根津美術館 | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

5/9の土曜日、東京の根津美術館に行ってきました。

5/8は久しぶりに週末の東京出張となりました。
自分は年に何度か東京出張になるのですが、
金曜日に出張になったのはずいぶん久しぶりです。
調べてみると2012年の秋以来(このときは一泊して三菱一号館美術館と
損保ジャパン東郷青児美術館に立ち寄りました)です。
8日は夜まで仕事だったので、一泊したあとの9日の土曜日に
美術館に寄ってから帰ることにしました。

今回はどこに行こうかちょっと迷いました。
自分の好きな恵比寿の東京都写真美術館は現在改装中でお休み、
マグリット展やルーヴル展は京都に巡回しますので、
今東京で見る理由もありません。
東京都現代美術館は一度ぜひ行ってみたいのですが、
ここで開催されている「他人の時間」も大阪の国立国際美術館に巡回予定。
山種美術館にも行ってみたいのですが、ここはやはり速水御舟の「炎舞」が
展示されるタイミングで立ち寄りたいです。

あれこれ探していると、根津美術館という自分があまり知らない美術館で
琳派の特殊展示をやっています。
なんと尾形光琳の超有名な「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」が
同時に展示されているのだとか。
国宝2つの同時展示、これは珍しいということで、
根津美術館に行くことにしました。
どんな美術館なんだろう・・・。

8日は品川近辺のホテルで1泊しましたので、
9日は朝から山手線で品川から渋谷へ。
渋谷駅の東側から、青山通りを通って表参道の方に向かい、
根津美術館まで歩くことにします。
過去記事でも何度か書きましたが、東京は道が分かりにくく、
そして坂が多いです。
大阪や京都の中心は比較的道路が南北に整然と区画されていますが、
東京は道がくねくね。
そして渋谷から東にかけて、いきなり上町断層レベル(←お分かりでしょうか?)
の上り坂です。

メトロ表参道駅の交差点を右折すると、
お洒落なブランドもののお店が並んでいます。
奇抜な建物に並んで、根津美術館がありました。
結構人通りが多く、みんなお洒落なお店にお買い物に行くのかなと
思っていましたが、意外とみなさん根津美術館に入ってきます。
やはり琳派の大展覧会ということで、楽しみにされている方も多いようです。

ということで、以下展示の覚書など。


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今回は「燕子花と紅白梅」というタイトルで
尾形光琳300年忌の特別展という形での展示でした。
光琳を中心とした琳派の屏風絵や工芸品などの作品がメインの展示ですが、
一部(なぜか)古代中国は殷周時代の青銅器も合わせて展示されていました。
なかなか面白い組み合わせの展示ですね。


まず、いきなり最初の展示部屋に、「燕子花図屏風」と「紅白梅図屏風」が
どどーんと展示されています。
京都国立博物館なら最初の部屋には展示されず、
きっと東側の大部屋(←お分かりでしょうか?)に展示しそうです。
いきなりメインディッシュ登場、屏風の前は人だらけ。
こういう混雑する展示は入り口付近で人が団子状態になる傾向になるので、
大変です。
人の頭越しに燕子花と紅白梅を鑑賞しました。

燕子花図は、お花の1個1個の簡潔な描写と全体の配置が良いです。
細部を観察する作品ではなく、どちらかというと全体を俯瞰して
デザイン的に楽しむ作品だと思います。
コピペみたいな燕子花たち。
全く同じ形状の花の並びもあるので、本当に手動コピペで描かれているようです。

燕子花図は光琳の若いころの作品ですが、紅白梅図の方は晩年の作品。
こちらは全体のデザインはもちろん、細部の描写も楽しいです。
黒い川のマーブリング。
そして木の幹に細かい白い花のポチポチがあります。
この小さい白い花は意外と小さい画集では気づかない部分、
生で見る驚きと楽しさ。
しかしやはりこの紅白梅図はやはり木と川の配置とバランス、
川が形作る曲線と枝の微妙なくねり具合の重なり、デザイン性が素敵ですね。

この他、屏風で面白かったのが、「蔦の細道図屏風」です。
大胆な画面割り、緩いカーブが形作る丘の描写、
そして特定の丘と丘の間にだけ、蔦が描かれています。
これが何とも奇抜で楽しいですね。

これらの屏風絵の他は、細かい工芸品などが展示されていました。
全体を通してやはり琳派はデザイン重視、作品1点1点の装飾についても、
細部の面白さよりも
全体をパッと見たときの配置とバランスがとくに素敵ですね。
とくに印象に残ったのが包み紙のデザイン。
箱を包んだときに見える部分のデザイン、紙を開いたときの全体のデザイン、
どちらも面白く見えるように、デザインが工夫されていいます。

個人的に気に入ったのは光琳の描いた下絵のシリーズです。
「小西家文書」として保存されている下絵の数々。
おそらくは工芸品の元絵であると思われる様々なデザイン。
「図案小品集」「鹿図印籠下絵」(どちらも重要文化財)など、
カードにして持ち歩きたくなるような可愛らしい図案です。
サラッと描かれたイラストが良いですね。


日本の美術は全体的に装飾の要素が強く、作家の内面の表出であるとか、
写実などの方法論だとか、物語的・象徴的な要素であるとか、
そういった内容よりも全体的にデザイン重視の傾向にあると思います。
その中でもとくに琳派は際立ってデザイン的な要素が強いように思います。
画面配置・構図・装飾の要素がメイン。
洗練された上級町人の美という感じがしますね。
美術作品に何を求めるかで、琳派の感想は異なってくることだと思いますが、
個人的にはすごく面白く、楽しめました。

この秋には京都国立博物館でも琳派の特殊展示が行われるらしく、
こちらは俵屋宗達や本阿弥光悦も登場するようで、楽しみですね。


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合わせて、殷周時代の青銅器も展示されていました。
こちらは琳派的な洗練とは真逆の世界。
殷の時代の青銅器は、壺だとか動物をかたどったものなど、いろんな種類が
ありますが、全体的にどの作品もゴテゴテの装飾模様が付いています。
青銅器の表面に、無駄に顔だとか角だとか、
デコボコの模様がぼこぼこと取り付けられています。
これが何とも面白いです。
近代的な視点からみると、製作者の感情表出とも取れそうですが、
単にこういう表現が当時は普通だったのかもしれません。

周の時代の作品にもやはりゴテゴテ模様が付いてますが、
殷の時代に比べるとやや様式的になり、マニエリスム的な感じに変わってきます。
周の方がサラッとしている感じ。
さらに春秋時代になると、なおのこと大人しげな作品であるように見えます。

琳派の作品と殷周時代の青銅器を並べることにより、
デザインとは、装飾とは何かと考えてしまいます。
どちらが好みかは人それぞれだと思いますが、
自分は意外と殷周時代のゴテゴテ感も気に入りました。
まあ、部屋に飾るなら断然光琳の方が良いとは思いますが・・・笑。


ということで、面白い展示でした。
そんなに広くない美術館(にしては人が多すぎましたが)ですが、
展示は面白くて満足しました。


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<おまけ>

せっかく東京に来たので、根津美術館付近をあてもなくウロウロしてきました。
その覚え書きなど。


・西麻布

表参道から南へ向かって歩くと西麻布。
道は結構入り組んでおり、ウロウロするのが楽しいです。
外苑西通りを南に向かって歩き、脇道にそれると公園がありました。


・有栖川宮記念公園

有栖川宮記念公園は比較的広い公園で、都会の中に森がある、
といった感じです。
園内の看板によるとこの公園には様々な野鳥が住んでいるらしく、
食物連鎖ピラミッドの頂点にはなんと鷹がいます。
都会の森に鷹が住むなんてすごいですね。
東京は明治神宮といい、都市過密地帯に大自然スポットがあるのが
面白いですね。


・東京都立中央図書館

公園内には図書館がありました。
大阪で言うと、大阪府立中之島中央図書館みたいなものでしょうか。
しかし、中之島図書館のような古い趣きのある建物ではなく、
外観は普通で新しい建物のようです。
鞄を持って入ることができないらしく、
このあたりも中之島図書館に似ていますね。
図書館は好きなので、館内をウロウロしていると、
つい時間が経ってしまいました。


・南麻布

図書館を出て南麻布方面へ。
この近辺の道行く人は外人さんばかりです。
観光客かなと思いましたが、さにあらず。
どうもこの地域に住んでいる人たちのようです。
あちこち歩き回ると、この近辺に各国の大使館がずらりと並んでいます。
外国の方向けの何やら不思議な形状の集合住宅もあります。
南麻布ってこういう地域なんですね。

ブラブラしていると可愛らしい白人のお子様に名刺を頂きました。
自分はビラ配りなど基本的に受け取らない方なのですが、
物珍しさもあってつい受け取ってしまいました。
英語で書かれた名刺で、後で調べてみると外国の方が経営している
ヘアサロンの名刺のようです。
子供が配るって珍しいですね・・・ってこれ男の子に渡してどないするんや(笑)。
相手を見て配らなあかんよ、と思いました。


・天現寺発って・・・

気が付くと首都高の天現寺入口付近まで歩いてきてしまいました。
「天現寺発って今日は房総半島へ♪」(入水願い/東京事変)
でお馴染みの(?)あの天現寺入口です。
しかし「あたしを殺してそれからちゃんと一人で死ねる」・・・気はしないので、
引き返すことにします(笑)。

ということで、個人的にお馴染みのスポット:恵比寿(東京都写真美術館がある)
まで引き返し、山手線に乗って品川まで帰りました。
東京は名所を巡るのも良いですが、名所以外の道を単に歩いているだけでも
面白いですね。