カードで遊ぶ人たち | れぽれろのブログ

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西洋美術ではよくカード(トランプ)で遊ぶ人たちの姿が登場します。
今回はカード遊びの作品を並べてみます。
同じカード遊びの図でも、それぞれの画家によって着眼点が異なっており、
比較してみてみるのも面白いです。


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・トランプ詐欺師/カラヴァッジオ

トランプ詐欺師

まずはバロックの画家カラヴァッジオの16世紀末の作品から。
自分の手札に集中する左の男の子は、
相手の詐欺(背中からカードを取り出す)に気づいていません。
今まさに行われるイカサマの瞬間。
画面左手からスポットライトのように差し込む光が
カラヴァッジオらしくかっこいい画面になっています。
中央の男性の表情も印象的です。


・いかさま師/ラ・トゥール

いかさま師

続いてもバロック期の画家、17世紀フランスのジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品。
これもカラヴァッジオと同じくイカサマの瞬間を描いています。
左側の男が背中からカードを取り出すのもカラヴァッジオと同じ。
この時代、トランプ=イカサマなのでしょうか 笑。
同時代の画風の流行や風刺的な意味もあるのかもしれませんね。
ラ・トゥールも光を描写する画家で、真っ黒なバックに対し、
光を浴びた人物たちが印象的です。


・陽のあたる部屋でカード遊びをする人々/デ・ホーホ

陽のあたる部屋でカード遊びする人々

続いては17世紀フランドル。
デルフトの画家ピーテル・デ・ホーホの風俗画です。
カード遊びの最中、右側の女の人の困惑した表情もおもしろいですが、
この画家の関心はやはり遠近法と空間造形にあるように思います。
窓、扉、壁の絵、床と、四角が連続するリズムが印象的な作品。


・トランプの城/シャルダン

トランプの城

18世紀、ロココと同時期のフランスの風俗画家シャルダンの作品。
こちらはカードゲームではなく、トランプでお城を作る一人遊びです。
このテーブルはカード遊び専用の台らしく、普段は大人たちが使っている
カード台で少年が一人遊びをする、という絵のようです。
トランプのお城は儚さの寓意であるとも言われますが、
それよりも男の子の佇まいが印象的な作品。
トランプの絵画と言えば、個人的にはこの作品が一番好きかもしれません。


・カード遊びをする人々/セザンヌ

カード遊びをする人々

19世紀フランス、セザンヌの有名な作品から。
この時代には絵画はほぼ視覚的なものとなり、
上までの作品のような風刺的・寓意的要素は感じられません。
セザンヌは人物がカードに興じるという構図が気に入っていたのか
同じようなシリーズを何枚も製作しています。
人物の体・腕・肘のライン、机と瓶、
画面がややアンバランスな対称形を成しており、
全体の微妙な構成が楽しい作品になっています。
絵を見るということの視覚的な楽しさという点では、
今回取り上げた中ではやはりセザンヌが最も面白い作品であると思います。


・トランプ遊びをする兵士たち/レジェ

カード遊びをするふたりの男たち

最後は20世紀。
キュビスムの影響下にあるフェルナン・レジェの作品です。
パッと見よく分かりにくいですが、兵士たちがカードゲームに興じています。
この作品は1917年、第一次世界大戦の時期の作品です。
激しい塹壕戦の間のつかの間の休息を表しているのでしょうか。
レジェは都市・労働・機械などの近代的なものをモティーフにする場合が多く、
この作品もどことなく機械的で冷めたような印象を受けます。


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以上、様々な時代のカード遊びの作品を並べてみました。
同じ主題でも時代により興味の在り様が変わっていくところが面白いですね。