懐かしの邦楽アルバム その3 | れぽれろのブログ

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昔好きだった邦楽アルバムの覚書。
少し時間が空きましたが第3回目、
1999年~2001年のアルバム3枚とそのミュージシャンについてのコメントです。

<前回の記事>
・その1 → 
・その2 → 


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・バームクーヘン/↑THE HIGH-LOWS↓

バームクーヘン

音楽に触れるようになる年齢は人によって異なると思いますが、
流行りの音楽などが話題になり始めるのは、
だいたい小学校の高学年くらいからでしょうか。
自分が小学校の5,6年くらいのときに少しブルーハーツが流行っておりまして
自分も「リンダリンダ~♪」とか「トレイントレイン走ってゆく♪」とか
歌っていた記憶があります。
その後中学生~高校生の頃に、ブルーハーツのCDは人から借りて
聴いていたりしていました。
なので、今でもブルーハーツの音楽は歌えますが、CD自体は持っておりません。

ブルーハーツの主要メンバー、ヒロトとマーシーはその後ハイロウズを
結成しますが、自分がヒロトとマーシーの音楽はやっぱりいいなと改めて
思うようになるのは、ハイロウズの中期以降です。
我が家には「Tigermobile」(1996年)、「ロブスター」(1998年)、
「バームクーヘン」(1999年)、「Relaxin' WITH THE HIGH-LOWS」(2000年)、
「HOTEL TIKI-POTO」(2001年)、「angel beetle」(2002年)の
計6枚のアルバムがあります。
(ちなみに、クロマニヨンズは聴けていません。)

ハイロウズの面白さ。
まずはヒロトの声(ブルーハーツの後期から声質が変わりますが、
自分は変わってからの方が好きです)。
ライブパフォーマンスの楽しさ。
過去のロックへのオマージュやナンセンスソングなどの、
ある種のやりたい放題感。
ブルーハーツは世界に対して「NONONO」と叫びましたが、ハイロウズは
どちらかといえば「世界を楽しめないヤツがNOだ」というようなスタンス。
「みんなで楽しもうと思うなよ!自分が一番楽しめ!」(ヒロトのMC)
ブルーハーツのイメージは、冷戦体制下の硬直した社会の
安定的な平和の裏に潜む恐怖に対するNO。
ハイロウズのイメージは、冷戦後の不安定で何が起こるかわからない世界を
ガチンコで楽しんで生きるということへの応援歌。
こんな風に感じたりします。(実際の活動時期とはずれがあるのですが。)
この99年の「バームクーヘン」あたりから少しハイロウズも変化してくる
(切なさの要素が強くなってくる)気がし、中でもマーシーのつくった曲が
非常に良くて、
99年~02年の4枚のアルバムは気に入っています。

このアルバム「バームクーヘン」は、メンバー5人のセルフプロデュースアルバム。
5人だけでスタジオに籠って自分たちだけで録音したのだとか。
バームクーヘンのジャケットはなんとなくそのまま音楽CDを思わせます。

ヒロトの曲。
表題曲「バームクーヘン」は、自己能力を理解したうえで、
幸福であるための目的を自分で決めるということを歌った短い曲。
「罪と罰」も「二匹のマシンガン」も自己肯定の曲。
疾走する哀愁のメロディ「ハスキー(欲望という名の戦車)」は、
このアルバムの中で一番好きな曲です。

マーシーの曲。
「チェンジングマン」「死人」「笑ってあげる」はどれも、あなたが変われ、
あなたが楽しめ、というメッセージ。
「モンシロチョウ」のような不気味な曲や、「ガタガタゴー」のような破滅的な曲。
この中で、別れの切ない心情を客観的に観察した「見送り」が、
このアルバムで一番好きです。

「バームクーヘン」の次のアルバム「Relaxin'」以降、マーシーはもっと素敵な曲を
たくさん作っていますので、このあたりの曲についても、機会があればどこかで
何かを書いておこうと思います。


・蛇足歩行/GO!GO!7188

蛇足歩行

このアルバムは2000年当時、たまたま聴いて気に入ったアルバムです。
前回の記事で登場したジッタリン・ジンが登場する「ジェットにんじん」という曲を
たまたま耳にし、どういうバンドなのかと興味本位で聴きましたが、
ジッタリン・ジンとは何の関係もなし(笑)。
(たんに「ジェットにんじん」「ジッタリン・ジン」とうダジャレ。)
しかし、「ジェットにんじん」以外の曲、とくにアルバム後半の曲が気に入りました。

GOGOは鹿児島出身のユウ(ギタボ&作曲)とアッコ(ベース&作詞)の2人に
ドラムのターキーを加えた3人編成のバンド。
(最初は2人のバンドかと思ってましたが、ターキーも正式メンバーです。)
和製テイストのロックというか、少し古い時代の歌謡曲風ロックというか、
そんな感じの音楽。
「浮舟」あたりの曲が有名でしょうか?
自分は「蛇足歩行」(2000年)、「魚磔」(2001年)、「鬣」(2003年)を
リアルタイムで買い、その後「竜舌蘭」(2004年)、「パレード」(2006年)を
ずっと後になってから買いなおしました。
このバンドはアルバムを出すごとにどんどん音楽が洗練されていく気がしますが、
自分としては最初の「蛇足歩行」が一番印象的です。

「蛇足歩行」の魅力は、なんとなくうまく生きられない(イケてない)若者の憂鬱を
歌にした曲が多いことです。。
かなりネガティブな歌詞が続き、鬱屈した青春の感情の檻をぶちまけたような、
そんなアルバム。
(こういう歌詞は2ndアルバム以降はなくなります。)

最も有名な曲はたぶん「こいのうた」。
イケてない女の子の成就しない片思い、しかしその思いが小さな幸せに繋がる。
生きていく力はちょっとした勘違いや日常の軌跡に宿るという、そんな曲。
「ロック」(ものすごいタイトルの曲)は、アッパー系の苛立ちの歌。
生きている幸福を得ようとしても得られないということへの苛立ち。
「パンク」(これまたものすごいタイトルの曲)は、ダウナー系の苛立ちの歌。
何もしなければ幸福なのに何かを強いられることへの苛立ち。
このあたりの曲、ある種の若者はきっと、グッとくるものがあると思います。
これ以外にもポジティブな「太陽」や「ぬかるみ」のような曲もあります。
「西部」は西部劇の歌だと思いますが、曲調は日本の時代劇みたい(笑)。


・ゆらゆら帝国Ⅲ/ゆらゆら帝国

ゆらゆら帝国Ⅲ

ゆらゆら帝国は、椎名林檎さんと並んでCDの所有率が一番高いバンドです。
「3×3×3」(1998年)、「ミーのカー」(1999年)、「ゆらゆら帝国Ⅲ」(2001年)、
「ゆらゆら帝国のしびれ」(2003年)、「ゆらゆら帝国のめまい」(2003年)、
「Sweet Spot」(2005年)、「空洞です」(2007年)、
計7枚を所有しています。

ギタボ&ベース&ドラムのスリーピースロックバンド。
ゆらゆら帝国の中からアルバムを1枚選ぶなら、多くの方は「3×3×3」か
「空洞です」のどちらかを選ばれるのではないでしょうか?
「3×3×3」はサイケデリックな怪しい雰囲気が炸裂するテンション高いアルバム。
「空洞です」はミニマルな反復によって組み立てられた音楽なのに、なぜか
メロディが綺麗でポップな感じがするという独特の立ち位置を築いたアルバム。
このバンドはサイケ風→ミニマル風に徐々に移行していったバンドだと
思いますが、どちらの趣向の音楽も魅力的。
そして坂本慎太郎さんの不思議な色気と毒気のある(?)ボーカル。
声域は超低音からハイトーンまで幅広く、そして時々挿入される
怪しい語りがまた素敵です。
メンバーのどことなく怪しい風貌(笑)も魅力の一つですね。

自分が一番よく聴いていたアルバムは、「ゆらゆら帝国Ⅲ」です。
ちょうどはじめて車を買ったとき、車の中でこればかり聴いていましたので、
一番印象に残っているのです。
実は一番好きなのは「しびれ」&「めまい」だったりするのですが
1枚だけなら「Ⅲ」をあげたいと思います。

Ⅲの魅力。
1曲目からものすごい分厚い音の「でっかいクエスチョンマーク」。
これまた濃い音楽で坂本さんのシャウトが心地よい「ラメのパンタロン」。
民話にありそうな物語「幽霊の結婚式」。
内向的な子が世界からの幸福の訪れを待ち続ける「待ち人」は、
切ない&歌謡曲的なメロディが魅力的。
ハイテンションな語りとサウンド「ゆらゆら帝国で考え中」。
男の子の性的な不安定さを歌った「男は不安定」は
このアルバム以降のミニマル路線を先取りするかのような音楽。
などなど、魅力がたっぷりつまったアルバムになっています。

ゆらゆら帝国はこれ以外にも魅力的な音楽がたくさんありますので、
またどこかの機会で取り上げたいと思います。