水浴する女性たち | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

西洋美術では女体画がたくさん登場します。
水浴をテーマに描かれた作品も多いです。
女の子がお風呂に入ったり水浴びしたり、
そんな作品たちを並べてみます。
このテーマも時代によって移り変わりがあり、
比較してみるのも面白いです。


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・水浴のニンフ/ヴェッキオ

水浴するニンフたち

16世紀初頭のヴェネツィア派の画家ヴェッキオの作品から。
たくさんの女の子が水浴していますが、
彼女らは人間ではなくニンフ(女神)であるとの設定です。
見る限り完全に人間なのですが(笑)。
この時代は女体を描く口実して神話などを引っ張ってくると
いうこともあったのだと思います。
それぞれの女の子の様々なポーズが印象的な作品。


・若返りの泉/クラーナハ

若返りの泉

続いては北方ルネサンスの画家クラーナハの作品から。
こちらは水浴図と言ってもかなり意味的な作品で、
画面左側からお婆さんがやってきて、水浴すると若返り、
若返った女の子が画面右側から出ていくという作品。
ちょっと珍しい水浴図です。
右側では若返った女の子たちが男の子たちと飲食し、
そしてカップルになった二人がいそいそと木陰へ向かう姿が描かれています。
若返った後にすることと言えば一つなのでしょうか(笑)。
当時の人たちの願望が描かれているようで、面白い作品です。


・水浴する女たち/フラゴナール

水浴する女たち

時代は下って18世紀ロココの作品。
フラゴナールは貴族が寝室などに飾る女体画(いわゆる閨房画)を
たくさん制作した画家ですが、その中の一枚です。
いかにも水の中で遊び戯れるといった感じの作品。
フラゴナールは作品によってはかなり大胆な筆致で描く画家で、
この作品でも手前の草や中央の布の描き方など
大胆な筆致であることが画像でもなんとなくお分かりかと思います。
個人的に水浴図と言って真っ先に思い出すのがこの作品です。


・トルコ風呂/アングル

トルコ風呂

19世紀、新古典主義の画家アングルの有名な作品。
円形の画面に描かれる作品というのは非常に珍しく、
その中で裸の女の子がうじゃうじゃと犇めき合っています。
かなりの人口密度です(笑)。
お風呂の絵ですが水に入っているのは画面左側の一人のみ、
あとは楽器を演奏したりと、皆さんまったりと過ごしています。
その姿がやたらと官能的。
東方に対する誤った異国趣味丸出しの(笑)作品ですが、
女の子の造形と画面の細部を観察するのが楽しい作品です。
この作品はアングルのかなり晩年の作品ですので、
描き方は古典的であるにしても、主題はかなりロマン主義的な感じがします。
画面の構成も魅力的で、好きな作品です。


・波と女/クールベ

波と女

19世紀の写実主義の大家、クールベの作品から。
一般にクールベはぼってり太ってお肉のついた
生々しい女性の写実的な裸体画がの方が有名だと思いますが、
このような理想的な(?)女の子の裸体画も描いています。
(っていうかそういう絵の方が多い気がします。)
腕を上げて胸をクローズアップし、
男性目線の艶めかしさがある作品になっています。


・浴女/ルノワール

浴女

続いては19世紀末、ルノワールの浴女です。
アングルやクールベのような官能性はあまり感じられず、
ルノワールの場合は色合いと質感の心地よさの方が印象的。
質感と言っても、肌の質感を忠実に再現するということではなく、
絵を見たときの絵具の物質的な質感の心地よさを
追求しているようにも感じられます。
紺や緑などの暗めの色の使い方も心地よいです。
印象派の手法から自由な描き方を模索し、
絵を見るということの快楽を追求したような作品で、
好きな作品です。


・大水浴/セザンヌ

大水浴

ポスト印象派の画家セザンヌがこの作品を完成させたのはもう20世紀初頭。
木と女の子が形作る三角形の画面の中に、色と形が心地よく並べられた
作品です。
この時代のセザンヌの作品ともなれば、もはや描かれている主題は
ほとんど重要ではなくなり、画家の関心は画面構成と色と形のみと言ってもよく、
同じ水浴図でもヴェッキオの時代とは全く違う印象を与える作品になっています。



以上、400年に渡り西洋絵画の水浴図を並べてみました。