懐かしの邦楽アルバム その2 | れぽれろのブログ

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その昔よく聴いていた邦楽アルバムについて、感想を残しておこうのコーナー。
第2回目は、3組のミュージシャンについて、98年~99年のアルバムの
覚書を残しておきます。


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・POP LIFE/JUDY AND MARY (1998年)

JUDY AND MARYは、90年代のJ-POPを代表する(たぶん)ロックバンド。
ポップな魅力あふれるバンドで、ファンだった方もたくさんおられることだと
思います。
JAMの魅力、メロディが楽しいとか、ボーカルのYUKIちゃんの声質が素敵だとか、
YUKIちゃんの歌詞がいいとか、YUKIちゃんが可愛いとか、いろいろあると
思いますが、個人的には(もちろん上記にあげたことも大きな魅力ですが)、
TAKUYAの作る楽曲の面白さと、ギターの楽しさを挙げておきたいです。

JAMは計6枚のアルバムを作っています。
自分が持っているのはそのうちの後期の4枚、「MIRACLE DIVING」(1995年)、
「THE POWER SOURCE」(1997年)、「POP LIFE」(1998年)、
「WARP」(2001年)の計4枚。
JAMの音楽は主にベースの恩田さんとギターのTAKUYAが作曲しており、
前期のアルバムから後期のアルバムになるにつれて、恩田さんの曲が減って
TAKUYAの曲が増えていくという、
何だか分かりやすいバランスになっています。
1枚目のアルバムにはTAKUYAの曲は1曲もなく、
そしてラストアルバムには恩田さんの曲が1曲もありません。
恩田さんの楽曲も魅力あふれるものですが(「風に吹かれて」なんてものすごく
好きです)、自分はTAKUYAのポップでありながら時々癖のある楽曲、そして、
ポップなメロディにのせて、
うまいのかどうかよくわかりませんがやたらと忙しげに
暴れまわるTAKUYAのギター、
これが何だかすごく魅力的に思えます。

上記のアルバム4枚のうち、どれを選ぶのかは難しいですが、
無理やり選ぶのなら「POP LIFE」になると思います。
1曲目の「ミュージックファイター」からしてわけのわからん(笑)曲、
(「HEY!HEY!HEY!」の生放送に出演した際、ダウンタウンの松本さんに
「今楽屋で考えてきたみたいな曲やな」と言われていました。
こんな曲よくシングルカットしたなと思います。)
「ランチ・イン・サバンナ」もポップでありながら何とも複雑なメロディで、
20世紀初頭ベル・エポック期の無調一歩手前の前衛音楽みたいな
(←クラシックファンの変な例えですが)、好き勝手ぶりが楽しく、好きな曲です。
シングルカットされた曲も多く、「LOVER SOUL」「散歩道」「ミュージックファイター」
「イロトリドリノセカイ」「手紙を書くよ」と、名曲揃い。
「イロトリドリノセカイ」は今でもカラオケでたまに歌います。
(これは男の子でも歌える歌、そういえばTAKUYAの別ユニット「ROBOTS」でも
カバーしてましたね。)
「ミュージックファイター」「BATHROOM」「ナチュラルビュウティ98」
「手紙を書くよ」は当時のCMでも使われていましたので、
聴くと思い出す人も多いのではないかと思います。

この中で一番印象に残っているのは「LOVER SOUL」です。
うねうね唸るギターに乗せて歌われる、可愛らしい歌詞と歌唱とメロディ。
長い長いアウトロのスキャットとギターも魅力的。
この曲はアルバムに先行して97年の秋に発売、時代は折しもアジア通貨危機の
さなか、拓銀や山一證券が破綻し、世紀末のもうダメ感漂う世相、
(この翌年の3月決算期に初めて自殺者が3万人を越える)
当時自分は19歳、「あなたと二人でこのまま消えてしまおう」という歌詞が
何だか無性に心に染みたことを記憶しています。

なお、この「POP LIFE」、上記の写真では白バックになっていますが、
自分の持っているのはオレンジ色のケースです。


・here,rattler,here!/JITTERIN'JINN (1998年)

here,rattler,here

ジッタリン・ジンは90年代前半のバブル期に有名になったバンド、
この時期の楽曲、「プレゼント」だとか「夏祭り」だとかが有名なバンドだと
思いますが、自分はこのころの曲はあまり詳しくありません。
ジッタリン・ジンは95年に一旦インディーズで活動するようになり、
そのころにリリースされた「Chick-A-Biddy」(1995年)から聴きはじめ、
その後の「here,rattler,here!」(1998年)、「TENTASTIC!」(1999年)、
「Banzai Attack」(2000年)、「Wang Dang Doodle」(2002年)の
計5枚のアルバムを持っています。

このバンドの魅力は、スピード感あふれる、推進力のあるポップで楽しい楽曲と、
何とも可愛らしい歌詞が魅力的です。
歌詞はほとんどが女性目線でキュートなものですが、
ギターの破矢ジンタさん(男性)が作詞しているということに驚きます。
ドラムのかっこよさ(奏者は入江美由紀さん)もこのバンドの魅力ですね。

上記のアルバム5枚であれば、どれから聴いても楽しいものですが
1枚だけあげるなら、98年の「here,rattler,here!」を選びたいです。
このアルバムのイメージは、晩夏。
お盆が明けたころ、朝晩少しひんやりとするが昼間はまだまだ暑苦しい、
そんな季節を歌ったような歌が多いです。
(「浜昼顔」は晩夏ではなくて初夏かもしれませんが。)

計8曲の短いアルバムですが、どの曲も魅力あふれるものです。
ジッタリン・ジンのテーマソングのような「黄金の夜明け」、
奈良の地名である吉野や天川やが登場する「週刊天気予報」
(このバンドは奈良県のバンドなのです。
竜田川や斑鳩が登場する曲もあります。)
晩夏の切ないカップル「夏の終わり」、別れの切なさと未来への希望「クローバー」
在りし日の郷愁「市営プール」、こんな風に年を取りたいと思う「夕暮れ」など、
楽しい音楽が満載のアルバムになっています。


・無罪モラトリアム/椎名林檎 (1999年)

無罪モラトリアム

このブログでも何度も登場しているアーティスト、椎名林檎さん。
過去にいろいろと何度も記事を書いたような気もしますが、
こういう記事を書くからには、林檎さんの1stを選ばないわけにはいきません。
自分は林檎さんのアルバムは計4枚(ベスト盤や企画版を除く)
「無罪モラトリアム」(1999年)、「勝訴ストリップ」(2000年)、
「加爾基 精液 栗ノ花」(2003年)、「三文ゴシップ」(2009年)、
すべて所有しています。

林檎さんを初めて知ったのは、当時の「ダウンタウンDX」という番組の
エンディングで流れていた「ここでキスして。」を聴いたのがきっかけ、
この曲がグッと来た(最初はアラニス・モリセットっぽいなと思った)ので、
その後「無罪モラトリアム」を聴いてみましたが、異様にこのアルバムにはまり、
99年の春は自分はこのアルバムばかり聴いていました。
たぶん今でもこのアルバムの曲は、全曲そらで歌えます。
このアルバム全11曲中5曲はアウトロにスキャットがあるのですが、
このスキャットも今でもほぼ完璧に覚えているという(笑)
なかなかのハマリっぷりなのでした。

椎名林檎さんの魅力はいろいろあります。
まずメロディの独特の癖と揺れ。
挙げればきりがありませんが、この「無罪モラトリアム」でいうと、
「正しい街」のAメロのリズム、「茜さす」や「ここキス」のサビの揺れるメロディ、
「同じ夜」の跳躍と半音階、などなど。
そしてある種の「なりきり系」の歌詞、そして歌詞の語感の心地よさ。
このアルバムなら、「丸サド」「積み木遊び」「モルヒネ」の語感の楽しさと
メロディの組み合わせ。
そしてアルバムの楽曲順とタイトルのこだわり(シンメトリカルな構成)、
「漢字+カタカナ」の楽曲やユニット名、
PVでの妖しげな仮装の数々、・・・などなど魅力はなかなか語りつくせません。
とにかく、全体として「椎名林檎」という、ちょっと他にはない独特の世界を
形作っている、この世界にどっぷりとはまると抜け出ることができない、
という感じのミュージシャンなのです。
(個別の楽曲については、過去記事にもいろいろ書きましたので省略。)

ちなみに、アルバムの曲のタイトルをシンメトリーに構成するのが林檎さんの
パターンですが、1stアルバムの「無罪モラトリアム」は
シンメトリーではありません。
自分が聴いた話では、もともとこのアルバムは9曲構成で、
「警告」と「モルヒネ」は後から追加したのだそうです。
そう考えると、残りの9曲はちょっとシンメトリーっぽい。
真ん中に「茜さす」がどーんと存在し、アルバムの両端から、
別れの曲→シングルカット曲→言葉遊び曲→あなたと共ににいる幸福、
と、
楽曲のパターンがシンメトリーになっているようにも見えたりします。

このアルバム「無罪モラトリアム」以降も、林檎さんは面白い録音を
たくさん残されています。
個人的に一番面白いのは「加爾基 精液 栗ノ花」だと思いますが、
やはり思い出深いのは「無罪モラトリアム」ということになってしまいます。
ちなみに林檎さん、メロディの作り方は「加爾基」を過ぎたあたりから、
少しシンプルで洗練された感じに変化していっている
(逆に言うと少し物足りない)気がします。
歌詞の方は逆に、後の時代の方が魅力が増しているような気も
(東京事変の歌詞はかなり魅力あふれるものだと思います)しますが、
これは人により感じ方も異なるかもしれません。

ともあれ、この「無罪モラトリアム」は、自分の中ではちょっと
特殊な位置にあるアルバムなのです。
「ザ・カクテルバー」が懐かしい・・・。


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というこことで、次回は残り3枚のアルバム。
世紀末から21世紀初年のアルバムを書き留めておきたいと思います。