長い夏休み (その2) | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

前回の続き。
6月から9月までのまるまる4か月のお休みについて、
そして新しい街への引越しなどについての覚書です。
個人的な記事で少し長くなりますが、ご興味のある方はお読みください。


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休職中の日々について。

前回も書いたとおり自分は6月中頃までは意外とあちこちに出かけたり
再就職に向けての準備などを行っていましたが、6月も末ごろになると
だいぶ時間に余裕が出てきて、本格的にのんびりモードに
突入することになりました。
7月~8月にかけては、いろんな企業の面接に出かけたといっても
せいぜい週1回とか2回とかのレベル。
応募する企業は前職と同じような製造業ですし、ある程度の想定問答の準備が
完了すれば、応募先ごとの若干の企業研究以外にはそれほど対策を
実施することもなく、
また筆記試験もありましたが、SPIなので今更対策しても
仕方ない面もあり、
7月以降はそんなに再就職活動に対して時間を割く必要も
ありませんでした。
自身の経験や能力以上の企業を狙ったり、人柄をよく見せようと思うのであれば
また別ですが、そうでなければ、職務経歴書の準備と面接での表現方法の
整理が終われば、
とくにやることはないのです。

そんなわけで、6月は粉河寺と施福寺に遊びに行っただけでしたが、
7月以降は比較的空いている平日の美術館をのんびり回ったりして過ごすことが
多くなりました。
舟越桂、ルーヴル、マグリット、他人の時間(アジアの現代美術展)、
ティルマンス、白鳳期の仏像、クレー、などなど。
近畿圏で開催されたこの夏の主要な美術の特集展示はすべて出かけ、
いつもより時間をかけてかなりじっくりと鑑賞することができました。
展示によっては4時間だとか、長時間に渡って会場にいたものもあります。
とくに国立国際美術館の「他人の時間」展は非常に面白かったので
2回も鑑賞することになりました。
この他、浜松に1度旅行に行き、ローランサンの展示も鑑賞、
そして近場のお寺:紀三井寺にも出かけています。
以上はすべてこのブログで記事化していますが、記事化していないところでは、
大阪歴史博物館に行ってみたり、
千里の万博公園にある国立民族学博物館に行ったり、
その他今まで行ったことのなかった図書館に行ってみたりもしました。
民博はたぶん小学校4年生(9歳)のとき以来ですので、
記憶に間違いがなければ、28年ぶり(!)に訪れたことになります。
民博は90年代以降のポストコロニアルな世界把握が反映されているのか、
現在は地域間の交流を非常に重視している展示が印象的、
その他、音楽の展示が妙にマニアックで充実していたりだとか、
(森達也さんのドキュメンタリー「放送禁止歌」に登場するようなレコードが
一式並んでいるブースを見たときは、あまりのマニアックさにびっくりしました)
1回では回りきれない面白さがありました。

それでも時間はたくさんあります。
近所をウロウロして写真を撮ってみたり、
無駄に車でウロウロ走ったり、
図書館で朝から夕方まで1日過ごしていろんな本を読み散らかしたり、
VHSで昔録画したテレビ番組をパソコンで再生してダラダラ鑑賞したり、
YouTubeで昔のお笑い番組をひたすら見続けたり、
YouTubeで昔の音楽をあれこれ聴きまくったり、
海をボケっと眺めたり(徒歩5分で海に辿り着けるところに住んでいました)、
雲が流れていくのをひたすらみていたり(笑)、
とにかく全力でダラダラしていました。
退職の記事を書いたときに、
「のんびりしているうちに不安が募って早く就職しようとするか、
のんびりに慣れて働くのが嫌になるか」
と書きましたが、やはりというか自分は後者で、
このままずっとのんびりできたらいいなと思うようになりました。

あと、時間があると長い小説を読むとか、映画を観るとか、あるいは料理を
始めてみるとか、そういうことになるのかなとも思っていましたが、
意外と時間があってもこれらのことはしませんでした。
かねてから、「仕事があるから長い小説は読めない」
「映画を集中的に観る時間が取れない」
「料理をせず外食や出来合いのものになるのは仕事が忙しいせい」
などと人に説明することもありましたが、これらは明らかに嘘で、
自分とってに必要のないことは、人は時間ができてもやろうとしないものです。
本当にやりたいことがある場合、人は多少の時間的制約があっても
実行してみようと思うもの。
なので、今は映画はそんなに見たくないし、料理もやはり全くやる気が
ないのだということが納得できました。
できないのではなく、したくないのが真相のようです。


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人付き合いのことなど。

自分は独身で一人暮らしですので、休職すると人とは疎遠になりがちです。
前の職場の人たちと何度か会ったり、一緒に退職した人とハローワークや
再就職支援サービスの事務所で会って話をしたり、
退職した会社から残務についての問い合わせが入ったりもしましたが、
時間が経つとそういう機会も徐々になくなっていきました。
たまに前の会社の人と道で会って話をするようなこともありましたが、
そういう機会でもない限り、知り合いと会話をするという機会が減って行きました。

自分は割とずっと一人でいても苦にならないタイプ、
一人なら一人で一人遊びを続ける(笑)タイプです。
なので、寂しくてどうこうということはさほどはなかったのですが、それでも
コミュニケーションと疎遠な生活が続くと、
人は機会があれば
コミュニケーションのための時間を取ろうとするものだ
ということに、
この夏は気づくことになりました。

この夏の7月以降、たまたまある方とお話する機会が増えました。
自分は休職中でヒマでしたので、相手の話を時間を取って聞く余裕があったため、
あるきっかけから、1日1時間とか2時間だとかの時間を取って話を聞くというのが
7月以降の日課のようなものになりました。
相手の方も休職中でしたので、お互いに時間があるような状態。
そうこうしているうちにほぼ毎日かなり膨大な時間を割くようになり、
1日6時間だとか、かなり長時間に渡ってお話することもあり、
このような生活が夏の終わりまで続くことになりました。
一緒に何かをしたりどこかに出かけたりということは少なく、
コミュニケーションだけでこれだけ膨大な時間を継続するという経験、
ある一人の人の体験や考え方を長時間に渡って聞き続けるという経験は
自分の人生の中では珍しく、その中で様々な気付きを得ることができ、
良い経験になりました。
また、話の流れからときにはものすごく深みのある内容になったり、
少し大げさですが人生観に大きく影響するような気付きを得ることもあり、
自分にとって非常に重要な経験になりました。
これは明確に休職して時間に大きな余裕があったからできた経験で、
改めて「休んでよかったな」と今から振り返って思います。

その一方で、このある方との関わりを通して、自分自身の意外な一面に
気づくことにもなりました。
ずいぶん前の記事で、自分は面白いと思う人や素敵な人に出会うと、
たまに精神的に他者に「憑依」してしまうようなところがあるとどこかに
書いた記憶がありますが、今回久しぶりにこの「憑依」が発動しました。
しかし、振り返ればその発動の仕方があまりよくなかったように思います。
自分はどちらかというと他人に干渉されたくない、
その代わりに自分も他者にあまり干渉しないというタイプ。
・・・だと思っていましたが、この夏は意外と他者に対し入れ込んで
干渉的に接してしまう面があるということに気づくことになりました。
とくに8月中旬以降、相手の気持ちを全く考えないまま、かなり干渉的に
振舞ってしまったことは、非常に申し訳なかったなと思っています。
結局夏の終わりにはお互いに仕事を始めることが決まり、
それ以降は長時間に渡ってお話をする機会はなくなりました。
この夏の間、関わって頂いた方へ。
口頭やメールでは既にお伝えしていることですが、
もしかしたらここを見ておられるかもしれませんので、
改めて感謝の気持ちをここに書き留めておきたいと思います。
本当にありがとう。

その他、この夏の終わりには非常にお世話になった方が急逝されました。
自分が大変だったときに助けて頂いた方。
最後にお会いしたのは2008年でしたので、7年もお会いしていなかったことに
気付いてのお別れでした。
天国におられる方に対しても、改めてここに感謝の気持ちを書き留めて
おきたいと思います。
本当にありがとうございました。

ということで、この夏の終わりは色々と思い出深いです。
ただでさえ自分は夏の終わりは感傷的になりやすい(これも前にどこかに
書いたと思います)のに、とりわけこの夏の終わりは印象的です。
ちょうどヴォルフガング・ティルマンスの特集展示を見た前後の出来事ですので、
ティルマンスの作品を見ると、今後はこの夏の終わりの思い出がリンクして
思い出されてきそうです。


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引っ越しについて。

自分の再就職先は河内方面の企業です。
大阪の河内地区は大きく北河内・中河内・南河内に分かれます。
自分はこの中の南河内で生まれ育ち、大学卒業とともに泉州方面に転居し
泉州でおよそ15年間を過ごしました。
今回の再就職に伴い、自分は中河内に引っ越すことになりました。

自分にとっては15年ぶりの引越しです。
住み慣れた泉州を離れるのは寂しく、とくに海が近い(歩いて5分で海に辿り着く)
という環境が個人的に好きだったのですが、泉州から次の会社に通うには
時間がかかりすぎるので、
やはり引っ越すことに決めました。
どうせなら今までと全く違う環境の都市に住みたいなと思い、
あれこれ探した結果、中河内といってもほとんど大阪市に近い場所、
難波まで電車で10分という町に引っ越すことに決めました。
郊外から都市過密地帯への引越しということになります。

引っ越しに当たりあれこれと身辺の整理をしました。
不要なものはできるだけ廃棄する。
引っ越しの荷物を減らすため、膨大な本の棚卸も実施することにしました。
不要な本を分別し、100冊くらいを洗い出し、BOOK OFFに売却。
・・・ですが、100冊売っても1000円くらいにしかなりませんでした。
値付けすらできない本が多く、値付け可能な本も明細を見てみると、
ほとんどが5円という金額、安いなあ。
そんな中、10年以上前に買った官能小説やらアダルトコミックやらも、
もういらないので今回一括して売却したのですが、これらはどれも70円とか
100円とか、意外なほど高額な値付けがされています。なぜなのだろう・・・。
これらの「内緒で読む」本は、高く売れるということなのでしょうか。
90年代だとかの古い本なのに、不思議ですね。
もしかしたらこれらの本はクローゼットの奥の奥にこっそりと保管された状態で
長らく読まれていなかったので、保存状態がよく、日焼けなどもなく、
本が綺麗だったからなのかもしれませんが。

その他、自分は早めに再就職をしたので、再就職手当ということで
ハローワークから2ヶ月分の失業手当を余分にもらうことができ、
このお金を引っ越しに充てることにしました。
今回は某大手引越センター(A社)に依頼したのですが、これがすごい。
見積りが早い、電話したら次の日にやってきて部屋を数分見て見積り終了、
段ボールの配送などの手際が良い、そして引っ越し当日の作業も早い早い・・・。
夕方16時からの作業ということで「当日中に終わるんかいな」と思っていましたが、
大量の本とCDと図録が梱包された重たいダンボールたちをあっという間に
トラックに積み込み、全部で30分ほどで積み込み完了、
迅速にトラックを移動し、
瞬時にして新居に荷物の搬入を完了させました。
なんと手際の良いことか・・・。
引っ越しがこんなに楽なのだということにびっくり、
まあそれなりにお金はかかりましたが。
その他、前のアパートは1階にコインランドリーが据え付けられていましたので
洗濯機は不要だったのですが、新しいアパートにはそんなものはありません。
なので今回は奮発して小型の全自動洗濯乾燥機を購入、
これがまた使ってみて非常に便利、これはすごい!楽すぎる!
さらにカーテンやカーペットも買い替え、部屋がきれいになり、
雇用保険のおかげで生活の質が向上することになりました。
ひょっとしたらこれも退職してよかったことなのかもしれません。
ちなみに一度も転職を行わなかった人は、雇用保険はどうなるんだろう・・・?

ということで、現在自分はほぼ大阪市との境目に近い中河内の街に
住んでいます。
近くには近鉄線の最寄り駅と大阪市営地下鉄の最寄り駅があり、
難波まで約10分なので非常に便利。
阪神線と近鉄奈良線が現在相互乗り入れになっていますので、
兵庫県立美術館も奈良国立博物館も、乗り換えなしで1本で辿り着けます。
これは便利。
今まで難波に出るまで何やかんやで1時間近くかかっていましたので、
そう考えると非常に便利な街です。
家の付近はいかにも下町といった雰囲気で、アパートの周辺には小さな
町工場が立ち並び、少し歩くと商店街がたくさん。
自分が今まで住んでいた泉州も南河内も、郊外の住宅地としての側面が大きく、
住宅地からバイパスを車で抜けて大型のショッピングモールに買い物に行く
というのが標準的なライフスタイルでしたので、
商店街が機能しているというのが何やら珍しいです。
お店がたくさんあるので、散歩していると楽しい。
自宅から歩いて数分のところに銭湯があるというのも、
今までの郊外住宅地にはないパターンです。
この銭湯にもときどき入りに行っているのですが、
50歳くらいの「まだいけそうな」お姉さんが番台にいて受付をしてくれ、
この方が普通に男性の脱衣場や浴場に出入りしているのも、
こういった下町の銭湯ならではの風景なのでしょうか。
(これはひょっとしたら年配の男性客を喜ばせる効果があるのでしょうか??)
他にもディープスポットなどもたくさんありそうで、
当面は街の散策が面白そうです。

その一方で、都市過密地帯ですので車道は狭く、一通がやたらと多くて
ややこしく、幹線道路も非常に混雑していて、車での移動が本当に不便です。
さらに駐車場代も高い(泉州地方の倍近くします)ので、もう車は
不要なのではないかとも思いますが、
実家(南河内)に帰るときなど車がないと
不便ですので、なかなか悩ましいです。
スーパーその他の店舗の棚と棚の距離も、
泉州方面ののショッピングモールに比べると狭い狭い・・・。
そのくせ店内には人が多い。
自転車に乗っている方が多く、そして多くの自転車は犯罪的に運転が酷い(笑)。
全体的に「とにかく狭い」感じの街で、暮らしていくうちにいろいろと不便な点も
見えてきそうです。

ということで、便利さと窮屈さが混じり合う町で当面暮らしていくことになりますが、
それでもこの狭隘な感じは、なんとなく自分に向いている気もし
現在のところはかなり高感度の高い地域で、暮らしていくのが楽しみです。
個人的に1つだけ残念なのは、海が見えないこと。
まあ、こればかりは仕方がないですね。