モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで | れぽれろのブログ

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前回の続き、少し時間が経ちましたが
3月26日に京都市美術館にて鑑賞した
「モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで」
と題された展示の覚書についてまとめておきます。


前回のルノワール展に引き続き、印象派の重鎮の展覧会です。
ルノワール展と比べて、どういうわけかモネ展の方が混んでいました。
モネの方がやや人気があるということなのでしょうか?
ちなみにルノワール展は入場料1500円、モネ展の方は1600円で、
モネ展の方が少しだけ高い入場料となっておりました。

 

 

モネは言わずと知れた印象派の画家、印象派の中の印象派、

後年まで印象派としての考え方で製作し続けた画家です。
「モネは一つの目にすぎない。しかしそれは素晴らしい目だ。」(セザンヌ)
セザンヌは印象派的な手法を捨てた画家ですが、
たった一つの手法を貫き通したモネをこのように評しています。


印象主義は写実主義の延長上にある考え方です。
写実主義は目の前にある現実を捉て製作する手法。
クールベが有名で、彼は神話画や歴史画を否定し、
同時代の現実を描写し続けました。
印象派の画家たちも写実主義の画家と同様、実際に見たものを忠実に

描こうとしましたが、彼らが心奪われたのは現実の造形よりも光の描写。
移ろいゆく光・空気感を捉え、キャンバス上に写し取る。
徹底した外光の写実こそが印象派の本義です。
印象主義(impressionism)はimpression(外界からの刺激)を重視する考え方で、
表現主義(expressionism)のexpression(内面からの表出)とは真逆の考え方。
前回のルノワールが後年だんだんとexpression化していくのに対し、
モネはあくまで「一つの目」をもって外光を捉え続けた画家です。
しかしモネは理論的に手法を突き詰めるというタイプの画家でもなく、
あくまで「小鳥が歌うように」感覚的に描いていたと言われています。

 

 

自分はモネのみをクローズアップした展覧会ははじめて鑑賞します。
この展覧会ではモネだけでなく、ルノワールなどの同時代の画家の作品や、
モネが収集したドラクロワのデッサンなども展示されていましたが、
あくまで展示のメインはモネの作品でした。


モネは風景画を描き続けた画家ですが、
若いころの作品の中には人物画もあります。
カリカチュアをたくさん製作していたらしく、
オノレ・ドーミエばりの戯画がずらりと並んでいます。
モネのカリカチュアは自分は全く知らず、
モネのイメージとはかけ離れていましたので、驚きました。


しかしモネの真骨頂はやはり風景画。
印象派手法を用いた1870年~80年代の作品がやはり素晴らしく、
なんとも心地よいです。
キャンバスに写し取られた外光の色合いが織りなすハーモニー。
ルノワールが暖色系と黒の印象が強いのに対し、
モネは青・緑・紫の色合いがとりわけ魅力的に自分には感じられます。
展覧会の中盤、「モティーフの狩人」と題された章が最も素晴らしく、
楽しく鑑賞しました。
展覧会の構成上、章は分かれてましたが、
「テュイルリー公園」もこの時期の作品です。


1900年代になると有名な睡蓮の連作が続くようになります。
睡蓮は大きい作品が多いので、少し離れて鑑賞すると心地よいです。
晩年モネは白内障を患い、視力が低下していきます。
最晩年の作品は視力の低下が著しいためか、
淡くて心地よい色彩がなくなり、原色を中心とした色合いに変化してきます。
形態もどんどん曖昧になり、このための意図せざる結果だと思いますが
まるで抽象表現主義のような作品も展示されていました。


ところで、「「印象、日の出」から「睡蓮」まで」というのが
今回の展示のサブタイトルですが、「印象、日の出」が見当たりません。
よく確認してみると、「印象、日の出」はなんと3月21日までの展示となっています。
なんとも残念。
看板に偽りありやないか!・・・などとと思ってしまいますね 笑。

 

 

前回に引き続き、気に入った作品を少し並べてみます。


・プールヴィルの海岸、日没 (1882)


モネは夕暮れ時の風景を好んで描きましたが、
それは光と影の対比をキャンバス上に現すのに
夕暮れの光がとりわけ適していたからなのかもしれません。
この作品でも右上から降り注ぐ光に対し、
寒色系の砂浜と膿が印象に残ります。

 

・ヨット、夕暮れの効果 (1885)


こちらも夕暮れの作品。
かなり大胆に描かれていますが、心地よい色合いです。

 

・ジヴェルニーの黄色いアイリス畑 (1887)


紫色と緑色が並ぶ画面の中に
転々と存在する黄色い花のリズムが素敵な作品。
実物ではもっと黄色が効果的に見えます。

 

・クルーズ川の渓谷、夕暮れの効果 (1889)


またしても夕暮れ。
渓谷はかなり暗く描かれていますが、
この紫色もモネらしくていい感じ。
山端の赤色が印象的。


やはり1870年代~80年代の作品がいいですね。
モネの色彩の妙は画像では分かりにくいので、
ぜひ実物を鑑賞して頂きたいです。

 

 

ということで、ルノワール展、モネ展の2つの展示を鑑賞しました。
この2件の展示、ルートの最後のミュージアムショップは繋がっており、
どちらの展覧会のグッズも購入できるようになっています。
なかなか商魂たくましい展示構成ですね(笑)。

 

 

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★おまけ


岡崎公園から東に少し歩いたところにある南禅寺の桜。
3月26日なので、咲き始めのころです。