社会を考える -いくつかの論点- | れぽれろのブログ

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選挙期間くらい社会について考えてみようシリーズ。
ちょっと重くて長ったらしい記事が続きましたので、今回は日本社会の
いくつかの論点について、できるだけコンパクトに
自分の考えなどを
書いておきたいと思います。
各問題とも難しい問題で、自分が知らないこともたくさんあり、
主張が偏っている部分もあると思いますが、
ご興味のある方はお読みください。


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◎アベノミクス

アベノミクスは、3つの矢に例えられる経済政策です。

1つめは金融緩和、この政策の結果株価は上昇し円安となりました。
また一部の輸出企業は利益を得、実態はともかく社会の雰囲気は
やや希望的観測に傾いたようにみえます。
ただ、自らに引き付けて考えた場合、多くの人の生活が
本当に改善しているといえるかは疑問です。
株式を所有している人は儲かったようですが、
自分も含め多くの人は株式など所有していません。
円安の影響もあり諸物価が上昇傾向にあるため、
所得の少ない人たちにとっては影響の大きい政策です。
これは給与所得者の賃金が上昇すればある程度解決する問題です。
所得が上がったという情報もありますが、賃金が年齢層を問わず上がっていて
雇用や労働条件も改善しているという
統計をぜひ見てみたいのですが、
どこに行ったら確認できるのかよくわかりません。
トリクルダウンが有効に機能しているのかもよく分かりません。

2つめの財政政策いついては、公共事業などを行っているようですが、
政策としては従来的なもののように見えます。
例えば民主党政権のときの固定価格買取制度のような、エネルギー政策を
兼ねたような将来に向けた対応が行われているのかどうか、よくわかりません。
(ちなみに自分は製造業に勤務していますが、この固定価格買取制度のおかげで
太陽光関連の事業が半ばバブル気味に拡張しており、自分の取引先でも
異様に儲かっている企業があります。
こういったソーシャルデザインと経済効果の両方を兼ねた政策が必要だと
思いますが、現政権で何かこのようなことは行われたのでしょうか?)

3つめの成長戦略については、何もしていないように見えます。

ということで、アベノミクスに対してはよく分からないことが多く、
自分は総じて不満が多いです。
約2年前に書いた関連する記事がありましたので、一応貼っておきます。
http://ameblo.jp/0-leporello/entry-11457553553.html


◎消費税増税

日本は現在、歳入の多くを国債で賄っており、財政の健全化を目指す方向性を
明らかにしないと国債の信用度が低下し、
一気に財政破綻となるリスクを
孕んでおり、「今すぐ破綻」となるわけではないですが、
破綻のリスクは
年々上昇してきていると言って良いと思います。
そのため、諸外国を含む国債所有者に対し、財政の再建に対して
前向きに取り組んでいいるという姿勢を示すことも必要。
みんなが「日本の財政はダメだ」と判断した瞬間、
国債が暴落し財政破綻となります。
もちろん歳出を削減するということも大切ですが、民主党政権のときに
実施された事業仕分けで明らかになったとおり、
多くの歳出は容易には
削減できません。
上記は財務省の見立て(事業仕分けも財務省が主導した)であり、
反論もあるようですが、自分は一定の合理性があり、やはり一定量の増税は
やむを得ないことではないかと考えます。

消費税増税は逆累進的なので、所得が少なく財産もない家庭に大きく影響を
与える政策ですが、日本はそもそも消費税の税率が諸外国に比べて
安い国ですし、
導入が比較的容易でもあると思いますので、
自分はそれなりに妥当な政策であると思います。
ただし、消費税増税に対しては社会保障も含めての改革が必須、
所得が少ない家庭へのケアと必ずセットでなされるべきです。
いわゆる「税と社会保障の一体改革」。
現在の与党は軽減税率を強調していますが、税が複雑化するのは
あまり有効な政策ではないと思います。

増税がアンポピュラーなのは理解できます。
歴代の増税に関連する選挙で、増税を決定した与党側は必ず大敗しています。
(1989年の参院選での自民党、1998年の参院選での自民党、
2012年の衆院選での民主党)
気持ちは分かりますが、ここは後続世代にツケを回すのをやめ、
財政健全化に近づける政策を取るべきであると思います。


◎憲法改正・集団的自衛権

どういう理由かは不明ですが、現政権はやたらと軍事的拡張に対し前向きです。
前回の参院選前は憲法改正を積極的に主張しており、これが無理となると
今度は集団的自衛権を認めるための解釈改憲を宣言することになりました。
正直に言うと、自分には解釈改憲前後で何が変わったのかよく分かりません。
よく引き合いに出される「米国の船に乗った日本人の護衛」についての問題も、
個別的自衛権でなぜ対処できないのかもよくわかりません。
この解釈改憲は誰が推進したがっているのか、現首相のパーソナリティに
起因する問題なのか、何なのかは分かりませんが、
諸外国の顰蹙を買うような火遊びは直ちにやめるべきです。

憲法についてはこちらの記事にも書きました。
http://ameblo.jp/0-leporello/entry-11576241169.html
また、前回の戦争責任の記事でも少し触れましたが、
象徴天皇制や平和憲法は敗戦国日本のリスタートのための手段であり、
戦争責任問題と切っても切れない問題です。
憲法改正や靖国参拝を行いたいのなら、戦争責任についての
諸外国との理解の深め合いがまず先決です。
なお、個人的には少なくとも現行憲法の前文には愛着があるので、
変更は行ってほしくないです。


◎エネルギー政策

現政権は再び原発を重要なベースロード電源だと位置付けたようですが、
これには明確に反対したいです。
世界史に残るレベルの大規模な事故を起こしたこと、
現在でも事故発生時の避難計画が全く立てられていないこと、
核燃料サイクルの目途が何一つ立っていないこと、
廃棄物の最終処分場が決まっていないこと。
現時点で原発が稼働していなくても、それなりに電力は運営できていますので、
リスクの大きいエネルギー事業は、終息に向けて舵を切るべきです。
また、石油エネルギーについても枯渇が懸念されていますし、政治的混乱や
産油国の状況に応じた価格変更が多すぎるというリスクを持っています。

再生可能エネルギー(風力、太陽光、地熱、バイオマスなど)の推進は
非常に重要だと思います。
諸外国でも、欧州を中心に積極的に再生可能エネルギーを推進しています。
WWFは2050年までに再生可能エネルギーで100%の電力を賄うことは
技術的に可能であると発表しています。
上にも書きましたが、固定価格買取制度がもたらした太陽光事業の
急激な拡大は、経済効果をも生み出しています。
さらに日本は火山国であり、地熱発電に有利な面があります。
我々は一昔前からは考えられないくらい進歩した科学技術の下で
生活しています。
人類の技術と意志をもってすれば、再生可能エネルギーで電力を賄う方向に
進むことは不可能ではないのではないかと思います。


◎議員定数削減

現在いくつか出ている論点の中で、最も意味不明な論点が
国会議員定数の削減だと思います。
国会議員の人数が減るということは、経済的な表現を使うなら、
サービスが低下するということです。
国会議員は社会のために働く人間です。
社会のために働く人間をわざわざ減らしてどうするかという気がします。
「身を切る改革」などと主張している人もいますが、
誰の身を切っているのか不明です。
国会議員の人数を維持したまま全議員の給与を一定量下げるだとか、
こういう意味での身を切るというなら意味は分かります。
(これもとくにする必要のないことだと思いますが。)
議員の給与を維持したまま人数だけ減らすのは、
果たして身を切っていると言えるのか疑問です。
そもそも議員の給与など国家財政に比べれば微々たるもの。
実体のないポピュリスティックな議論を連呼するのは考えもの、
もっと他に重要な論点があるはずです。


◎一票の格差是正

個人的にこれは重要な論点だと思います。
民主主義の理念(一人一票)からして、これは絶対に是正されるべき問題です。
前回の参院選の一票の格差は4.77倍と言われています。
一人一票のはずが、事実上4.77票持っている人と1票しか持っていない人が
存在するということです。
これはつまり国会で議員が法案に賛成/反対するときに、最大で4.77分の1の
重みしかない議員であっても、同等の力を持っているということになります。
これだけ差異がある中で政治が行われていることは、理念的に問題です。

現在は主に都心より地方の方が一票が重い傾向にあります。
このため、単に理念的な問題だけではなく、
実際の政策にも影響を与えている面があると思います。
例えば、過密した都市部での交通渋滞よりも、地方都市の道路環境の方が
優先される傾向にあるのは、明らかに一票の開きが背後にある問題であると
思います。
都市には多くの消費者が住んでいます。
我々は(たとえば農業など)生産者の立場で政策を議論しがちですが、
消費者の立場も非常に重要で、消費者の意見が生産者の効率や改善に
つながっていくという面も大きいです。
都市に住む消費者の一票と、地方に住む生産者の一票が拮抗することで、
効率的で互いにメリットのある政策体系が実現できる、
そういう面は必ずあるように思います。
理念と実情の両方の面で、一票の格差問題は重要です。
一票の格差是正に消極的な議員は、自己の権力基盤のことしか
考えていない議員であると言い切ってしまっても良いかもしれません。