エフゲニー・キーシン ピアノ・リサイタル | れぽれろのブログ

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13日の日曜日、ロシア出身のピアニスト、エフゲニー・キーシンの演奏会を
鑑賞しに、ザ・シンフォニーホールに行ってきました。

曇り空の中、梅田駅前から歩いてザ・シンフォニーホールへ向かいます。
ちょうどこの数日前、梅田駅前は例の小保方騒動の記者会見で
人がごった返していたのだそうです。
本日は普通に平和な日曜日、トコトコとザ・シンフォニーホールへ。
ちなみに、佐村河内騒動にはそれなりの関心を示した(→  )自分ですが、
小保方騒動には全く興味を持てておりません・・・笑。


さて、自分はキーシンの演奏は過去に一度聴いています。
2006年、ベートーヴェンのソナタ2曲と、ショパンのスケルツォ全曲の演奏会。
今回と同じく、ザ・シンフォニーホールでの演奏会でした。
キーシンは丁寧な演奏で、奏でられる音に聞き惚れてしまい、
何やら「ずっと聴いていたい」感じにさせてくれるピアニスト。
このときはアンコールを10曲もやってくれた、すごい演奏会でした。
今回は実に8年ぶりです。
この間に何度か来日していると思いますが、平日公演だとかで時間が合わず、
自分にとっては久しぶりの演奏会になりました。

この日の曲目は、シューベルトのソナタ17番、
そしてスクリャービンのソナタ2番とエチュードop.8から7曲。
どの曲も自分はそんなにきっちりと聴いている曲ではありません。
スクリャービンのソナタは全集で持ってるいますが、2番はあまり聴いていません。
ソナタはホロヴィッツの演奏する5番が印象的で、
あとはあまり印象に残っていなかったりします。
エチュードもホロヴィッツのCDで何曲か聴いたレベル
(ホロヴィッツばっかりかい、と言われそうですが)。
シューベルトの方も、後期ソナタの中で17番はあまり印象にありません。
ということで、新鮮な気持ちで鑑賞に挑みます。


拍手に迎えられ、キーシン登場。
まずはシューベルトのソナタ17番。
出だしから少し早目のテンポでスタートします。
この曲はもっとゆっくりの印象がありましたが、意外と快活、
コロコロと心地よく音が転がる演奏が続きます。

2楽章、すごくシンプルな楽曲で、単純な旋律が淡々と続きます。
この2楽章が良いです。
キーシンの丁寧な音と演奏、ずっと2楽章を聞いていたい気分になります。
中間部を終えて後半の再現部分、楽章前半の旋律に少しポリフォニーが
加えられます。
ここの雰囲気がすごく良いですね。
後半、いいところなのですが、このあたりで突然会場の後ろの方から、
誰かが叫び声を上げました。
な、何が起こったのかな・・・。
しかし、キーシンは微動だにせず、黙々と演奏を続けています。

3楽章は、2楽章の終わりからアタッカで入ります。
3楽章のスケルツォは主部は快活ですが、
中間部はまたしてもシンプルこの上ない音楽。
しかしここがまた綺麗でいい感じです。
ピアノの音が鳴ってるだけで心地よい。

4楽章は可愛らしいロンド主題とドラマティックな副主題の繰り返し。
長調のメロディに突然短調の和音が入ったり、瞬間的に短調のメロディが
登場したりするのが後期シューベルトの面白いところですね。
(この曲は1楽章の出だしからしてそうです。)
心地よく鑑賞、前半だけで早くも満足です。
丁寧なキーシンの演奏は、シューベルトに似合っているのかもしれません。


休憩をはさみ、後半はスクリャービンです。
ソナタ2番もまた丁寧な演奏ですが、この曲はどちらかというと
多少乱れても流麗に弾いてほしいなと思ったり・・・。
前半のシューベルトがあまりに気に入ったので、ちょっとその雰囲気で
聴いているので、自分の耳が付いて行っていないのかもしれません。

続いて、エチュードから7曲、2,4,5,8,9,11,12番を演奏。
スクリャービンのエチュードはリズムが複雑な曲が多いですが、
(スコアをちゃんと見ないと何とも言えませんが)どうもその中でも
リズムがややこしい曲ばかりをチョイスしている感じです。

そして、このエチュードがまた素晴らしい演奏でした。
そう、忘れてましたが(←忘れるなと言われそうですが)、
キーシンのもう一つの良いところは、演奏のダイナミックさです。
ロマン派音楽のドラマティックに盛り上がる部分、
技巧的な部分で特にかっこよくダイナミックな演奏になります。
短めの2,4,5番の難しげなリズムをさらりとかっこよく演奏し、
綺麗な8番をしっとりと演奏し、
そして9番、この曲が何とも良かったです。
3部構成で、劇的な主部と美しい中間部、おー、かっこいい!
11番を経て、12番、
この最後の曲がまた〆にふさわしい劇的な曲です。
ダイナミックでかつ、それでいて丁寧な演奏をたっぷり堪能できました。


何度も拍手の受けながら、キーシンは舞台正面に向かって同じ間隔で
2回お辞儀し、続いて後ろを向いてP席に向かって1回お辞儀、
これを繰り返します。
拍手の対応まで何やら丁寧です(笑)。

アンコール。
バッハのシチリアーノ、またしてもスクリャービンのエチュード。
3曲目はなんとショパンの英雄ポロネーズ!きた!
キーシンの英雄ポロネーズは自分はCDでも持っています。
ダイナミック&ドラマティックに演奏しながら、それでいてコントロールは失わず、
あくまでもベースは丁寧な演奏。
英雄ポロネーズを弾き終わった後、スタンディングオベーションが起きました。
みんな一斉に立ち上がります。拍手の嵐。
何度も拍手を受け、そして拍手が一定のリズム(手拍子)に収束していきます。
拍手が収まりません。

アンコールは3曲にておしまい。
4曲目はありませんでした。
キーシン、お疲れ様でした。


既にキーシンは大物、もはや巨匠ですね。いやすごい。
チケットのお値段も巨匠です。
これ以上巨匠になったらどうしよう・・・笑。

ということで素晴らしい演奏会でした。
先月のシャイーに続き、これも今年のベスト演奏の予感です。