アルプス交響曲 (大阪フィル) | れぽれろのブログ

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26日の土曜日、「第52回大阪国際フェスティバル2014」と題された
大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会に行ってきました。
指揮は大植英次さん。
メインの曲目は、リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲。
そして、会場は中之島のフェスティバルホールです。

フェスティバルホールは建て替え工事のため2008年に一旦閉館し、
工事完了後、昨年の春に再スタートしたホールです。
自分は今回が建て替え後の初の演奏会です。
1年前のオープン以降、何度か行こうと思っていましたが、
なかなか公演内容やタイミングが合わず、約1年経過の今月
ようやく行くことになりました。

自分が最後にフェスティバルホールに行ったのは、2008年の6月、
このときも大阪フィルの演奏会で、指揮も大植英次さん、
曲目はマーラーの交響曲1番でした。
アンコールに「花の章」を演奏してくれたことを覚えています。
今回のフェスティバルホールは、6年ぶりになるのですが、
同じ楽団と指揮者での再会となりました。

そして、大阪フィルの演奏会を聴くのも久しぶりです。
日記を確認してみると、実に5年ぶり。
2009年の「ベルシャザールの饗宴」以来の演奏会です。
(大フィルは基本は平日の夕方公演なので、行くのが難しいのです。)
ということで、久しぶりづくしとなりました。

フェスティバルホールの内装は新しく綺麗になっていますが、
ホールのつくり自体は、なんとなく以前と大きく変わっていないように感じました。
基本的に完全に1から作り直すのではなく、
以前の構造をそのまま踏襲したような雰囲気です。
今回自分は3階席でしたが、急勾配な座席の構造も以前のホールと似ています。


ということで、大阪フィルの演奏会、
前半はブルッフのヴァイオリン協奏曲です。
独奏者はネマニャ・ラドゥロヴィチという方。
独特の長髪とすらりと長い足。
なかなかスタイリッシュな演奏家です。

演奏は髪を振り乱しての、割とオーバーアクションな演奏スタイルで、
ダイナミックな音楽を聞かせてくれました。
かっこいい演奏家ですねー。
そして、今まで気づいていませんでしたが、2楽章の後半の主題は
アルプス交響曲に登場する主題に似ています。
会場のパンフレットに書かれていて気づきました。確かに似ている・・・。

劇的に3楽章を演奏し、終了。
アンコールはパガニーニのカプリースより。
ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」で有名なあの旋律が登場。
難曲をさらりと弾いています。
ダイナミックな演奏で、拍手喝采。


そして後半、いよいよ「アルプス交響曲」です。
自分はこの曲が目当てで、この演奏会に行きました。

自分はリヒャルト・シュトラウスの交響詩が好きなのですが、
演奏会で聴く機会は意外と少ないです。
「ドン・ファン」や「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」などは
まだ演奏機会がありそうですが、これら以外だと、
自分は「英雄の生涯」を聴いたことがあるのみです。
「アルプス交響曲」も、実演は今回が初めて、楽しみです。

シュトラウスの交響詩は、巨大なオーケストラで演奏され、
大音響から弱音まで、幅広い音を楽しむことができます。
マーラーなどの同時期(19世紀末~20世紀前半)の作曲家と同じような特徴です。
シュトラウスとマーラーの大きな違い、マーラーが何となく分裂的な音楽に
なりがちなのに対し、シュトラウスの音楽はすごく洗練されている印象を受けます。
マーラーの方は絶対音楽であるのに対し、
シュトラウスは標題音楽・描写音楽です。
マーラーがソナタ形式などの形式を基本的に踏襲しているのに対し、
シュトラウスの曲には形式がなく、楽曲の構造が把握しにくく、
聴きにくいように思います。
このあたりの差異により、同じ時期の似たような作曲家であっても、
好みが分かれてくるのだと思います。
(ちなみに自分はどちらも好きですが、無理にでも選ばないといけないなら、
マーラーの方を選ぶことになると思います。)

シュトラウスの交響詩は静かに終わるものが多いです。
この「アルプス交響曲」も、初めは静かに始まり、中盤にクライマックスがあり、
最後は静かに終わります。
「アルプス交響曲」はアルプスへの登山を描写した音楽。
アルプスに登る過程で、様々な風景に出会ったり道に迷ったりします。
無事山頂にたどり着き、雄大な景色に感動する部分が全曲のクライマックス。
そして下山時には嵐が起こります。家に帰って静かに就寝しておしまい。
この静かな終り方が好きです。

シュトラウスの曲は、初っ端から大音響で聴衆の注意を引くだけの曲だと
言われることもあるようですが、お客さんのブラボーが欲しければ、
最後を盛り上げる方が効果的です。
静かに終わるのは、シュトラウスなりの美学なのだと思います。
その他、何かを描写しようとしたただけの表面的な曲だと言われることもあります。
個人的には全然そんなことはないと思うのですが、
基本的にシュトラウスの交響詩は洗練されていて明るい雰囲気の曲が多く、
悲劇的な要素が少ないので、表面的に聞こえるのかもしれません。
音楽の聴き方も、別に描写音楽として聴く必要はなく、
絶対音楽として聴いても良いし、面白いとも思います。


またどうでもいい能書きが長くなりましたが(笑)、
以下、演奏の感想、及び実演で気づいたことをいくつか。

前半の山登りの初めの部分、金管がバンダでした。
バンダがあるのは知らなかった・・・このあたりは実演でないと分かりませんね。
滝の音の部分、グロッケンシュピール、トライングル、ハープ、チェレスタで
キラキラと表現されています。実演だとこのあたりが楽しく聴こえます。
その後登場するカウベルもバンダでした。
マーラー6番の演奏会で何度か見た光景、左右のドアを開けて、
奥からカラコロとカウベルが聴こえてきます。
氷河が現れる部分~山頂の部分、金管の音が高い・・・演奏が大変そうです。

山頂の部分が全曲のクライマックス。
大植さんはテンポを揺らしながら、ゆっくり目でたっぷりと演奏。
たっぷり過ぎて金管がかなり苦しそうです(笑)。
オケが走ろうとするのを、大植さんが引き留めているような演奏です。
しかしこの「たっぷりさ」加減、自分はすごく好きです。
大植さんのマーラー9番の実演を聴いたことがありますが、
このときも部分的にかなりスローテンポでたっぷりとした演奏でした。
山頂のクライマックス、かなり感動的な演奏でした。

後半、不気味な静けさの部分を経て、嵐のシーンです。
出ました!ウインドマシーン!
自分は、生ウインドマシーン初体験です。
円柱状の楽器、抽選会のガラガラの如く(笑)くるくる回す、
ヒューヒュー音が鳴っています。楽しい楽器ですね。
オケも難しそうですが、テンポよく嵐が続きます。
そしてサンダーマシーン登場!
鉄板をドカドカ叩くいています。音が大きいです。
CDだとサンダーマシーンの音が分かりにくい場合もありますが、
実演だと迫力がありますね。
そしてラストの日没~夜、静かに終わります。
パイプオルガンがないのが少し残念でした。
フェスティバルホールには設置されてないので、電子オルガンで代用。


ということで、楽しい演奏を堪能できました。
春の演奏会はこれでおしまい。
次回は夏、7月に2つの演奏会に行く予定です。
佐渡裕さんの「コジ・ファン・トゥッテ」、
そして、スティーヴ・ライヒの近作(←!)を聴きに行く予定です。
夏が楽しみです。