交流分析⑤ 脚本分析 | れぽれろのブログ

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交流分析について自分の考えや経験などをまとめてみようシリーズ、第5回。
今回は脚本分析について書いたあと、少しまとめ的な文章を書いてみます。

シリーズ全体のメニューは以下のとおり。
 (1)構造分析(エゴグラム)  → [交流分析①]
 (2)交流(ストローク)  → [交流分析②]
 (3)対話分析  → [交流分析③]
 (4)ゲーム分析  → [交流分析④]
 (5)時間の構造化  → [交流分析④]
 (6)脚本分析(ストーリー)

今回は(6)のお話です。

※この記事は交流分析を学問的にまとめたものではなく、
  自分なりの交流分析の理解と実践を書き留めたものです。
  学問的な厳密さからすると誤りを含む可能性もありますので、
  正しく理解されたい方は専門書を当たってください。


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◎脚本分析

脚本分析とは、人の人生を一つの物語のように見立てて、
その筋書きから、その人の人生の「脚本」(ストーリー)を分析し、
人生を改善していくという手法です。

「脚本」は、以下のように定義されます。
 「脚本」とは、人生の早期に親の影響のもとに発達し、
 現在も進行中のプログラムである。
 それは、人生の最も重要な局面で、
 いかにどう行動すべきかを指図するものである。

これだけでは少し分かりにくいと思います。
要するに、自分の「心の中のある指針」が人生の幼少期に確立されてしまう、
というようなことだと理解して大きく間違いはないと思います。
「脚本」とは、このような「心の中のある指針」のことです。
そして、人生の様々な局面、とくに何かを決定したり判断したりするときに、
この「心の中にある指針」が随時顔を出してしまいます。

一般に「脚本」は4歳までにその要点が決まり、
7歳までに完成してしまうのだそうです。
交流分析では、自らの「脚本」に縛られて生きるのではなく、
過去の「脚本」から脱却して新たな「脚本」に書き換え、
新たな道を切り開くという手法が取られます。


具体的には、以下のような質問を元に物語を考えてみて、「脚本」を分析します。

・あなたの人生はいつ始まったか?
・あなたの人生にタイトルを付けるとどうなるか?
・あなたの人生のメインテーマは何か?
・あなたの人生は喜劇か悲劇か?
・あなたの人生の筋書きは親が決めたものか?自分で決めたものか?
・あなたの人生はどのように終わるか?(どのような死に方をするか?)
・あなたの人生はハッピーエンドか?バッドエンドか?

このような物語を考えてみることにより、自らの「脚本」を分析します。
そしてこの物語を再構築することにより、「脚本」を書き換えることを試みます。


自分なりに解釈すると、脚本分析は要するに自己啓発の手法です。
個人で実践するには難しく、カウンセラーとともに実施するものだと思います。
また、精神科などの臨床の場でも効果があるのかもしれません。

脚本分析はある種の有効な手法なのだと思いますが、
個人的には実践が大変で、深く追求することは
より心の重荷になるのではないかと思います。


自分に置き換えて考えてみると、自分は割と面倒くさがりなところがあるので、
人生のある局面で努力や頑張りが必要な状況に陥ったときに、
「別にいいか」「どうでもいいか」という形で、対処を留保したり
問題解決を放棄するする傾向があることが自分なりに理解できています。
また、「考えないようにする」ということもよく行います。
このあたり、よく言えばストレスを避けるための「脚本」なのだと思いますが、
悪く言えば現実逃避的で、人生をより実りあるものにすることが
できないでいるという面もありそうです。

あまりにも自己否定的な「脚本」は、臨床の場などで書き換えられる必要があると
考えますが、一般的には、昨年「ありのまま」という言葉が流行りましたが、
このような「ありのまま」の方がラクに生きることができ、
苦しみからは遠ざかるのではないかと思います。


◎否定的なメッセージ

「脚本」の中でも、否定的な「脚本」については、やはり改善されるべきです。
交流分析では以下のような12の否定的なメッセージがあげられています。

・存在してはいけない
・男の子(女の子)であってはいけない
・子供であってはいけない
・成長してはいけない
・成功してはいけない
・何もしてはいけない
・重要な人になってはいけない
・所属してはけない
・愛してはいけない、信用してはいけない
・健康であってはいけない、正気であってはいけない
・考えてはいけない
・自然に感じてはいけない

このような「脚本」を心に持たれている人はいないでしょうか?
無意識のうちに親やその他の他者からこのようなメッセージを植え付けられた
人は、生涯に渡りこのような「脚本」に従い生きることになりがちです。
逆に考えると、我々はこのような12のメッセージの逆を生きればよいのです。
我々は無条件に存在してよいし、成長・成功し、他者と交流し所属し、
健康で生きていても良いのです。
しかし、このような否定的なメッセージを心に植え付けられてしまった人が
心の状態の書き換えを個人で実践することは、これまた難しいと思いますので、
このことについても臨床の場やカウンセリングで
「脚本」を書き換えていくことが必要となります。


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◎総論

5回にわたり交流分析についてあれこれと書いてきました。

前回までの記事についておさらいすると・・・

・人の心の中に5つの自我状態のモデルを想定することができる。
・5つの自我状態の偏りの度合い(エゴグラム)から、
 その人の思考パター・行動パターンを推定することができる。
・5つの自我状態はどれも大切な要素で、どれが良いとか悪いということはない。
・個々人のエゴグラムのパターンは後天的に身に付けられたものであり、
 後天的に書き換えることができる。
・人生の苦しみに対処するには、AとFCの要素を高めるよう
 意識してみることが重要。

・ストロークの欲求は人の人生の重要な部分を占める。
・陰性ストロークを求める人の背後には陽性ストロークの不足がある。
・条件付きストロークの積み重ねはいずれ問題を露呈させる。
・ストロークを通した心理分析は社会分析にも応用できる。
・無条件の陽性ストロークを得られる関係性を構築するには、
 自ら他者を無条件に承認する以外にはない。 

・交流は3つの自我状態をモデルにして解析することができる。
・交流には相補交流と交差交流があり、
 相補交流は快、交差交流は不快な印象をもたらす。
・交差交流を避けるにはP→Cの自我状態へのメッセージに対し、
 同じようにP→Cの自我状態にメッセージを送ることは避ける。
・交差交流を避けるにはAの自我状態で対話をするよう心掛ける。

・人は3つの欲求をもって生きている。(ストローク、時間の構造化、構え)
・人には6パターン時間の使い方がある。(閉鎖、儀式、雑談、活動、ゲーム、親密)
・ゲームとは、不快感を残すコミュニケーションのパターンである。
・人はある「構え」を持っており、これを証明するために無為な時間を
 消費しがちである。
・苦しみを回避するには、時間を構造化し、ゲームを回避し、
 構えを捨てることが大切である。

このあたりが交流分析のポイントなのではないかと自分は考えます。


一般に心理分析などでは、「なぜこのような状態であるのか」という
原因分析が重要視される傾向にあるように思います。
「あなたがこのような性格なのは、実は幼少期にこのような体験があったからだ」
などといった感じで、幼少期の記憶などを遡って解析したりします。
自分はこのような手法にはやや違和を感じることがあります。
原因分析をしてどうなるのでしょうか?
過去の経験によって自己が形作られているのは紛れもない事実です。
しかしその原因を明らかにすることは、さほど意味のあることではないと考えます。
トラウマがトラウマであることが分かっても、これから先の人生に対しては、
プラスに働きません。

また、よりよい人生を提示し、その人生に向けて自己マインドを改造していくという
自己啓発的な心理分析の手法もあります。
交流分析でもこのような傾向のきらいはないことはないですが(とくに脚本分析)
一般の人にとって見れば、このような手法も敷居が高い気がします。
また、人はどんな状況になっても不安は残りますし、
完全な幸福などというものも、求めても得られないものです。

過去を遡ることも、無理な目標を持つことも、かえって苦しみを誘発するだけだと
自分は考えます。
重要なことは、過去にこだわらず、現在の自分のパフォーマンス(能力)と
問題点を把握し、無理な目標ではなく、小さくても良いので達成することが
幸せに繋がるような目標を設定し、
それに向かって行動を起こしてみることです。

交流分析は自己の能力と問題点の把握と自分なりの目標設定に対し
示唆を与えてくれるように思います。
心の構造分析でいうAとFC重視する生き方と対話。
時間を構造化して「構え」を捨て、陽性のストローク交換をすること。
どんな目標を持つにしても、まずはこのあたりが幸せのための
必要条件なのではないかと自分は考えます。