宇宙と芸術展 (森美術館) | れぽれろのブログ

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前回の続き。
17,18日に東京へ遊びに行き、前回の杉本博司の展示の他に、もう1件展示を見てきましたので、感想を残しておきます。


ゼロ年代に新しく誕生した美術館の中で、様々な批評や言説でよく取り上げられる美術館BEST3といえば、おそらく国立新美術館、森美術館、金沢21世紀美術館の3つになると思います。
このうち金沢21世紀美術館は3年前に訪れました。
残りの2つも訪れてみよう、というのが今回の東京旅行の1つの目的。
今回は森美術館の訪問記録、このとき開催されていた「宇宙と芸術展」という展示の感想をまとめておきます。(国立新美術館の方は次回の記事で登場予定です。)
訪れたのは17日の土曜日ですので、時系列的には前回の東京都写真美術館の杉本博司展より先にこちらの展示を鑑賞しています。


森美術館は、六本木ヒルズ森タワーの53階にある美術館です。
メトロ日比谷線六本木駅のすぐ近く。
東京都写真美術館のある恵比寿ガーデンプレイスからは、日比谷線で2駅。
タワーの最上階が54階とのことですので、美術館ほぼてっぺんに位置しています。


六本木ヒルズ森タワーの外見はこんな感じ。


超高層ビルを真下から撮影。
このタワーの高い高い上の上に森美術館があります。
恐ろしい高さです(笑)。


森美術館で開催される展示は現代美術が中心。
基本的に夜の22時まで鑑賞できるのもこの美術館の特徴です。
この日は夕方に訪れたのですが、終了時間を気にせずゆっくりと鑑賞することができました。

 


「宇宙と芸術展」では、大昔から現在まで、人類が考えてきた多様な宇宙像や、科学的な宇宙についての論考の軌跡、その他宇宙にまつわる様々な歴史上の文物が、洋の東西を問わずたくさん展示されていました。
これらの博物館的展示に挟まるようにして、多様な作家による現代美術作品が多数展示されるというのがこの展覧会の概要。
前回の杉本博司の展示がどちらかといえばディープで重たい内容であったのに対し、この「宇宙と芸術展」の方は、もう少し気軽に楽しく鑑賞できる展示になっていました。


歴史上の展示品は種々様々。
いきなり京都は三室戸寺の両界曼荼羅が、日本中世の宇宙観ということで、でーんと展示されていました。
関西のお馴染みのお寺の所蔵品を東京で鑑賞する面白さ。
これ以外にも、西洋の天球図や、ガリレオ・ガリレイの望遠鏡、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿、プトレマイオスやらニュートンやらケプラーやら渋川春海らの書物などなど、博物館ファン(?)が楽しめそうなものがたくさん展示されていました。


これらの歴史的・科学的展示に挟まるようにして、現代美術がぽーんと登場します。
この並びというか、ギャップが面白いです。
以下、印象深い作品をいくつか並べてみます。

 

 

向山喜章の「Sanmon GCC - yupotanjyu + nupotanje」は、ワックスを使用して曼荼羅や月のイメージを現代的に表現した抽象作品。
一瞬バックからライトが当たっているように見えますが、よく見るとワックスが薄く彩色されているようで、この色彩が非常に心地よいです。
Sanmonは和歌山県にある高野山の山門を表しているとのこと。
自分は高野山に親戚がおり、高野山は幼いころから馴染み深い場所だったりするため、なんとなく作品に親近感を感じます。


アンドレアス・グルスキーの「カミオカンデ」は、岐阜県にあるスーパーカミオカンデを撮影しデジタル加工した巨大な写真です。
スーパーカミオカンデはニュートリノの観測することにより宇宙や物質の存在の謎に迫る巨大な設備。
2年前に国立国際美術館の特集で鑑賞した作品ですが、改めて宇宙という文脈で展示され鑑賞すると、この作品のシーケンシャルな構造がなんとなく宇宙的に見えてきます。


ヴォルフガング・ティルマンスの宇宙を撮影した写真を並べるインスタレーションも昨年国立国際美術館で鑑賞しましたが、会場により都度作品を並べ替えるティルマンスのスタンスから、また違った作品に見えてきます。
宇宙そのものの写真もあれば、パソコンの画面上に移った宇宙空間をパソコンごと撮影した写真もあり、階層構造が面白いです。


ピエール・ユイグの「非絶滅」は、昆虫が閉じ込められた琥珀をマイクロカメラで撮影した映像作品。
琥珀と昆虫の細部を拡大、カメラを移動させながら撮影したものを大きなスクリーンで鑑賞すると、何だか宇宙空間のように見えてきます。
ミクロコスモスが大宇宙に見えるという視覚上の面白さ。


杉本博司の「石炭紀」は、博物館で展示されている石炭紀の植物のジオラマをピクトリアリスム風に美しく撮影した写真です。
一連の「ジオラマ」シリーズの中の一枚、画面上部に空間をたっぷりと残した画面構成が素敵で、絵画的な美しさに満ちていると同時に、この作品がレプリカを撮影した作品、レプリカのレプリカであるということが、コンセプチュアルな面白さを感じさせます。


パトリシア・ピッチニーニの「ザ・ルーキー」は謎の生物をシリコンで製作した3次元作品。
人間の赤ん坊のような身体ですが、体は体毛でおおわれ、背中には巨大な脂肪の塊のようなものがあり(このせいで芋虫のように見える)、さらにその背後は突起付きの甲羅のようなものが付いています。
顔は一見可愛く見えますが生物全体としてみるとなんとなくグロテスク。
宇宙人なのか未来人なのか何なのか分かりませんが、ぱっと見のインパクトは非常に大きい作品です。


ヴァンサン・フルニエの「ロボット・クラゲ・ドローン」は、SDプリンタでクラゲのようなものを制作した作品で、小谷元彦の造形作品にも似た面白さがあり印象に残りますが、これとは別に各国の宇宙関連設備を客観的に撮影した写真の連作の方も忘れてはならない作品。
野村仁の月のクレーターの形状を楽譜化し、それを演奏する音楽作品は、現在大阪の国立国際美術館のコレクション展で展示されている作品とリンクし、たまたま自分は同時期に鑑賞することになりました。
なお、国立国際美術館からはジョゼフ・コーネルの「カシオペア#1」も貸し出しされていました。


チームラボの「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突し咲いていく-Light in Space 2016」は、1つの部屋全体にプロジェクターで映像を映し出す作品で、身体が宇宙に溶け込むかのような錯覚を起こさせ、ジェットコースター的眩暈を引き起こすエンターテインメント的作品で、楽しかったですが、酔いました(笑)。
全面スクリーンによって身体感覚に訴える作品は、過去に鑑賞した中ではピピロッティ・リストの映像作品などに近い感じ。

しかし、感覚的楽しさが優先されるため、主題が何なのかがよく分からないまま終わってしまいました(笑)。

 


この他にも多数の作品が展示されています。
様々なものが並び、多方向にテーマが拡散していく展覧会。
鑑賞者によってそれぞれ異なる興味深いものが見つかるかもしれない展覧会だと感じました。

 

 

さて、今回の旅行では久々に東京の街をぶらぶらと歩いてきましたので、次回は東京の街の写真などを並べてみようと思います。