美しい緩徐楽章の世界、あるいは交響曲ベスト3 | れぽれろのブログ

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オーケストラを聴く醍醐味、とくにロマン派音楽を聴く醍醐味は
緩徐楽章(スローテンポの楽章)にある・・・ということで、
以前に2度ほど緩徐楽章の面白さについての記事を書いたと思います。

今回はその続編、というよりむしろ決定版。
ポスト・ワーグナー以降の音楽で、フィナーレが緩徐楽章で静かに終わる、
純器楽の後期ロマン派交響曲を3曲並べてみます。
・・・と書くと、クラシック音楽好きの人は「あの曲とあの曲とあの曲だな」と
すぐにお気付きになられるかと思いますが、そのとおり、
あの曲とあの曲とあの曲です(笑)。

自分はこの3曲が好きで、「好きな交響曲ベスト3を無理やり挙げろ」
と言われると、きっとこの3曲を挙げることになると思います。
ということで、その3曲のフィナーレを並べてみます。
3曲ともゆっくりと盛り上がり、消えるように静かに終わります。
もしご存じない方でお暇な方は、
じっくりと耳を傾けてみるのも良いかもしれません。


・交響曲9番より3楽章/ブルックナー


ブルックナーの交響曲9番は未完の音楽です。
本来は4楽章制の予定だったようですが、
4楽章は完成せず、3楽章でおしまい。
なので、厳密にはこの楽章はフィナーレとは異なります。
ブルックナーの交響曲は長大な楽章が多いですが、構成は分かりやすく、
曲の構造は掴みやすい場合が多いですが、この9番の3楽章に限っては、
構成もちょっと分かりにくいですね。
しかし、構成を無視してのんびり聴くだけでもうっとりできる、
陶酔の音楽だと思います。


・交響曲6番より4楽章/チャイコフスキー


ブルックナーは意図せずして緩徐楽章で終わる曲となりましたが、
意図的に緩徐楽章をフィナーレに置いた交響曲は、
この曲が最初なのではないかと思います。
上記のブルックナーに比べると短いですし、
構成も分かりやすいので聴きやすいと思います。
個人的にとくに好きな部分は第2主題(2分25秒あたり~)。
4分5秒あたりの頂点に向かって、徐々に美しく盛り上がっていきます。
素敵な音楽ですね。
演奏はカラヤンです。


・交響曲9番より4楽章/マーラー


緩徐楽章で終わるマーラーの交響曲は、
これ以外にも3番・「大地の歌」・10番もありますが、
やはり1つだけ挙げるならこの9番のフィナーレが良いですね。
この曲の出だしの音型は、上記のブルックナー9番の3楽章に
少し似ている気もします。
ブルックナーへのオマージュなのかな・・・?

この曲の素敵な部分はいくつもありますが、
中でも6分~9分10秒あたりの陶酔的な心地よい部分、
そして、13分25秒~14分40秒にかけて盛り上がり
14分40~15分の弦のユニゾンの下降だけになる部分、
このあたりがとくに良いですね。

演奏は先日亡くなられたクラウディオ・アバド。
この曲はたっぷりと陶酔的かつドラマティックに演奏する指揮者も
多いですが、アバドは比較的淡泊な演奏だと思いますので、
聴きやすいのではないかと思います。
(しかし、マーラー9番が大好きな方は、ひょっとしたら
この演奏では少し物足りないのかもしれません。)




以上、ゆっくりのテンポで雄大に盛り上がったあと
静かに終わる交響曲のフィナーレ、3曲でした。
この3曲のフィナーレ、とくに実演で聴くと
「このまま逝ってしまうのもありかも・・・」
などと、妙な気分になったりする場合もあるので、
そういう意味では危険な曲なのかもしれません・・・笑。