光紡ぐ肌のルノワール展 | れぽれろのブログ

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また4月が来たよ~♪ (ギブス/椎名林檎)

 

と、この書き込みもおそらく5回目、ブログを始めて4年が経過し、
この4月をもって当ブログは5年目に突入します。
アクセスして頂いている皆様、今後ともよろしくお願い致します。

 


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3月26日の土曜日、京都市美術館に行ってきましたので、
その覚書などをまとめておきます。

現在、京都市美術館ではルノワール及びモネの特別展が開催されています。
京都市美術館は建物の左右で別々の企画展を

同時に開催することが多いですが、今回は印象派の画家×2人という、

めったにない組み合わせの企画です。
印象派系は人気があるためどちらも混雑が予想される展覧会、
これは是非とも会期早めに行っておくべしということで、行ってきました。

 

この日の京都は日が照ってポカポカしていましたが、意外と風は冷たく、
コートを着ていくかどうか迷いましたが、着て行って正解。
しかしそんな中、白人の観光客の中にはタンクトップで街を徘徊している方々も。
彼らはそんなに日光に飢えているのでしょうか・・・笑。

 


まずはルノワールの展覧会「光紡ぐ肌のルノワール展」の方から

鑑賞しましたので、こちらの覚え書きから。

 

ルノワールは19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した画家。
一般に印象派の画家と言われますが、同時代のセザンヌなどと同様に、
後年には印象派手法を捨ててより自由な作品を制作するに至った画家です。

 

ルノワールが印象派の手法(外光の色彩的印象をそのまま

キャンバス上に写し取る)を用いて作品を制作したのは、

1870年代から1880年代の初頭まで。
印象派的手法をベースとしながら、風景のみならず人物を重視して
描かれた作品が連続するこの時期がおそらくルノワールの黄金期です。

 

1880年代半ばより、イタリアの古典的美術や

アングルのような新古典主義の作家を意識した伝統的な作風に変化。
一旦古典を経由したその後、1880年代後半から1890年代にかけて、
印象派的手法と古典的手法を融合させたような作品をたくさん制作し、
おそらくこの時期が第2の黄金期、個人的にこの時代に好きな作品が多いです。

 

その後1890年代後半から1900年以降になると、より自由な色彩と形態を

模索するようになり、身体表現はどんどん非写実的になっていきます。
この時期ルノワールがリウマチを患っていたということも影響していますが、
同時代のポスト印象派から表現主義へという流れとのリンクも

考えられるのではないかとも思います。
セザンヌがどんどん構築的・分析的になっていくのに対し、
ルノワールはあくまで絵画的幸福感に溢れた作品を制作し続けます。

 

ルノワールの魅力は何といっても色彩、キャンバスの上に置かれた

様々な色あいが、幸福に満ちた人物たちを形作る、
絵画を物質として鑑賞することの幸福を感じさせる、そんな作品が魅力的です。
印象派と同時代の作家が並ぶ展覧会を鑑賞すると、他の作家に比べて

ルノワールやモネの色彩の大胆さにいつもびっくりさせられます。

 

ルノワールの作品はとにかく目の快楽、
色の重なりが心地よく、人物は暖かで、不幸が感じられません。
これらの人物は現実のものとは言えないかもしれません。
印象主義は写実主義の延長上にある手法(形態ではなく色彩を写し取る)で、
モネなどは晩年まで徹底して外光の色彩的移ろいを描写し続けますが、
ルノワールは後年になるほど写実から主観へどんどん移行していった画家。
写実では得られないような幸福の描写も、ルノワールの大きな魅力です。

 


本展はルノワールの魅力をたっぷりと味わうことができる展示となっていました。
展示は年代別ではなく、描かれた人物の違いや作品の種類の差による
テーマごとに作品が分類されていました。
テーマは「子どもと少女」、「身近な女性たち」、「同時代の女性たち」、
「浴女と裸婦」、「デッサン、彫刻、版画」の5つ。
作者とモデルの関係をあれこれ考えながら鑑賞するのに

適した展示となっています。
しかし、自分はやはり年代による作品の差異が気になるので、
戻ったり進んだりして会場をウロウロしながら鑑賞しましたので、
それなりに時間がかかりました。

 

今回の展示を通して鑑賞して感じたこと。
ルノワールの魅力は上にも書いたとおり色彩ですが、
人物造形や構図の心地よさ、とりわけ複数の人物が描かれた作品の
構図の素敵さが印象に残りました。
ルノワールの作品の実物を見るとどうしても色彩に目が行きますが、
人物のポージングと配置もなかなか心地よいものです。

 

今回の展示の中で気に入った作品をいくつか並べてみます。

 


・手紙 (1895-1900年頃)

1890年代にルノワールは2人の女の子が並ぶ作品をいくつか制作しています。
「ピアノに寄る娘たち」がおそらくこの時期の最も有名な作品だと思います。
今回展示されていたこの「手紙」も、90年代のルノワールらしい素敵な作品。
仲良さそうな女の子2人の手紙を前にして語り合っている様子が
何とも幸福そうで微笑ましいですね。
左の子の赤いドレスと右の子の帽子の赤い花が印象的。

 


・草原で花を摘む少女たち (1890年)

これも女の子2人のポージングが良い感じの作品。
背景は印象派的ですが、人物2人はもう少し自由に描かれている感じ。
赤系と青系のドレスの対比もいい感じ。

 


・おもちゃで遊ぶ子ども、ガブリエルと画家の息子ジャン (1895-96年)

こちらはルノワールの妻と息子。
描かれている子どもジャンは有名な映画監督ジャン・ルノワールの

幼いころです。
これまた何とも幸せそうな2人。

 


・昼食後 (1879年)

上の3作品は1890年代以降の作品でしたが、こちらは1870年代の作品。
古典に回帰する以前の作品で、上の3作品と比べると、
人物や色彩の表現方法がずいぶん異なることが

なんとなくお分かりかと思います。
この作品が日本初公開で、今回の展示の目玉なのだとか。
ルノワールは黒を効果的に使う作家でもあり、
この作品でも実物では服装の黒色がとりわけ印象に残ります。

 


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ということで、幸福感に浸ることのできる素敵な展覧会でした。
次回はもう1つのモネの展示について書きたいと思います。