交流分析① 心の構造分析 | れぽれろのブログ

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先月は統一地方選がありました。
選挙のときには社会的な記事を書くというのが、このブログのいつからかの
お約束だったのですが、先月は春の陽気で旅行に行ったりあちこちフラフラと
出かけたりしていたので、そういう記事ばかり書いておりました。
今回も一応社会的な記事というか、そういうものも準備していましたので、
せっかくなので記事化しておくことにします。
ご興味のある方はお付き合いください。

余談ですが、今回の統一地方選は投票所に実に人が少なかったという
印象を持ちました。
自分はだいたい朝9時だとか10時だとかの早めの時間に投票するのですが、
早い時間でも最近の国政選挙のときにはまだそれなりに人がいました。
今回の統一地方選は朝だと本当に投票所に人が少なく、
受付で全く並ばずに投票することができました。
とくに自分と同年代以下(30代・20代)の姿がぜんぜん見えません。
現在は昔に比べて中央政府の力が弱くなってきていると思いますので、
実は地方自治体の権限が相対的に強化される方向になっきており、
地方選挙の重要性はかつてより増してきています。
なので、地方自治についての関心がこんなに薄くて良いのかという気が
しないでもありません。


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さて、今回は「交流分析」について何本かの記事を書いてみようと思います。
交流分析はエリック・バーンというカナダの心理学者により提唱された
心理学理論です。
現在、精神科の臨床の場やカウンセリング、企業研修などの自己啓発の場で
採用され、応用されている理論です。

自分は中学生から高校生くらいのとき、対人関係(とくに親との関係)が
うまく行かず、どうすれば他者とちゃんとコミュニケーションできるのかと
悩んでいた時期がありました。
そのときにたまたま手にしたのが、講談社のブルーバックスシリーズから
出版されていた、芦原睦「自分がわかる心理テスト」という
交流分析に関する書籍。
読んだのは高校生になってすぐのころ。
本のタイトルからして、よくあるお手軽な心理テストで、自己の性格や他者との
相性などが分かるだとか、そんな本と思っていましたが、
内容をしっかり読んでみるとさにあらず。
心の状態をどうとらえることができるか、コミュニケーションとは何かに始まり、
生きるとはどういうことかということまでカバーする、なかなか壮大な本なのです。
この本は高校時代を通して割と何度も読み返し、今でもこの本の基本的な
考え方は、自分に染み付いていたりするのです。

この本は今でも入手可能で、読むことができるようです。
・自分がわかる心理テスト/芦原睦 (講談社ブルーバックス)
  →  [Amazonのリンク]

このブログの隠れたテーマ(?)の1つが、「人生は一切皆苦であり、
個々人の苦しみを緩和するためには社会設計が必要なのだ」という考え方です。
交流分析は、他者との関係性から生じる苦しみや、なぜ生きるのかということに
ついての苦しみを緩和するのに対し、それなりに有用なツールであると感じます。

交流分析の書籍はたくさんありますし、今の時代はまとめサイトのようなものも
あるので、交流分析の概略に触れることは比較的簡単だと思いますが、
内容が専門的だったり、要点のみの記載であったりして意外とわかりにくく、
どのように実践したらよいのかについて理解するのはそれなりに難しいと
思います。
だったら自分で書いてみよう、というのが今回の記事の目的です。
交流分析について、自分はこうとらえている、自分はこのように
実践してきたということを、少し書いてみようと思います。

自分の記事は交流分析を学問的にまとめたものではなく、交流分析について
自分はどのように理解し、何をどう実践してきて、結果どういうだったのかと
いうことをまとめたもたものです。
個人の主観が大きく含まれていますし、学問的な厳密さからすると誤りを
含んでいる可能性もあるので、このあたりについてはご注意をお願い致します。
交流分析について正しく理解したいという方は、必ず専門書を当たってください。
上記の「自分がわかる心理テスト」は平易な内容で中学生でも読める本です。
23年も前の本なので、今読むと少し時代にそぐわない表記などもあると
思いますが、その分を差し引いてもお薦めできる本です。


前置きが長くなりましたが、これ以降が本文になります。


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◎交流分析とは

上にも書きましたが、交流分析はカナダの心理学者により提唱され、
精神科の臨床の場やカウンセリング、企業研修などの自己啓発の場で採用され、
応用されている心理学理論です。

交流分析の要点を自分なりに箇条書きにすると、以下のとおりになります。

 (1)構造分析(エゴグラム)
 (2)交流(ストローク)
 (3)対話分析
 (4)ゲーム分析
 (5)時間の構造化
 (6)脚本分析(ストーリー)

(1)(2)は交流分析のベースとなる重要な概念です。
(3)(5)は個人で実践する場合でも応用しやすく、有用な考え方だと感じます。
(4)は少し専門的な内容になります。
(6)は個人で実践するには少し難しいと思います。

自分の記事では、(1)(2)(3)(5)について自分の考えなどをまとめ、
(4)(6)については少し触れる程度にしたいと思います。


◎エゴグラム

エゴグラムという言葉は割と有名で、お聞きになったことのある方も
おられると思います。
エゴグラムについては分かりやすく分析できるページがいくつかあります。
以下のページが最も分かりやすいと思います。

・エゴグラムによる性格診断
http://www.egogram-f.jp/seikaku/

お時間のある方は、この性格分析を実践してみてください。
どのような結果になったでしょうか・・・?


◎心の構造分析(心の中の5つの状態)

交流分析では、誰でも心の中に大きく3つの自我状態があると規定されます。
3つの自我状態は、「P」「A」「C」に分けられます。

 P・・・親の自我状態(Parent)
 A・・・大人の自我状態(Adult)
 C・・・子供の自我状態(Child)

それぞれの自我状態は、心の状態を構成している要素です。
性格というよりも、思考パターン・行動パターンと考えるとよいと思います。


さらに「P」は「CP」と「NP」に分けられ、「C」は「FC」と「AC」に分けられます。

 CP・・・批判的な親の自我状態(Critical Parent)
 NP・・・養護的な親の自我状態(Nurturing Parent)
 A・・・大人の自我状態(Adult)
 FC・・・自由奔放な子供の自我状態(Free Child)
 AC・・・順応した子供の自我状態(Adapted Child)


それぞれの自我状態のどの要素がよくどの要素が悪いということはありません。
それぞれのどの状態にも長所と短所があります。

それぞれの特徴をキーワードで書くと、以下のようなイメージになります。

・CP
理想、目標、道徳的、倫理感、厳格、責任感、リーダーシップ、秩序、管理、
頑固、批判的、支配的、威圧的、独断、排他的、偏見
イメージは父親です。
リーダーや管理職になるために必要な要素と考えると分かりやすいと思います。

・NP
親切、温かみ、思いやり、守る、育てる、尽くす、愛情、受容、同情、
お節介、過干渉、甘やかし、過保護、押しつけがましい
イメージは母親です。
保母さんや看護婦さんになるために必要な要素と考えると分かりやすいと
思います。

・A
分析的、客観的、事実重視、計算、工夫、理性的、合理的、冷静、現実的、
冷たい、無味乾燥、非情緒的、打算的、機械的
イメージは理性的な成人です。
学者や研究者になるために必要な要素と考えると分かりやすいと思います。

・FC
自由奔放、明朗快活、多趣味、創造力、空想力、遊び心、ユーモア、好奇心、
気まぐれ、わがまま、自己中心的、幼い、感情的、傍若無人
イメージはやんちゃ坊主です。
エンターテイナーになるために必要な要素と考えると分かりやすいと思います。

・AC
協調性、従順、慎重、妥協、我慢、
依存的、自責的、ひねくれ
イメージはいい子ぶりっ子です。
良き部下やサポーターになるために必要な要素と考えると分かりやすいと
思います。


一般にCP・NP・ACが高すぎるとストレスが溜まりやすく、
神経症や心身症になりやすいと言われるようです。
CPが高すぎるとイライラしそうです。
NPが高すぎると他者に献身的になりすぎ体調を崩してしまいそうです。
ACが高すぎると自責的になり、精神的負荷が高くなりそうです。
AとFCはストレスとはあまり縁がなく、これらの要素を高めるよう心掛けると
心身症や神経症が改善されると言われます。


エゴグラムでACが高い人、あるいはNPとACが高い人(N型のグラフになる)は、
「自分NG、他人OK」という状態になりがちです。
CPが高い人、あるいはCPとFCが高い人(逆N型のグラフになる)は、
「自分OK、他人NG」という状態になりがちです。
CPとACが高い人(V型のグラフになる)は、
「自分NG、他人NG」という状態になりがちで、
さらにAも高い人(W型のグラフになる)は理性的な分苦悩が深いようです。
一般にNP・A・FCが高く、CPとFCが少し低いくらい(山型のグラフになる)が、
「自分OK、他人OK」という状態になり、理想的なのだとか。


繰り返しになりますが、どの自我状態が悪いとか良いとかいうことはありません。
CPが低い人ばかりだと秩序的な社会・組織は成り立ちません。
ACが低い人ばかりだと協調的な社会・組織にはならず、組織が機能しません。
Aだけが高い人ばかりだと無味乾燥な社会になりそうです。
FCだけが高い人ばかりだと社会は崩壊しそうです。


◎心の構造分析についての自分なりの理解と実践

人間は、初期条件(遺伝情報)と環境条件(生育環境)ですべてが決まると
自分は考えます。
エゴグラムのパターン、心の中の5つの自我状態のどの要素が強いのかは、
おそらく環境条件により決まる要素なのではないかと思います。

いわゆる頭の良さというのは遺伝情報(脳のキャパシティや処理能力)で決まり、
これは後から変えることは難しい。
もちろん脳を鍛えると後天的に頭がよくなるということもあるとは思いますが、
おそらく限界があります。

一方、自我状態の傾向は、生育環境で決まってくるものだと思います。
エゴグラム分析による5つの自我状態の傾向は、現在のその人の
思考パターン・行動パターンを表しています。
これは生まれもっての性格のようなものではなく、自らの自我状態の構造を
理解することで、書き換えることができるものです。

初めて自分がこのエゴグラムに触れたとき、自分のエゴグラムパターンは
全体的にどの要素もすごく低かったように記憶しています。
要するに自我状態が無感動・無目的なのんびり屋さんだったのです。
これなら生きていても楽しくないし、社会を生きていくにはきっと生き辛い。

改めて自分の書いているブログを自己分析してみると、
このブログはほとんどAとFCの要素のみでできていることに気づかされます。
これは元々の自分の特性というよりは、交流分析から自然に身に付いた
行為態度なのだと思います。
対話分析のところでまた登場してくると思いますが、AとFCを重視して
人付き合いを行うと、うまくいくことが多いです。
このことが交流分析を通して経験的に分かっているので、
自分はいつの間にかそういう特性になってきているのではないかと推測します。
しかし、他者と深く関わるには、当然CP・NP・ACの要素も必要になってきます。
自分は比較的誰とでもすぐに仲良しになれますが、
ある一定以上の深い付き合いにまで至ることは非常に稀です。
これはA・FCに比べ、CP・NP・ACの要素が相対体に不足しているからだと
推測します。

大人になって仕事をしていると(仕事にもよりますが)CPやAが高まってきます。
自分も仕事を始めてからたぶんずいぶんCPが高くなったと振り返って思います。
自分は普段はのんびり屋さんですが、仕事中はいつもすごく
イライラしていることが多いです(笑)。
よく考えると上記の「投票所に人が少ない!」というのも、Aの自我状態から冷静に
書いているように見えて、心の奥ではきっとCPの働きがあるのだと思います。
一般的に年を取るとCP・NPが高くなっていくのだそうです。


◎苦しみへの対処

心の構造分析(エゴグラム)からは様々な実践が可能ですが、
とりあえず「苦しみの緩和」という観点から見ると、
AとFCの要素を高めるよう心がけてみると、ストレスが溜まりにくくなり、
生きやすくなるのではと考えます。

交流分析の本などでは、具体的な方法としては以下が挙げられています。

・Aを高めるには
 考えを整理し文章化する。
 感情より客観的事実を重視する。
 規則やパターンがないか考えてみる。
 他者ならどう考えどう行動するか考えてみる。

・FCを高めるには
 笑う。
 冗談を言う。
 芸術・娯楽を楽しむ。
 夢中になれる趣味を持つ。


FCを高めるということは、自分なりに解釈すると、人生の苦しさからの逃避です。
逃避というと聞こえが悪いかもしれませんが、人生は苦しみの連続ですので、
苦しみを一時的に忘れることはすごく大切なことです。

FCを高める実践は割とまだ簡単だと思います。
要するに好きなように楽しく生きろと言うことです。
ただし体力的・能力的・経済的事情が個々人にはありますので、
身の丈に合った範囲で楽しみを追求する必要があります。
身の丈に合わない楽しみを追い求めるとかえって苦しみが増えそうです。
FCの実践には、「自分は自分、他人は他人」という考え方がきっと必要です。
そして、趣味をもって楽しそうに生きていると、難しい人・関わりにくい人ではなく、
自然と楽しい人・良い人が寄ってくるものです。


Aを高めるということは、自分なりに解釈すると、人生の苦しさに立ち向かう方法を
習得することです。
苦しいことがやってきたときにオロオロしたり落ち込んだり人のせいにしたり
するのではなく、どう対処するかを分析し手当てすること、
その方法を身に付けることです。

Aを高める実践は難しいです。
考えを整理するにしても、コツがわからないと余計に煩雑になってしまいそうです。
基本的にAを高めることはある程度の素養が必要なので、1人で実践することは
非常に困難で、必ず誰かのサポートが必要になるのだと思います。

1人で実践する方法としては、読書経験を積み重ねるという手段があります。
実際、自分は多くの書籍に触れるということを実践してきました。
多くの人の考え方に、感情や囚われの無い状態で幅広く触れ、
その上で尊敬できる人・いいなと思える人の考え方を身に付け、
「この人ならどう考えるだろうか」というシミュレーションをしてみる。
Aを高めるには必ず他者の目線が必要なので、全くの1人で他者の目線を
獲得するには、おそらく読書経験くらいしかありません。

本を読むことが難しい人もいます。
本を読む以外の実践としては、学校教育・家庭教育の場を除くと、
おそらくは就労経験以外にはないのではないかと思います。
ともに仕事をすることを通じて他者(とくに先輩)と接することにより、
その仕事の仕方・考え方から、論理的な行動と実践のパターンを
身に付けていくいく方法です。
これ以外の方法は、ちょっと自分には分かりません。
しかしとくに現代においては就労こそが苦しみを誘発するストレスの場でも
あるため、なかなか如何ともしがたい難しさがあります。


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◎まとめ

・人の心の中に5つの自我状態のモデルを想定することができる。
・5つの自我状態の偏りの度合い(エゴグラム)から、
 その人の思考パター・行動パターンを推定することができる。
・5つの自我状態はどれも大切な要素で、どれが良いとか悪いということはない。
・個々人のエゴグラムのパターンは後天的に身に付けられたものであり、
 後天的に書き換えることができる。
・人生の苦しみに対処するには、AとFCの要素を高めるよう
 意識してみることが重要。


長くなりましたので今日はこの辺で。
次回はストロークについて書いてみたいと思います。


※くどいようですが、この記事は自分なりの捉え方です。
  交流分析の学問的・専門的な理解とはきっとずれがあることを、
  再度お断りしておきます。