殺人! | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

人類史に殺人事件はつきもの。
美術史上の作品の中にも、殺人を描いた作品はたくさんあります。
殺しの瞬間の中から有名なものをいくつかを並べてみます。
少し凄惨な作品も登場しますので、若干のご注意を。


・マラーの死/ダヴィッド

マラーの死

18世紀のフランス大革命の指導者であったジャン=ポール・マラー。
彼は革命を推進したあと恐怖政治を行い、
反対派によって入浴中に暗殺されます。
この作品はマラーが殺害された直後を描いたもの。
作者はフランス新古典主義の大家、ジャック・ルイ・ダヴィッド。
構図的には、上側の何もない空間が印象的です。
自分はこの絵の実物を二度見たことがあります。
京都市美術館の暗めの照明の下で一度、
神戸市立博物館1階の比較的明るいオープンスペースで一度、
同じ絵でも、光の関係でずいぶん違った印象を持った記憶があります。


・ホロフェルネスの首を斬るユディト/カラヴァッジョ

ユディト_カラヴァッジオ

以前ユディトの作品をたくさん並べたことがありましたが、
その中からカラヴァッジョの作品を再登場させてみます。
殺人シーンを描いた作品で、個人的に最も印象的なのがこの作品。
カラヴァッジョお得意のドラマティックな光の描写と相まって
なかなかショッキングな作品になっています。
ちなみに、作者のカラヴァッジョ自身も乱闘騒ぎから殺人を犯し、
お尋ね者になった経緯があるのだそうです。
血の気の多さが作品にも表れている・・・?


・メディア/ミュシャ

メディア

19世紀末~20世紀初頭に活躍したチェコの画家ミュシャが描いたこの作品は、
ギリシャ悲劇を題材とした舞台作品のポスターです。
自分は実は「王女メディア」のプロットは詳しくないのですが、
これは我が子を殺害している瞬間のようです。
メディアを演じているのは世紀末の有名女優、サラ・ベルナール。
彼女が演じた舞台作品のうち「トスカ」のポスターもミュシャが描いてます。
ちなみに、「トスカ」の方でも、歌姫トスカが悪徳警官スカルピアを
刺殺するシーンがあったりします。
(ミュシャの「トスカ」のポスターには刺殺シーンは描かれていませんが。)


・当世風結婚(第5場面)/ホガース

当世風結婚5

18世紀イギリスの風刺画家ウィリアム・ホガースが描いた連作
「当世風結婚」から、イギリス貴族の若殿が、妻の浮気相手の弁護士に
殺害されるシーンです。
イギリス貴族の息子とオランダ商人の娘の政略結婚の行きつく先が、
夫婦ダブル不倫のいざこざの果てのこの殺人。
若殿を刺殺した弁護士が下着姿のまま窓から逃走しようとするのも
何やら滑稽です。


・浅沼稲次郎刺殺事件/長尾靖

浅沼稲次郎刺殺事件

写真作品から一枚。
1960年、当時の日本社会党の委員長である浅沼稲次郎が、
演説中に極右の青年によって刺殺される瞬間を撮影した写真です。
写真家の長尾靖はこの写真でピューリッツァー賞を受賞しています。
この写真は報道写真で、いわゆる美術作品ではありませんが、
個人的に殺人の写真といえば、まずこの作品が頭に浮かびます。
衝撃的で印象的な作品ですね。


・山中常盤物語絵巻/岩佐又兵衛

山中常盤物語絵巻

続いては日本画から。
近世初期の日本画家、岩佐又兵衛の「山中常盤物語絵巻」からの抜粋です。
この絵巻物は全12巻、各巻約12メートルの、長大な絵巻です。
舞台は12世紀、殺害されているのは源義経の母、常盤御前です。
盗賊により殺害される常盤御前を描いたシーン。
実はこの「山中常盤物語絵巻」、人体がいろんな方向から切り刻まれて
真っ二つになったりしている、まあとんでもないシーンがあるのですが(笑)、
この恐ろしくも面白いシーンは、なかなかご紹介できる画像がありません。
熱海のMOA美術館に所蔵されているとのことで、
個人的にぜひ一度見に行ってみたい作品です。


・稲田九蔵新助/月岡芳年

稲田九蔵新助

月岡芳年は幕末から明治初期に活躍した浮世絵師。
いわゆる無残絵をたくさん残した方で、
日本画で殺しの絵といえば、この人を忘れるわけにはいきません。
この作品は「英名二十八衆句」という歌舞伎の無残シーンを描いた連作の一枚。
まあなんともコメントのしようもない(笑)、えげつない作品です。
月岡芳年は歌川国芳の弟子にあたる人です。
国芳も武者絵などたくさん残された絵師ですが、
作品にはどことなくユーモアが漂っています。
しかし弟子の芳年の作品には、国芳のようなユーモアは感じられません。
ひょっとしたら、幕末維新期の戦乱と体制変更の混乱という時代背景も
作品に影響を与えているのかもしれません。



以上、殺人シーンを並べてみました。

最近の美術の記事、少し変なのが登場しすぎな気もしますので(笑)
次回の美術の記事はきれいな作品を並べてみようと思います。