」や「大きな魚は小さな魚を食う」なども再び鑑賞。
細部に意味に塊のような人物たちやモンスターたちが登場する愉快な作品が続きますが、全体的に「七つの徳目」のような道徳的に優れた様子が描写される作品よりも、「七つの大罪」のような悪徳と刑罰と怪物で埋め尽くされるような作品の方が楽しいです。
そんな中、「農民の婚礼の踊り」や「野ウサギ狩り」と言った版画作品も印象的で、前者はブリューゲルの農民画の数々を思い出させ、後者は「雪中の狩人」などの有名な風景画を思い出させます。
ブリューゲルもボッシュの影響のもとで細部を意味で埋め尽くすような作品を制作した画家ですが、「雪中の狩人」のようなかっこいい構図の作品をも製作したのがブリューゲルの特徴で、その特徴の一端が版画作品からも確認することができました。

第8章はメインの「バベルの塔」ですが、展示スペースの前にわざわざ列を作るように仕切りが設置されており、大人数がその仕切りに沿って並んでいました。
入国手続きの際のパスポート確認並みの行列ぶりですが、列の進行速度はそれよりのろく、遅々として進みませんので、鑑賞は諦めて次の展示スペースへ。
次の部屋には3倍に拡大した複製画が展示されており、こちらの方は空いていましたので、細部をじっくりと観察することができました。
CGによる解説映像も興味深く鑑賞。
塔の白色部分及び白い人たちは漆喰のせいであり、赤い部分は建設中の煉瓦なのだとか、なるほど。
バベルは一般に神の罰により崩壊し、人間の驕りを表すと言われますが、このブリューゲル作品は人間の共同作業が描かれており、それを肯定的に解釈している解説も印象的でした。

以上、楽しい展示でした、
とくにボッシュをじっくり鑑賞できたのがよかったですね。
ミュージアムショップではモンスターたちのグッズも、Tシャツ、フィギュア、ガチャガチャ等、多数販売されており、中でもブリューゲルの「大きな魚は小さな魚を食う」に登場する足の生えた魚がとりわけ目立ちます。
この魚はタラ夫という名前でキャラ化されており(なぜかすね毛があり白いソックスを履いている)、このタラ夫の等身大のぬいぐるみも展示されていました。
なんやこれは 笑。


常設展示について。

「コレクション 風景表現の現在」ということで、風景に基づく作品が選定され展示されていました。


個人的な見どころは最後の2部屋。
ルーム4は青木陵子によるオートマティスム風ペン画(?)が楽しく、ブリューゲル絵画の物に埋め尽くされる画面に近いものも感じます。
両端には伊藤存のキルト作品が並び、背後には坂本夏子の新作が展示されています。
坂本夏子は歪む画面と独特の遠近感覚、ときにサイケデリックな色合い、眩暈のするような画面が特徴的な作家さん。
今回は船が遭難して女の子が生贄になるモティーフが、複数の異なったパターンで描かれており、ピンク色の波に飲まれる女の子たちがとりわけ印象的。

ルーム5は写真作品。
松江泰治の風景(地球の表面と言った方が良いかも)を抽象画のように切り取ったモノクロ写真や、畠山直哉の絵画的な風景写真(マネやライスダールのように見えてくる)が楽しい。
下道基行の旧日本領(台湾、樺太、サイパン)に残る鳥居を撮影した作品も面白く、誰もいない森の中に残る鳥居、倒されてベンチとして再利用される鳥居、キリスト教と思われるお墓の中に残る鳥居など、日本のアジアの歴史と現在について考えてしまう興味深い作品です。

ルーム5の奥にはログズギャラリーという作家さん(?)の映像作品が上映されていました。
車(バイク?)の後ろにカメラを取り付けて夜の街を走る映像が、8×8の計64セット並べて展示され、8×8の中心から周縁にかけてコンマ数秒ずつ時間をずらして上映、風景が抽象化していく不思議さと心地よさを堪能できる面白い作品になっていました。

ボッシュ&ブリューゲルの諸々の展示を見た後ですので、ルーム1の岡崎乾二郎の具象画風の抽象画ですらモンスターの群れに見えてくるという(笑)、変な感覚の中で常設展を鑑賞しました。
今回の常設展も面白いので、お時間のある方はぜひこちらも。

 

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