読書記録 2014年(1) | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

読んだ本の覚書などを残しておくというのが、このブログの目的の
ひとつだったのですが、最近は本の記事が滞り気味です。

当初、読んだ本の中から、何か書き残しておきたいタイトルを選び、
その本について1本の記事を書いていました。
しかしこれが意外と手間と時間がかかる・・・。
なので、昨年後半からは、月ごとに複数の本をまとめて短めに感想を書く方法に
変更したのですが、これも意外と手間がかかり、昨年末はそれすら
書けていない状態になってしまいました。

読んだ本の覚書は、できれば残しておきたい・・・。

そこで、「読書メーター」なるサイトに登録してみることにしました。
http://book.akahoshitakuya.com/
「読書メーター」は読書を管理できるサイトで、読んだ本、読んでいる本、
読みたい本などを登録しておき、読み終わった本の感想・レビューを
残しておくことができます。
感想・レビューは最大255文字。
この字数内で細かい内容や感想を残すことは不可能ですが、
あまり時間をかけずに気楽に書けるというのが利点です。

ということで、「読書メーター」にとりあえず簡単な内容・感想を残しておき、
この「読書メーター」に自分が書いた内容・感想に対して、あとから
ブログ記事でコメントするというスタイルで記事を書いてみることにします。
(これなら書きやすいかも?)

この年末年始のお休みの間、4冊の本(3タイトル)を読みましたので、
その覚書です。


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・疫病と世界史/ウィリアム・H・マクニール (中公文庫)

<内容・感想> ※読書メーターより

(上巻)
疫病という視点から紀元1200年ごろまでの世界史を捉えなおす本。
たくさんの面白い視点が提供されています。
古代インドでカーストが生じた理由は社会成員間の疫病忌避。
古代中国において秦の時代まで統一王朝が生まれなかったのも疫病忌避。
ローマ帝国と漢帝国の時期を同じくした衰退の原因も疫病のせい。
その後、地中海世界ではキリスト教が、中国では仏教が浸透したことも、
疫病の蔓延から死が身近になったから、等々。
古代~中世は資料に乏しいため、推測での記載が多いですが、
多くは納得的で面白いです。下巻も楽しみです。

(下巻)
疫病から世界史を捉えなおす本の後半。 
3世紀以降、人間の移動速度・頻度の上昇によりペストが世界各地で
猛威を振るう。
新大陸にもたらされた天然痘が、先住民の人口を激減させる。
そして18世紀以降、医療技術の進歩により疫病は駆逐されていきます。
種痘により天然痘は激減し、下水道完備によりコレラは消えていく。
しかしインフルエンザなどは今なお脅威であり、
そして世界人口の爆発的増加が今後疾病にどのような影響を与えるかは不確定。
細菌などの寄生生物は、過去も今後も歴史とは切り離せないということが
よくわかります。


<コメント>

一般に、偉人や英雄と呼ばれるような人たちが歴史を作ったと思われがちですが、
歴史を作る重要な要素は、人間の生きていく環境の変化(外的要因)、
そしてその変化に応じて技術(テクノロジー)が発達し、
それがまた人間を変える・・・
このような変化の連鎖が歴史の重要な要素なのだと思います。
そして、こういった変化・発展にたまたまうまくハマった人物が、
偉人や英雄などと呼ばれる。
歴史を動かすのはもちろん人間なのですが、
その人間を動かすもっと大きな外的要因があるのだと思います。
この本は「疫病」という外的要因について、
人類の誕生から現在までを俯瞰する本です。
偉人や英雄は一人も出てきませんが、
歴史を動かす構造に興味がある人はきっと面白いと思います。
この本は昨年の年末に読みましたが、
個人的には昨年のに読んだ本の中で、ベストに入る面白さでした。


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・科挙-中国の試験地獄/宮崎市定 (中公新書)

<内容・感想> ※読書メーターより

中国の官僚採用システムである科挙、当初の目的は皇帝の権力確保。
生まれによらず幅広い層から試験によって官僚を採用し、
隋唐時代に幅を利かせていた貴族の力をそぐことが目的だったのだそう。
時代を経るに従い科挙は熾烈を極めるようになり、
試験会場(薄暗い独房)において受験者は精神に異常を来たし、
しばしば妖怪変化の類が現れるという伝承も面白いです。
日本の大学・官僚・大企業の採用システムも程度の差こそあれ
科挙システムに近い印象を受けます。
清末の変化に対し、科挙が弊害になった事実は
記憶しておくべきことだと感じます。


<コメント>

科挙システムは、とにかく何段階にも渡って似たような試験が
何度も何度も続きます。
この本ではその試験のプロセスをすべて網羅し、記述しています。
最初から最後まで試験・試験・・・。
しかし読みにくい本かというと、さにあらず。
要所要所で受験者のエピソードや妖怪変化の伝承が挟まれ、
読んでいて飽きません。

そして、どうしても考えてしまうのが現在日本の受験システムです。
科挙は天下泰平の時代には有効に機能したのかもしれませんが、
激動の清朝末期には役に立たないシステムになってしまいました。
現代日本の受験システムも、今後必要とされる行政官僚や企業人を
育てるにあたってどれほど有効に機能しているのかは、
なんとなく疑問があります。
科挙は万人に開かれているといいつつ、実は金銭に余裕のある階級の者しか
実質的に合格しないシステムです。
教育の公的支出がOECD国で最下位(対GDP比)である
日本の学校・受験システムは、このあたりからも、
やはり科挙的なものに近いのだという印象を強く持ちます。


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・文章読本/谷崎潤一郎 (中公文庫)

<内容・感想> ※読書メーターより

文豪谷崎による文章指南書。
基本はとにかく量を読んで量を書くことが大切で、
分かりやすい文章=美しく音読しやすい文章であるとの指摘が印象的です。
手本とすべき文体を「長文・流麗・和文的・源氏物語的」と
「短文・簡潔・漢文的・非源氏物語的」と大きく分類しているのも面白いです。
そして、この本の文章を読み進めることが端的に心地よいという事実が
何よりも素晴らしいです。
この本が書かれた昭和9年時点からは、言葉の使い方も
文章を書くツール自体も大きく変化しましたが、
現在においても一読に値する本であると思います。


<コメント>

この本は昭和9年(1934年)の本。
実用的な文章の書き方をもターゲットにした本とのことですが、
この当時と今とでは、文章の書き方は全く変わってしまっています。
文具を使わず、キーボードによる文字入力・自動変換・コピペを駆使して
推敲される文章など、全く想像もできなかったのではないかと思います。
なので、現在においてこの本がどこまで実用的なのかどうかはよくわかりません。

むしろこの本は、あの谷崎潤一郎が文章というものをどのように考えていたかを
知る手がかりとして、面白い本なのだと思います。
さらに、この本の文章自体がとにかく読んでいてやたらと心地よい。
なので、谷崎が好きな人はぜひとも読んでください、といいたくなる作品です。
(そう、この本は「教本」というよりも「作品」といった方がしっくりきます。)


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ということで、今年はこんな感じで本の記事を書いていこうと考えています。
例によってまた気が変わって、突然他の手段をとるかもしれませんが・・・笑。