懐かしの邦楽アルバム その1 | れぽれろのブログ

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昔のことを思い出して書いてみようシリーズ、
&久しぶりのポピュラー音楽の記事です。

自分は1978年生まれ、90年代末がちょうど二十歳前後にあたります。
この時代は音楽CDが最も売れていた時代。
現在のようなインターネットを通じた音楽配信はなく、
みんなCDを買っていた時代です。
90年代の前半にJ-POPという言葉が浸透し、
音楽CDの売り上げ額が過去最高となったのが1998年。
小室ファミリー、ビジュアル系アーティスト、沖縄系アーティストなどが数多登場、
流行りの曲・大ヒット曲というのもありましたが、どちらかというと
「誰が最も有名である」ということもなく、
若者はみんなめいめいに
好きな音楽CDを買って、「私は誰が好きだ」と自分の嗜好を主張し合い、
暇ができればカラオケに行って、それぞれ好きな歌を歌っていたような時代。
インターネットは登場したて、携帯電話も広まりかけていましたが、
こういった情報機器はまだまだコミュニケーションの主役ではなく、
アルバイトで稼いだお小遣いが音楽CDに消えていくという人も
多かったのではないかと思います。

自分は吹奏楽部だったこともあり、基本的にクラシック曲が好きだったのですが、
上記のような時代背景のため、当然の如くポピュラー音楽もよく聴いていました。
テレビの音楽番組、「ミュージックステーション」「HEY!HEY!HEY!」
「JAPAN COUNTDOWN」などをよく見ていましたし、ラジオの音楽番組も
α-stationの谷口キヨコの「JAC TOP40」(ご存じでしょうか?)とか、
ABCラジオ「ウシミツリクエストABC」(誰かご存じでしょうか?・・・笑)とか、
こういう番組もよく聴いており、「ミュージックマガジン」だとか
「ROCKIN'ON JAPAN」だとかの音楽雑誌を参照しつつ、
面白そうな邦楽CDを借りたり買ったりしていたのでした。

ということで、90年代末からゼロ年代初頭、
自分が大学時代から社会人になりたてくらいの頃によく聴いていたアーティスト
計8組の中から8枚のアルバムを選んでコメントを残しておこうと思います。

本当ならきっちりとCDを何度も聴きなおし、正確な感想を書くべきですが、
時間がないのと面倒くさいのと(←こらこら)、そして当時感じたことを今の時点で
文章化したいという目的もあり、記憶を頼りにコメントを残しておきます。
アルバムの登場の順序は、発売日の順番です。


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・二十歳の恋/小島麻由美 (1996年)

二十歳の恋

小島麻由美さんの2ndアルバムです。
この人の歌唱、声楽的には決して上手いとは言えない歌い方、
どちらかというと洗練されていない、声質が安定していない感じがし、
いわゆる「クラシック耳」で聴くと
上手くないように聞こえます。
しかし、この人の歌声はなかなか魅力的で、楽曲によってかなり歌唱の
表現方法を変えていますし、個人的には上手いと言ってもいいと感じます。
(記憶によるとご本人は雑誌のインタビューで「私って歌上手いでしょう?」と
言っていた気がする。)
声楽的なレベルはともかく、なかなかこのようには歌える歌手は
いないのではないでしょうか。

このアルバムの面白さ、まずタイトルで「二十歳の恋」とか言っていますが、
歌唱の雰囲気も相まって、どうも本当でないような感じというか、
妄想の恋のような、男の子を知らない女の子が想像を膨らませて
歌っているような、
そんな雰囲気を感じたりします。
そして各曲の背後に、可愛げとともにどことなく暗くどんよりとした、
中高生の若者が持っているある種の陰鬱な雰囲気を感じるのも魅力的。
それを証拠に?、ジャケットの表紙には「二十歳の恋」と書いていますが、
背表紙にはさりげなく「A GIRL IN MAD LOVE」とか書かれています。
ちなみにジャケットのイラストは小島麻由美さん自身のもの。

「飾り窓の少女」はフルートとパーカッションが印象的な動きをする
5拍子の楽しい曲(小島麻由美さんは割と5拍子を多用する)ですが、
単純な歌詞とタイトルは意外と意味深にも感じます。
「パレード」はホーンセクションが楽しい曲で、
街にサーカスがやってくることを歌っていますが、
楽曲と歌詞で表現されているのは、非日常のお祭りとある種の恐怖心。
表題曲「二十歳の恋」はインストですが、ノイジーな雰囲気が
これまたある種の妄想的な恋に聴こえます。
「さよなら、カエル」は、道端で死んだカエルを見たというそれだけの歌ですが、
楽曲からは、可愛げな小動物の命の儚さと、カエルの死に過剰にシンクロする
女の子の心理が感じられ、面白いです。

小島麻由美のアルバム、自分は「さよならセシル」(1998年)
「my name is blue」(2001年)「愛のポルターガイスト」(2003年)と、
ベスト盤の「me and my monkey on the moon」を持っています。
後のアルバムになるに従って、楽曲も歌い方もどんどん洗練されていく
感じがしますが(女の子がだんだん大人になってく感じもする)、
「二十歳の恋」「さよならセシル」あたりが魅力的で、
個人的に好きなアルバムです。


・クムイウタ/Cocco (1998年)

クムイウタ

Coccoに興味を持ったのはラジオで「強く儚い者たち」を聴いてから。
この曲、メロディに乗せて淡々と歌われる歌詞は、よく聞くとなかなかに刺激的で
コジ・ファン・トゥッテ(女はみんなこうしたもの)というモーツァルトのオペラをも
思い出すような、人生と男女の綾のどうしようもなさを歌ったような、
そんな歌詞が印象的で、すぐに興味を持ちました。
その後、「Rainig」「雲路の果て」と、曲を出すに従って歌詞がどんどん
過激になって(笑)いき、大丈夫かいなと何だか余計な心配をしたりしていたことを
思い出します。

Coccoは沖縄出身、当時沖縄のアーティストはたくさん登場していましたが
どのアーティストもバンドも洗練されてスタイリッシュな雰囲気であったのに対し、
Coccoの楽曲や歌詞はどことなく土着的でドロドロした世界観、
都会的な洗練とは正反対な楽曲、そして映像などで見るCocco自身の独特の
佇まいにものすごく興味を持ち、Coccoの2ndアルバム「クムイウタ」を購入。
この「クムイウタ」、ぱっと聴いた感じでは洗練された雰囲気に聴こえる曲もあり、
普通のJPOPとしてもさほど違和感なく聴ける仕上がりになっていますが、
楽曲全体に感じる重さはなかなかに独特。

このアルバムで個人的に一番好きな楽曲は、シングルカットもされた「Rainig」。
世界を上手く生きることができないある種の子供の苦しみと、
それでも世界の優しい部分を感じながら生きていくんだという小さな決意が
表現されています。
この詞に共感した若い人(当時の自分も含む)も多かったのではないでしょうか。
その他、「My Dear Pig」のような可愛いメロディに恐ろしい歌詞を載せた曲や、
「濡れた揺籃」、「あなたへの月」、「うたかた」(バックの弦楽が綺麗)、
「裸体」(途中のシャウトが印象的)など、一体何があったんだというな歌詞の曲が
次々と登場する、印象的なアルバムです。
最後の「ウナイ」は純粋にきれいな子守歌で、好きな曲です。

この2nd以降、「ラプンツェル」(2000年)、「サングローズ」(2001年)と
自分は2枚のアルバムを持っていますが、最初の印象が強すぎたのか、
この2枚はどういうわけか印象が薄いです。
その後彼女は音楽活動を休止しましたが、現在は復活しているようですね。
ドキュメンタリーや映画作品などにも登場しているようですが、
このあたりの活動は自分はよく知りません。


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ということで、今日はアルバム2枚で力尽きてしまいましたので(笑)、
次回に続きます。
次回はもう少し軽めのミュージシャン3組が登場する予定です。