動物たちとのワンダーランド | れぽれろのブログ

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いよいよ暑くなってきた7月12日の土曜日、
いずみシンフォニエッタ大阪の第33回定期演奏会、
「動物たちのワンダーランド」と題されたプログラムを鑑賞しに行ってきました。

いずみシンフォニエッタ大阪は、いつも刺激的なプログラムで
楽しませてくれる楽団です。
この楽団の定期演奏会、いつもものすごく寒い季節か
ものすごく暑い季節に開催されます(笑)。
なので、いつも茹だりながらor震えながら、会場へ向かうことになります。

JR環状線で大阪城公園駅に向かいます。
駅を降りると出口付近に「チケット譲ってください」の紙を掲げる人が
たくさんおられました。
まさか、いずみシンフォニエッタ大阪の演奏会が大人気でチケットが売り切れ、
さらに余剰チケットを求める人までいる・・・はずもなく(笑)、
この日は大阪城ホールでEXILEのライブが開催されていたようです。
EXILEに向かう人の群れから離れ、一路いずみホールへ。


今回の定期演奏会は「動物たちのワンダーランド」とのことで、
サン=サーンスの有名な「動物の謝肉祭」の演奏に加えて、
川島素晴さんの新曲「セロ弾きのゴーシュ」、及び
スティーヴ・ライヒの近作「ヴァイヴ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲」
というプログラムです。
タイトルからすると「動物」がテーマなのですが、なぜライヒなんだろう・・・。
どうもピアノ2台+小編成のオケという組み合わせから、
この3曲との選曲となったようです。
解説によると、ライヒの曲は「人類」を表しており、人間も動物の一員であるとの
苦しい(?)紐付けがなされています(笑)。

というような、テーマとの関連性は個人的にはどうでもよく、
実は自分はライヒ目的でこの演奏会に行ったのでした。
ライヒの音楽を生で聴くことのできる機会はなかなかありません。
このようなプログラムを企画してくれるいずみシンフォニエッタ大阪に感謝です。


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演奏会の開始30分前、まずはプレ演奏とのことで、
ライヒの1967年の「ピアノフェイズ」という曲が演奏されました。
2台のピアノが同じ音型を延々繰り返す曲なのですが、一定時間ごとに
1台のピアノの音が少しずつもう1台のピアノの音からずれていきます。
この2台のピアノに位相の差が生じることにより、
不思議なパターンの音型が生まれます。
一定時間たつと、また違う音型が聞こえてきます。
何とも面白い曲です。

詩的であるとか意味的であるわけではなく、音響の特徴でもなく
音色の特徴でもなく、
音のパターンのずれだけで面白いことになるという音楽。
今ならPCのシーケンサで簡単に再現できるような楽曲ですが、ライヒの場合、
人間が演奏することで多少の揺らぎが生じるのもまた味があるものです。


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本編のライヒは、「ヴァイヴ、ピアノ、弦楽器のための変奏曲」という曲、
2005年に作曲された近作で、日本初演とのことです。
その名のとおり、ヴィブラフォンが4台+ピアノ2台+残りは弦楽器という編成。
弦楽器はVn*2+Va*1+Vc*1の弦楽カルテットの組み合わせ×3セット。
なので、ピアノ*2、弦楽カルテット*3、ヴィブラフォン*4の
組み合わせということになります。
ライヒの「18人の音楽家のための音楽」などと同じように、同じリズム・メロディが
反復的に繰り返され、
一定時間後に転調し別のリズム・メロディに代わっていく・・・
これを繰り返すという曲です。
さらに全体が急-緩-急の三部構成になっています。
約30分程度の曲ですが、凝縮された音楽といった感じで、
演奏者はすごく大変そう、とくにヴィブラフォン。

この曲はドリア調とのことですが、メロディ自体は聴きやすく、
ポップな雰囲気も感じます。
如何にも前衛的な(?)不協和音ではなく、歌える音楽、
これがライヒのいいところともいえるかもしれません。
今回の曲の場合は、解説によると一定時間ごとに短3度ずつ上がる形で
転調していくとのことです。
この転調がはっとさせられます。

何よりも音色が特徴的です。
ヴィブラフォン4台というのがなんとも独特、それにピアノの音が溶け込みます。
とくに低音部をドンドコ叩く感じのピアノ、
ピアノは打楽器でもあるのだという、そんなことを思ったりします。
そしてそこへの弦の音の絡み具合が良い感じ。
音色を聴く曲ともいえるので、ホールや楽器によっては、
ひょっとしたらかなり違った雰囲気の曲になるのかもしれません。
急-緩-急の三部構成ですが、個人的にはやはりライヒは急の部分が楽しいです。
かなりうっとりと心地よく干渉しました。
真剣に聴くと結構疲労する音楽ですが、ぼんやりと聞き流しても心地よい、
それがライヒの音楽。


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ということで、個人的にはメインである前半戦終了、
ここで既に疲れた感がありますが、後半戦、動物さんたちの登場です。

後半1曲めは、川島素晴さんの「セロ弾きのゴーシュ」。
タイトルは宮沢賢治の童話に由来しますが、
自分はこの物語を読んだことはありません。
この音楽は、元ネタの設定を現在のオーケストラに置き換えた
独自の物語になっているとのことです。
ナレーションを伴う寸劇仕立ての音楽付き物語となっていました。

仙台からやってきたチェロ奏者ゴーシュが、
いずみシンフォニエッタ大阪の演奏会に参加するという設定。
演奏する曲目は「食い倒れシンフォニー」(何このタイトル 笑)。
作曲家(川島素晴さんが自ら演じる)が前日ギリギリにスコアを完成させたと
いうこともあり、ゴーシュはオケのみんなと音を合わせることができません。
ゴーシュは1人金剛山に籠り、曲を完成すべく必死で練習することになります。
そして、練習中のゴーシュの元に、猫、カッコウ、たぬき、ネズミがやってきて・・・。

ナレーションの太田真紀さんの関西弁の語りがいいです。
動物たちも太田さんが演じます。動物たちも皆関西弁です(笑)。
猫やカッコウの声を楽器で声マネする。
音程が微妙に揺れる楽器の声マネ、スコアどうなってるんやろ・・・。
演奏は意外と難しそうです。
たぬきの「ぽんぽこロック」、これロックかいな(笑)。
まあ、ある種のプログレっぽい感じはしましたが・・・。
そんな中、ネズミの曲は綺麗なメロディになっています。

そして練習のかいあって、本番の演奏は大成功。
アンコールでもう一度「食い倒れシンフォニー」が演奏されます。
この「食い倒れシンフォニー」、各動物の主題も取り入れられています。
ちなみに、大阪の人ってあんまり「食い倒れ」って行かないですよね。
自分も行ったことはありません。
観光客向けのお店という気がします。まあ、どうでもよいことですが(笑)。

この曲、お子様向けのコンサートでも演奏するのも良いかもしれませんが、
響きは割と現代的なので、どういった演奏会で演奏されるのか、
なかなか客層のターゲットが難しそうです。
いずみシンフォニエッタでしか聞けないのかも・・・笑。
いずれにせよ、自分は楽しめました。


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最後はメインの曲目、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」です。
この曲は有名ですが、意外と自分はCDも持っておらず、
テレビで一度全曲を通して聴いたのみで、あまり聴いたことがない曲なのです。
サン=サーンスが半ば諧謔的に動物を描写した音楽となっています。
鶏やロバや象などの動物たちに加え、
ピアニストだとか化石だとか、変なのまで入っています。
この日は、引き続き太田さんの解説付きで演奏されました。
(どうせならこの解説も関西弁でやってくれたらよかったのに
・・・と思いました 笑)。

ピアノ2台を要する楽曲、なかなか技巧的です。
ロバなどはピアノのかなり素早い動き、
(ロバってこんな速い生き物なのでしょうか?)
鳥小屋のフルートも技巧的で目まぐるしい曲になっています。
一方、亀や象はやたらとスローテンポで、オッフェンバックの「天国と地獄」や、
ベルリオーズの「ファウストの劫罰」の一部を
引用したりします。

ピアニストの楽章、ツェルニーの練習曲をわざと下手糞に弾くとのこと、
確かにリズムや音の強弱など合ってませんが、
意外とめちゃくちゃ下手という風にもに聴こえません。
プロのピアニストは、下手糞に弾くということも難しいのでしょうか・・・笑。

ということで、終曲は今までメロディを再現したりしつつ、華やかに終了しました。


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以上、楽しい演奏会でした。
ライヒ目当てで行きましたが、いろんな曲が聴けて楽しい演奏会でした。

次回のいずみシンフォニエッタ大阪の演奏会は年明けの1月。
「リズムの秘法~世界の創造」とのことで、リゲティやミヨーの音楽を
演奏するそうです。
これまた楽しみですね。


★過去記事リンク

・吉松隆 -新作 交響曲第6番-
http://ameblo.jp/0-leporello/entry-11573346139.html